離婚や死別など父親の存在がなく、母親一人で子供を育てているご家庭も少なくありません。
そんな中で子育てをしていれば「父親が必要なんだろうか」という疑問や、「もしお父さんがいてくれたら」と感じることもあると思います。
子供が健全で幸せに育つためにお父さんはなくてはならない存在なのでしょうか?
子育てに必要なことは何か?お父さんの役割とは何か?子供の幸せのために私がやるべきことは何か?
そんな、ありふれた、けど、とても深刻な問題に答える9個の金言をご紹介します。
母子家庭、父子家庭といった、ひとり親家庭というのは、日本にはたくさんあります。そういうご家庭のお子さんが健全に育っていないかというと、そんなことは決してありません。
「父親にしかできないこと」など一つも思い浮かびません。親としての役割を分担することはありますが、それはあくまで分担にすぎません。
子供が元気で幸せに育つ要件は、お母さんひとりでも、あるいは祖父母やご近所の方に協力していただいて十分に満たすことが可能です。
子育てには、わが子のすべてを受け入れる「優しさ」と社会のルールを教える「強さ」が存在すると思います。
ただ、それは、母親が「優しさ」を担当する、父親が「強さ」を担当するということではありません。
両親のどちらでも、もっと言えば、親でなくても与えることができるものです。
「優しさ」というのは、親のところに帰ってくればくつろげる、安心できるというやすらぎのようなものだと考えてください。
これは「泣いたらおっぱい」「泣いたらおむつ」「泣いたら抱っこ」の繰り返しの中で築かれる、親子の愛着関係です。
子供の成長にはまず「優しさ」が大事なのです。自分は親に受け入れられているという安心感が育たないと、子供はなかなか健全に育つことができないものです。
「優しさ」を発揮するのは女性の方が得意ではありますが、男性にできないとは思いません。
「強さ」は子供の年齢相応、理解力相応に社会のルールを教えることです。友達をいじめてはいけない。悪いことをしてはいけない。というように。
しかし、「強さ」は社会生活の中でも教わることができます。幼稚園や保育園、小学校は「強さ」的な場ですから、そこで十分に学べるのです。
大事なことは、子供をありのまま承認し、受け入れることです。「お父さんの役割も果たさなくては」と必要以上に子供に厳しくなってしまうシングルマザーが何人もいますが、そうなってしまうと子育てはなかなか上手くいきません。
お父さんがいないだけでなく、お母さんもいなくなってしまうからです。
肩車をするだとか、野球を教えるだとか、そういう具体的な「お父さんとの関わり」が不足することを悲しむ人もいますが、実際にはお父さんがいても、そういうことを一切してもらったことのない子はたくさんいます。
お父さんがいなくても、祖父や親戚、保育園のお友達や家族など、いろんな方との関わりの中で自然に体験できると思います。
もちろん、苦痛でなければお母さんがやってあげてもいいのです。
街で家族連れを見る度に子供の心情を推しはかり、つらい気持ちになると感じることもあると思います。でも、見る度につらくなっているのは、お母さんなのでしょう。
それでも、気持ちを立て直して「しっかりやっていこう」と思えたのであれば、もうそれで十分です。なんのハンディキャップもないと考えてください。
「優しさ」の役割をしっかり果たして、わが子のありのままを受け入れていけばいいのです。
職場やそれ以外の場所で、気心の知れた親しい友だちをつくることをお勧めします。安心して声をかけ合え、付き合えるお母さん自身の友達がいることが大事なのです。
ひとり親家庭の場合、親子が二人きりで向き合ってしまうことがありますが、それがいちばん心配です。
人間関係をわが子の他にも外へと広げて、お母さん自身が「楽しいな、幸せだな」と思える時間を増やしていってください。
人は与えられた境遇の中でどのように生きるか、どのように幸せになるかが日々問われているのです。
お母さんの心が一日も早く癒えて、幸せになることを祈っています。お母さんが幸せであることが、お子さんの幸せなのですから。
この内容は、川崎医療福祉大学特任教授、横浜市リハビリテーション事業団参与で、自閉症を持つ人々のための支援プログラム、TEACCH(ティーチ)を米国から日本に紹介するなど様々な経歴をもつ精神科医 佐々木正美先生の「この子はこの子のままでいいと思える本」の要約と一部抜粋です。
本書には他にも、気づきを与え、心を軽くしてくれる、子供の育て方に関する金言がたくさん載っています。
興味を持たれた方はぜひ一度手に取って見てはいかがでしょうか?