人と会話をしている時に、急に怒りだしたり、感情的になったりする人を見ると、冷静で論理的な人ほど「感情のコントロールができいていない」「イチイチ反応してうっとおしい」「話にならない」という印象を抱くことがあります。
しかし、こういった怒りや悲しみなどの急激な感情の変化は、相手のことを知るうえで非常に重要です。
ここでは、相手の急激な感情の変化を捉える重要性や、捉える方法、その時にやってはいけない注意点についてまとめています。
「怒り」「悲しみ」「不満」「批判」などの感情は通常ネガティブなものとして捉えられます。
人によっては、そういった愚痴不平不満は一切言ってはいけない。そんなことを言っていると口に出したことが全て自分に返ってくると言って、ネガティブな感情を出している人を「ダメだ」と否定したり、遠ざけたりする人がいます。
しかし、こうした急激な感情は、相手の深層心理が表面に出てきているものです。
深層心理とは、自分でも気づいていない心の動きのことで、怒ったり悲しんだ本人もなぜそうしているのか気づいていないことがほとんどです。
何かをトリガーにして無意識かつ本能的にその反応が外に出ている状態です。
こうした感情は相手の価値観と深く結びついています。
このため、相手のことを深く理解し、深い絆で結ばれた信頼関係を結ぶためには、そういった急激な感情の変化を捉えることが必要です。
特に不満やイライラといった怒りは相手の価値観を知るチャンスです。
例えば、待ち合わせに遅れてしまったときに、相手がすごくイライラしていれば、「時間を守る」という強い価値観を持っていることがわかります。
イライラしている当の本人は自分が何に強い価値観を抱いているかを意識していません。それが当然だと思っていることがほとんどです。
このため、通常の会話では「私の価値観は〇〇です」と明言することはほとんどありません。つまり、相手の価値観を知るチャンスはほとんどないということです。
だからこそ、相手が怒りを見せたときは「嫌だな」「めんどくさいな」と感じて距離を置くのではなく、この人の価値観はなんなんだろう?と考えることで、今後もよりよい人間関係を築くことができます。
なお、価値観とは「その人が大切にし、正しいと思っている信念のこと」です。
相手が怒りや悲しみなど、急激な感情の変化を見せたら、相手が重要視している価値観はなんなんだろう?と考えて、言語化すると、相手の関係性を深めるためにとても効果的です。
「あーイライラする」と怒っている人がいたら「〇〇さんは、~されるのがとても嫌なんですね」と伝えれば、「この人は私のことを理解しようとしてくれている」と感じます。
むしゃくしゃしている人に対して「なんでこの人はこんなにむしゃくしゃしているんだろう?自信がないのかな」と感じたら、「今の〇〇さんは、何か自信がないように感じるのですが、何かあったんですか?」と聞けば、「実は、、、」と言ってその感情の大本の経験を話してくれる可能性もあがります。
悲しんでいる人がいたら「〇〇さんは、~がとてもツラかったんですね」と伝えてあげることが重要です。
こうしたことを伝えられた人は「私はこういう感情を持っているのか」と気づくことができます。それは感情を浄化し、前に進むことにつながります。
相手が感情的になった時に、相手の価値観はなんだろう?と考え「〇〇さんは、~を大切にしてるんですね」と伝えたときに、相手が「そんなことないよ」といった反応をすることがあります。
本当に相手のことを深く理解しようと思ったら、そこで「そうですか」といって簡単に引き下がってはいけません。
多くの場合、人は一言目でいきなり自分の本音を話すことをしません。お茶を濁したり、表面で繕ったりすることが普通です。
このため、相手から一つ目の反応が返ってきたときに「そうですか」と言って対話を終わりにするのではなく、「それ、本当ですか?」といったようにいい意味で疑ってみることが大切です。
すると「実は、、、」といったように、より深いところから本音を引き出すきっかけになります。
当然ですが、価値観は相手が心の奥深くに持っているもので、相手の生まれ育った環境や経験に根ざしているものです。
価値観の答えを持っているのは相手自身であって、周りの人が答えを持っていることはありません。
このため次のような、押し付け、決めつけ、否定をしてはいけません。
これは相手の価値観(大切にしている信念)を否定することです。それは、相手の存在自体を否定することと同じです。
そうではなく、感情の答えは相手だけがもっているということを理解して、相手に寄り添った声掛けをし、相手を丸ごとの人間として価値観を受け入れることが非常に大切です。