誰かと話すときに人によって話し方を変える人のことを、「相手に合わせるなんてダサい」「自分をもっていないのか」「媚びを売っている」といったように見下している人がいます。
そういった人は、相手に合わせることなく、常に一定の自分で自分らしく話そうとします。
それは一見、「これが私です」と自信を持っているように見えます。確かにその通りかもしれませんが、こういった人は一つ大きな過ちを犯しています。
それは、今目の前にいる相手よりも、自分を優先しているということです。
相手によって接し方を変えるとは、決してヘコヘコすることではありません。
相手の性格や性質を理解しようと努め、受け入れ、敬意と配慮を持って接する姿勢を行動で示したものです。
つまり、相手によって接し方は変えるべきということです。
では具体的にどのように接し方を変えればいいかというと、それは「相手が心地よくなるように合わせる」ということです。
たくさん喋りたい人に対しては聞き役に回る。あまりしゃべらない人には質問を投げかける。
エネルギーに溢れ自慢話などをする人には、テンションを高くして接する。静かで淡々と喋る人には、落ち着いて受け答えを行うといった姿勢です。
なぜなら、エネルギーに溢れ自慢話などをする人に、落ち着いて接すると「この人私に興味ないのかな」という印象を与えてしまいます。
静かで淡々と喋る人にテンション高く接すると「この人うるさくて波長が合わないな」という印象を与えてしまいます。
どちらの場合もあなたと話したことで相手が感じているのは不快感です。相手によって話し方を変えるのは不快感を与えないための配慮に他なりません。
相手によって接し方を変えるものの、機会や評価は平等にする必要があります。
誰かをえこひいきしたり、誰かに情報を与えないといったことはしてはいけません。そのような行為は簡単に人間関係を壊します。
相手に敬意を持ち不快感を与えないよう配慮して接し、かつ、機会や評価を公平に与えることが、チームを率いるマネージャーが行うべき話し方です。
チームメンバーとの相互理解を深めたり、メンバーのモチベーションをアップするために行う個別ミーティングは決まったフォーマットに沿って通り一辺倒でやるべきではありません。
社員は金太郎アメではありません。それぞれ個性を持った個人です。このため、それぞれの人に合わせて個別ミーティングを進めることが、相手を尊重し理解しようとしていることを示す行動になります。
例えば、カチッとした雰囲気が好きなメンバーとは会議室を使って話す。ゆるやかな感じが好きなメンバーとは外の日陰のベンチに腰掛けて話す。あるいはカフェで話すといったように相手に合わせて環境を変えることも重要です。
決して自分の居心地のよさを優先してはいけません。相手の居心地のよさを最優先することが大切です。
チームの中には優秀な人や、能力が高いのにやる気がない人、能力は低いがやる気に溢れる人、能力もやる気もない人がいます。
そういった人たちに全く同じ接し方をしても響きません。それぞれのメンバーがモチベーションを上げ、成長できる接し方をすることが大切です。
具体的には次のように接します。
能力 | モチベーション | 接し方 |
---|---|---|
〇 | 〇 | 委任する |
〇 | × | 励ます |
× | 〇 | サポートする |
× | × | 指揮する |
能力もモチベーションも高い優秀な人には、仕事をどんどん任せることが効果的です。「あなたを信頼している」というメッセージでもあり、相手にとっては成長の機会が増えることでもあります。
そういった社員は承認欲求も強いので、定期的に褒めたり承認することも重要です。
マネージャーが受け持っている重要な仕事を一緒にやるのもいいでしょう。
能力は高いがモチベーションが低い人は、お願いしていることの仕事の意義や、感謝を伝えることで、モチベーションを持ち直せるように励まします。
自尊心が低い場合が多いので「あなたならできる」「信頼している」と、相手の可能性を相手以上に信じて接することが重要です。
能力は低いがモチベーションは高い人は学習意欲が強い人です。「学びたい」という気概に溢れています。
ただ、いきなりドンと任せても「何をしていいかわからない」という沼にはまってしまうので、道筋を示しながら、本人が自力で学べるようにサポートします。
小まめなフォローアップをし期待を示せば示すほど、どんどんと成長していきます。
能力もモチベーションも低い人は「なぜこの仕事をやらなければいけないのか納得ができない」という場合がほとんどです。
このため、チームのミッションや存在意義、そして今追いかけている目標の必要性、どのように進めていくかのプロセスや何をすべきかを明確にすることが大切です。
こまめに理解度を確認して、少しずつ承認や褒めることを繰り返すことで、モチベーションや能力が上がっていきます。
相手に敬意を払ったり配慮をするといっても、常に優しくいなければいけないわけではありません。
チームはあくまでチームの目的に向かって最大のパフォーマンスを出すために存在しています。目標に向かっていなかったり、十分な成果が出ていなければ「〇〇ができていない」「〇〇までに△△をやって」といったようにビシっと指摘する厳しさも必要です。
「~ができていない」という厳しく接するときには、それまでにメンバーと信頼関係が出来上がっている必要があります。
信頼関係ができていない状態で指摘をすると「いちいちうるさい」といった反感を抱き、モチベーションが下がってしまいます。
一方、信頼関係がきちんと出来上がっているとき相手は「私の成長のために言ってくれている」と受け取るようになります。
このため、普段から相手のことを深く理解しようとし、「あなたの成功と幸せを願っている」という姿勢で接している必要があります。
この記事の内容はモルガン・スタンレーやGoogleで人材育成や組織開発を率い、自身も起業家であるピョートル・フェリクス・グジバチさんの著書『世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法』の一部要約に個人的な見解を加えたものです。
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