子育てをしていく中で、子供の友達の親との関係や祖父母との関係というのは必ずついてまわることです。
友達のご両親にお世話になってばかりで申し訳ないという気持ちが強い人もいるかもしれません。しつけ方の異なる親御さんと関わるべきか距離を置くべきか悩んでいる人もいると思います。
自分の家のルールでジュースやおもちゃをむやみに与えないようにしているのに、子供にジュースを与え、おもちゃが欲しいと言ったら買い与えてしまう祖父母との関係を今後どうしたらいいのか?
そんな悩みに答えてくれる、社会性を持った子供に育てるための価値観を育む20個の金言をご紹介します。
お友達の家に行くと、その家のおもちゃで遊びたがり、ワークブックやシール遊びまでやってしまい使えなくしてしまう。「これは、お友達のだいじなものだから、やめようね」と言っても聞かない。相手のママは「いいよ、大丈夫だよ」と言ってくれるのですが、自分だったら嫌だろうな、と思ってしまう人も少なくありません。
でも、まだ4歳の年少さんなら、お友達のものを自分の物のように扱ったりするのは自然なことです。おもちゃの貸し借りができないことも、他人のものを家に持って帰りたがることもあります。
相手の親御さんが「大丈夫ですよ」と言ってくださるなら、何も問題ありません。感謝して使わせてもらいましょう。家庭によってルールは違うので、その家のやり方に合わせましょう。
このお母さんは、少し気をつかいすぎていらっしゃるのでしょう。まだ付き合いも浅いので、相手の方の「大丈夫」という言葉が本心なのかわからず、不安なのだと思います。
親同士がどんどん仲良くなって、「ちっとも迷惑なんかじゃないですよ」「お互い様です」と心から思い合える関係になれば、子供の行動など気にならなくなるものです。
そのためには、ご自身も家にお友達を招きましょう。そのうちに「小さな子どものすることなんだから、このくらいたいしたことじゃないわ」と感じるようになります。
それに、親同士が親しくなると、子供同士も仲良くなります。好き勝手におもちゃを使われても険悪な関係にはならないものです。
友達のおもちゃを勝手に使ってしまう子供に「これは、お友達の大事なものだからやめようね」とマナーを教えようとしても年少の子には難しいものです。
マナーは特別に教えなくても、成長に伴って子供は学んでいきます。
教えるための一番いい方法は、親がその場にいて「〇〇ちゃん、このおもちゃで遊んでいい?」「そう、ありがとうね」と子供の言葉を代弁してあげることです。
子供はそれを見聞きしながら「言葉」を覚えるとともに、相手に配慮する「心」を学びます。
子供が幼い頃に、子供の友達を毎日のように家に呼びました。すると、相手の方も「遊びにおいで」と声をかけてくださります。
いろんな家を行き来する中で、子供はたくさんのことを学んだと思います。あるとき、「〇〇くんの家に入る時、靴下を履いてないと、おばさんに足をふかれちゃうんだ。だから今日は靴下を履いていくよ」と言いました。いい勉強です。
行ったり来たりして迷惑もお互いさま。それが社会性を身につける最高のしつけです。
子供たちは、いろんな人と関わることで社会性を身につけていきます。同じことをしても「大丈夫だよ」という家もあれば、叱られる家もあるでしょう。それでいいのです。
たくさんの子を家に招き入れ、そして招かれたら遊びに行かせてください。その中で子供たちは、家庭だけでは学べない社会性を身につけていくのです。
これ以上のしつけはないと思います。
これは佐々木正美先生の奥さんの話しなのですが、子供の友達が家に遊びに来た時に、家の冷蔵庫を勝手に開けてしまう子がいました。
そのときに「この冷蔵庫は私のだから、勝手に開けるんじゃなくて、ほしいものがあったら言ってね。もしなかったら、次までに買っておくから」と言いいました。
その子は遠慮なく「ヨーグルトが欲しい」「ジュースが飲みたい」と言いましたが、冷蔵庫は開けなくなりました。
自律心のある子だったようで、遊んでいる途中で雨が降ってきた時に、友達の中で唯一「洗濯物が濡れちゃうよ」と教えてくれました。
「うちにはいろんな子が来るけど、そんな事を言ってくれたのはあなただけよ」と褒めてあげました。
その後、その子のご両親が離婚して祖父母に引き取られることになったのですが、引っ越しの日にわざわざおばあちゃんと一緒に挨拶に来てくれました。それもわが家にだけ。嬉しかったと言っていました。
「そういうことをしちゃダメでしょう」と言葉で伝えるのと、たたくことでは意味が全然違います。
たたくことは、腕力の強いものが弱いものを従わせるための暴力です。子供は少しも納得していないのに暴力による屈辱の中で従わなければいけないのです。
このようなしつけをされても、自分で自分を律しようとする心が育つことはありません。
それどころか、自尊心をひどく傷つけられ、自己肯定感を失わせる行為になります。傷つけられた自尊心を回復するのは、程度の違いこそあれ、一様に難しいものです。
「ダメだよ」と言うのはいいです。でも、決してたたいてはいけません。
言うことを聞かないときに、たたいたり、髪の毛をひっぱったりしてしつけられた子供は素直に人の言うことを聞けなくなることがあります。
暴力で自尊心をねじ曲げられるような体験をしてきたのでしょう。親の言うことを強く押し付けられ、自分の願いはあまり聞き入れてもらえなかったのかもしれません。
これが続くと、今後ますます反抗的な態度が増えてくるのではないかと危惧します。
自分とはしつけの方針が違い、たたいたり、髪の毛をひっぱったりと暴力的なしつけをするママ友と距離をとろうかと考えることもあるかと思います。
子供のしつけに暴力は決して使ってはいけないことですが、距離はとらなくてもいいと思います。
子供をたたかずに育てられる親は、意に沿わない行動をする他者を受け入れる力を持っているということです。逆に、たたかずにいられない人は、他者を受け入れる力が弱いのです。
そのお母さんは、幼少期から自分を否定され続けたり、強制させられたりして育てられた人なのかもしれません。悲しいことです。
できれば、そのお母さんの今の不安やつらさに耳を傾けてあげられるのが一番いいと思います。
でも、ストレートに「虐待だよ」「たたくのはやめなよ」と言ってしまうと「自分の子育てを否定された」と感じてしまうでしょう。もしかしたら「子供が悪いせいで、私が恥をかかされた」と思い、怒りが子供に向かうかもしれません。
それよりも「〇〇ちゃん、こういうところがいい子だよね」と肯定的なことを言ってあげるのがいいと思います。
相手のお母さんが気付いていない、小さいいいところを拾い集め、ほめてあげるのがいいと思います。ほっとするようなことを伝えてあげるのです。
もう少し大きくなったら、子供だけを家に呼んであげてください。元気がよく気の強い友達から、子供が学ぶこともきっとあるはずです。
その子以外にもたくさんの子を家に招き入れ、様々な価値観に触れるチャンスをつくってあげましょう。その経験が子供を育てていくのだと思います。
祖父母が子供をかわいがってくれるのは感謝しているのですが、なんでも買い与えてしまうことにイライラしてしまう方も少なくありません。
祖父母と親とでは、子供を育てる時の思いや姿勢が確かに違います。お母さんがダメということでもおばあちゃんなら買ってくれる。お父さんなら起こることでも、おじいちゃんはしからない。そのようなしつけの方針の違いはよくあることです。
一見、親と祖父母は矛盾しているようですが、子供が健全に育つためにはどちらも必要なことなのです。
幼い子どもを育てる家庭には、禁止したりしかったりする場面は必ずあります。しつけそのものは必要なことなのですが、子供の自尊心を傷つけるという側面があります。
傷ついた自尊心を回復させてくれるのが、「いいんだよ」と認めてくれる祖父母の存在です。この、別な価値観をもつ存在が大事なのです。
親には子供の「将来の幸せ」を願う気持ちが強くあります。特に、日本の親は、将来のためにしっかりしつけようとか、勉強させようという気持ちが他国の親に比べとても強いです。
それに対して祖父母は、「いま、目の前にいる孫を幸せにしたい」と思う気持ちが強いのです。だから、「虫歯になったら困る」などとは考えずにお菓子を与えます。
子供の幸福のためには、「将来」と「現在」の両方の視点が必要。しかし、「将来」を考える親は、現在の幸福を犠牲にしがちです。その歪みや偏りを、祖父母が是正してくれていると思ってはいかがでしょうか。
祖父母が子供に、家では与えていないジュースを飲ませる、欲しがるおもちゃを買い与える。これから先も同じことがおこるのだと思うと憂鬱になってしまう。祖父母の家とではルールが違うことをどうやってわからせればいいのかと悩む方も少なくありません。
家と外ではルールが違うことを子供は理解しています。3歳でもわかります。お母さんは「なぜ家ではジュースを飲ませないのか」という自分の価値観を穏やかに伝えてあげればいいのです。
祖父母を否定したり、引き合いにだしたりする必要はありません。同様に、親が祖父母の価値観を迎合する必要もありません。
子供は多様な価値観の中で育つのがいいのです。
子供は異なる価値観を受け入れて成長していきます。友達の家には友達の家のルールや文化があること。担任の先生が変わる度に教室内の決まりが変わること。小学生と中学生では求められるものが変わること、、、その一つ一つを子供は戸惑いながらも受け入れます。
たった一つの価値観の中で育てられるはずはないし、もしそんなことがあるとすれば、子供はひどく薄っぺらな人間になってしまうでしょう。
祖父母が孫を甘やかすことを心配する必要はありません。祖父母と孫が親しく過ごす時間は本当に短いものです。子供は甘えなくなりますし、祖父母もそれを感じ取ります。
けれど、暖かい関係はちゃんと残ります。祖父母にかわいがってもらうと、祖父母が衰えて手助けを必要としたときに、イヤな顔をしたり、「あとで」と断ったりすることはありません。
物をとって欲しいとか、少しだけ肩を貸して欲しいという祖父母の願いを、彼らはいつも快く引き受けていました。それは、祖父母に同じようにしてもらっていたからに他ならないのです。
祖父母は親にできないことをしてくれる存在です。そしてまちがいなく、あなたのお子さんをかわいがってくれる人です。
愛情を惜しげもなく与え、幸福を願っている人なのです。そんな人は他にいません。
その愛情をもらわないのは、本当にもったいない話です。
精神科医の訓練で言われたのは「患者さんの話をちゃんと聞けるようになったら、ほぼ一人前」ということ。
そのとおりだと思います。患者さんに有益なことを伝えるよりも、患者さんが何を言いたいのかを聞き取ることの方がはるかに難しいのです。
そして、患者さんの言葉を聞こうとしない医者が「ああしなさい」「こうしちゃダメ」といくら言ったところで、患者さんには届かないのです。
それは親子でも同じです。話を「聞いてもらえた」ということが大事なのです。それを積み重ねるうちに、親の言葉も届くようになります。人間関係とはそういうものです。
子供が話しかけてきたら、ゆっくりと聞いてあげてください。長時間でなくてもいいし、家事をしながらでもいい。
イライラせず、穏やかに、うなずいて聞いてあげてください。それだけで、子供に親の愛情が伝わります。
ときには親から「今日の晩ごはんは何がいい?」「日曜日はどこに行きたい?」などと希望を聞いてあげてください。
希望が叶えられないこともあるでしょう。けれど、「聞いてもらえた」ということが大事なのです。
子供の話はどれだけでも聞いてあげてください。一方で、親の話は極力少なめにするのがいいです。多すぎると薬と同じで、副作用が出てしまうものです。
親というものは、わが子に「こうしてはいけない」「こうするといい」ということをついつい言いたくなるものです。正しいことを教えたくなるものです。
親の思いを子供に伝えることは決して悪いことではありません。問題は量です。
あまり言いすぎてしまうと、それが「今のままのあなたではいけない」「私はもっといい子を望んでいる」というメッセージとなって、子供にも届いてしまうのです。
正しいことほど、小出しにするのがいいのです。
子供にして欲しいことがあれば、言葉で伝えるよりも、親が見本をみせるのがいいと思います。
「そんな持ち方じゃこぼすわよ」と口で言うよりも、手を添え、持ち方を教えて上げるほうがいいのです。
あいさつができる子にしたいのならば、「知り合いに合ったら、あいさつをしなさい」と口で言うよりも、親が毎日、子供やご近所の人に挨拶を続けてください。
そんな姿を子供たちは自然に真似ていくのです。
この内容は、川崎医療福祉大学特任教授、横浜市リハビリテーション事業団参与で、自閉症を持つ人々のための支援プログラム、TEACCH(ティーチ)を米国から日本に紹介するなど様々な経歴をもつ精神科医 佐々木正美先生の「この子はこの子のままでいいと思える本」の要約と一部抜粋です。
本書には他にも、気づきを与え、心を軽くしてくれる、子供の育て方に関する金言がたくさん載っています。
興味を持たれた方はぜひ一度手に取って見てはいかがでしょうか?