小学校に入るとたくさんの家庭の子と一緒になります。当然、家庭ごとに価値観が異なります。
なかには、子供を自由奔放に育てていたり、お金を渡して自由にさせているといった家庭もあるかもしれません。そんな子達と交わって、うちの子に変な価値観が身についてしまったらどうしよう、、と心配される方も少なくはありません。
小学校時代の子供の人付き合いは親がしっかり見張って制限した方がいいのか?それとも別け隔てなく誰とでも関わるようにしたらいいのか?変な行動をしてしまった子供をどう叱ればいいのか?
そんな、ありふれた、けど、とても深刻な問題に答える14個の金言をご紹介します。
小学校には、いろんな子供がいます。乱暴な子、おとなしい子、運動が得意な子、勉強が得意な子、勉強が嫌いな子、、、。
さまざまな子と交われることこそが、小学生の特権であり、小学生の素晴らしいところです。
どの子にもいい面と悪い面があり、子供たちはそこから何かを学び、自分もまた教えるのです。
著名な心理学者や精神科医は、みな言っています。「子供時代の雑多な人間関係の中で、人は社会性を身につける」と。
残念なことに、意識せずにいろんな子と交われるのは、小学校低学年から中学くらいまでの非常に限られた時期だけのことです。
思春期以降になると、類は友を呼ぶといいますが、価値観、趣味、話があう友達として交わらなくなるのです。
そのときに、友達選びの基準になるのは「親の価値観」です。自分の両親の持つ文化や考え方を基準にして、友を選びます。それは、ほぼ確実です。
小学生時代はどんな子とでも付き合わせましょう。
子供がだいたい小3~5歳以下であれば、まざ人間関係を楽しめる年齢です。お母さんやお父さんは「どうしてタイプの違う子と仲良しなのかな」と思うかもしれません。でも、これは素晴らしいことなのです。
雑多な人間関係があるからこそ、人を見る目が養われ、どんな人とでも交われる能力を身につけていくのです。
この時期は、どんな友達もすべて大切です。「あの子と遊んではダメ」なんていうことは言わなくていいのです。いえ、言ってはいけないのです。
ときには、親が眉をひそめるような行動をとることもあるでしょうし、お金の使い方で友達の悪い影響を受けるようなこともあるかもしれません。
そんなときは、「お母さん / お父さんはそんなふうにお金をつかうのはいけないと思う」「そんな考え方は嫌い」と言ってかまいません。
他の子がいくらお金をつかったとしても、それはその家庭の価値観の問題です。
けれど、わが家はわが家。叱るのではなく、穏やかに、しっかりと、「わが家の価値観」を伝えることです。ここが大事です。
その基準がはっきりしていないのなら、すぐにでも夫婦で話し合いましょう。曖昧にしたまま「価値観の違うことは付き合わせない」と引き離すことが、いちばんいけないのです。
日本ではおびただしい数の人が引きこもっています。せっかく就職しても、2~3年で辞めてまた別の仕事を探し、定職につけずにいる若者もたくさんいます。
彼かは仕事ができないから続けられないのではありません。人間関係がつくれないのです。
就職したばかりの新入社員は仕事ができなくて当然です。それでも、先輩に教えてもらい、新人が入ってきたら教えてあげて、人間関係の中で少しづつ仕事を覚えて続けていくものなのです。それができなくなっているのです。
社会で人間関係がつくれないのは、子供時代の人間関係の絶対量の不足ではないかと思います。
社会にはいろんな人がいます。親が求める品行方正な子とばかり遊んでいたのでは、品行方正な人が集まる場所でしか働けません。
どんな人とでも交われる人に育てたいのであれば、どんな子とでも付き合わせてあげることがとても大切です。
週に一度でも構いません。できるだけ自宅を開放して、多くの子が安心して交われる場をつくってあげてください。
もちろん「うちの子がいないときはダメだよ」「○時になったら帰ってね」といったルールは決めていいです。
よその子でも、叱っていいのです。堂々と、自信を持って、わが子とその友達を見守ってあげてください。
わが子には「きれいなものも、汚いものも全部拾って帰ってきていいよ。」「いいか、悪いかは、親が、家でしっかりと教えてあげるからね」と、そのような姿勢でいてください。
子供の社会性がのびのびと育ていくと思います。
高名な発達心理学者エリック・エリクソンは「児童期の子供の重要な発達課題は、友達から学び、友達に何かを教えることだ」と言っています。
それが大人になったときに、人と交わりながら、社会に価値を生むように自分の力を発揮できる「社会的勤勉性」の土台になります。
きょうだいの有無に関わらず、子供は小学生時代に同世代の仲間とたくさん関わりをもたなくてはなりません。
友達とたくさん遊べば遊ぶほど、いきいきと自分の人生を切り開く人になれるのです。
残念ながら日本では、小学生時代に友達とたくさん遊ぶ経験が決定的に不足しています。引きこもりやニートの存在が、それを物語っています。
彼らは、勉強ができないわけではありません。運動が苦手なわけでもありません。人と上手く関わることができないのです。
人間関係を自然に豊かに営む力が育たなければ、社会に出た時につまづいてしまうのです。
本を読むことも、パソコンを操作できることもいいことです。しかし、それだけでは足りません。それだけで子供の社会性を育てることはできないのです。
体を動かしてほしいから、野球チームやサッカー教室に入れるという方もいます。野球やサッカーをすること自体はいいのですが、それが友達との遊びの代わりになるとは思わないでください。
草野球であれば、「〇〇ちゃんは小さいから、三振ナシ」などのルールを自分たちで作ったり、上手い子が下手な子におしえてあげたりするような場面がたくさんあります。
しかし、コーチや監督が子供の一挙手一投足にあれこれ支持して、勝つことが第一になってしまうと、子供同士の学び合いはなくなってしまいます。
子供が小学生になったら、親は、子供が友達どうしで遊べるような環境をつくってあげてください。
それは、一人っ子でもきょうだいっ子でも同じように大切なことです。
一人っ子には一人っ子のよさがあります。複数のお子さんを持つお母さんやお父さんは、子供が何人いても、一人っ子の時間を必ずつくってください。
子供にとって、お母さんやお父さんを独り占めしてゆったり過ごす時間は、心の安定にとても大事なものです。
学校でつらいことがあったときでも、そんな時間に話すこともできるでしょう。
逆に一人っ子には、意識的に「きょうだいのような存在」をつくってあげましょう。
親戚や、親の友達の子供がいいかもしれません。親同士が親しければ親しいほど、子供同士も親近感をもち、きょうだいのように関わることができます。
子供というのはおもしろいもので、家族だけで出かけた時は親のペースに合わせているのですが、友達がいっしょだと違います。親そっちのけで先に言ってしまったり、大声で叫んで楽しんだり、いつもと違う表情を見せてくれます。
親が子供を外に連れ出すときは、お母さんかお父さんと子供の2人だけで遊ぶのではなく、子供の友達も一緒に連れ出してください。できればそのご家族も。
子供の友達を誘いにくいのであれば、ご自身の甥っ子、姪っ子、いとこの子供などでもいいですね。
家にお友達を招いて、自由にあそばせるだけでもいいのです。週1回でもいいので、そんな日をつくってください。
この内容は、川崎医療福祉大学特任教授、横浜市リハビリテーション事業団参与で、自閉症を持つ人々のための支援プログラム、TEACCH(ティーチ)を米国から日本に紹介するなど様々な経歴をもつ精神科医 佐々木正美先生の「この子はこの子のままでいいと思える本」の要約と一部抜粋です。
本書には他にも、気づきを与え、心を軽くしてくれる、子供の育て方に関する金言がたくさん載っています。
興味を持たれた方はぜひ一度手に取って見てはいかがでしょうか?