学校生活と切っても切り離せない「いじめ」という問題。もし、自分の子がいじめにあったらどうしよう。それどころか、自分の子がいじめる側だったら?いじめられている子を守る側ではなく加担する側だったらどうしよう、、
そんな悩みを持たれている方も少なくないと思います。じつはいじめがあった時にその子がどう対処するかは親子関係と密接に関わりがあります。
いじめがあったときに、いじめに加担せず、いじめられている子を守れる子に育てるにはどうすればいいか?
そんな、ありふれた、けど、とても深刻な問題に答える11個の金言をご紹介します。
いじめと親子関係についての調査で、全国の小5から中3までの子供に対して行った調査によると、クラスでいじめが起きた時、子供のとる態度は大きく3つに分かれるといいます。
もっとも多いのが無関心です。見て見ぬふりをするグループで、これが大多数です。次に多いのは、なんとかいじめをなくそうと努力する子たちです。一部ですが、いじめられている子をかばったり、先生に相談したりする子たちがいます。
そしてもう一つ、いじめに加担し始めて、エスカレートさせてしまう子も少人数ながらいるのだそうです。
この子達に、親との関係について質問しています。その結果、「いじめを止めよう」とするグループの子は「親との関係がいい」や「非常にいい」と答えています。
一方で、「いじめに加担する」と答えた子の多くは、「親との関係が悪い」や「非常に悪い」と答えているのです。
いじめは学校で起こっていますが、けっして学校だけでは解決できる問題ではないことが、この結果からわかります。問題の大元は家庭にあるのです。
いじめをしない子、いじめに立ち向かえる子に育てたいと思うのであれば、お子さんといい関係を築くことが何よりも重要になります。
お子さんが親を信じ、「ぼく・わたしは、お父さん・お母さんのことが好き」と思えるように育てることです。
親子関係は人間関係の基本です。この関係に満足し、喜びを感じていれば、同じクラスの子が苦しむことに屈折した喜びを得る子には絶対になりません。
どうすれば子供は親のことが好きになるのでしょうか?それは、親自身がわが子のことが大好きでなくてはいけません。
ダメなところ、悪いところを見るのではなく、いいところをちゃんと見てあげて、「あなたのことが大好きだ」と伝えることです。
「いい子でなくちゃ好きにならない」というのではいけません。
子供が喜ぶことを、喜んでしてあげてください。子供の望むことを望むようにしてあげることを、恐れないでください。
幼児期を過ぎても、少し大人びた顔をするようになっても、「この子の喜ぶ顔を見ることが、私の最大の喜びなのだ」と、そういう気持ちで子育てをしていれば、子供は必ず、お母さん・お父さんが好きになります。
現実には「親が喜ぶことを子供にしてもらおう」とする親が多いのも事実です。
子供が小学生くらいになるとなおさら「もっとしっかりしてちょうだい」「自分のことは自分でやってね」「勉強も習い事もしっかり」と言って、親は過剰に期待しがちです。
もちろん親は子供に期待するものですし、「こうであってほしい」と願うものです。しかし、その気持をできるだけ抑えて、ありのままのこの子がかわいいのだと、そう思って子育てしてほしいと思います。
幼児期に親が「この子の喜ぶ顔を見ることが、私の最大の喜びなのだ」という気持ちを十分に伝えられていれば、反抗期の前の小2~小4のプレ思春期のころは子育てがとても楽になっていると思います。
もし、「この年齢になっても、なんでこんなに手がかかるんだろう」と思うことがあるとすれば、幼児期に不足があったのだなと思ってください。
期待しすぎず、できないことは手伝い、教えるべきことは穏やかに優しく何度でも繰り返して伝えるという、しつけの原点に戻ってください。
この時期にちゃんと見直しができれば、思春期の嵐も、さほどの苦労なくやり過ごせると思います。
小学生時代に何がいちばん大切か?と問われれば、迷うことなく「友達と遊ぶこと」だと答えます。それもできるだけ多くの子と関わらせたいのです。
乱暴な子、内気な子、自分勝手な子、年齢の違う子、家庭環境の違う子、どんな子からも学ぶことがあります。
この時期に友達から得た「学び」が将来、社会にでたときにどれだけ役立つか、計り知れないほどです。
単に知識や経験を増やすだけなら、大人から学ぶだけでもいいかもしれません。
しかし、自分が得た知識や考えたことを友達と分かち合うとき、相手の受け止め方でそれは何倍にも膨らんだり、新しい何かに生まれ変わったりするのです。
同様に、友達から与えられ、教えられたことは、大人から学ぶそれとはまったく違う輝きを放つのです。
社会の中で生きるということは、自分の持つ道具や知識や生活体験を、社会の人々と分け合うということです。
得意を生かし、できることを分担し、頼り頼られてわたしたちの社会は成立しています。
その疑似体験を子供のときにできた人は、大人になった時に良い仕事をします。社会に貢献できることを自発的にするように、きっとなるのです。
自然に人と交わることのできる人に共通するのは、「人を信じる力」を持っているということです。
この力はいつ育つのかというと、赤ちゃんのころからでしょう。「ママとパパは泣いたらあやしてくれる」「お腹がすいたらミルクをくれる」と信じるから、赤ちゃんは泣くのです。
そして実際に親はそうしてくれるので、親子の間には強い信頼関係が築かれるのです。
成長にともなって信頼の対象は、祖父母や親戚、保育園や学校の先生たち、そして友達へと広がっていきます。
人を信じる力が着実についている証拠です。
人を安易に信じていいのか?という議論もあります。子供を狙う事件が起きると必ずそう言われます。
でも、大丈夫です。人を信じる力は、信じられない人を見分ける力でもあるのです。信じるべき相手をちゃんと分かっている人は、やみくもに人を信じたりはしません。
逆に、信じる力の弱い人ほど、信じてはいけない人を信じてしまう傾向があります。
信じる力の源は、親子の信頼関係です。もしそこに不安がある場合には「子供の望みをできるだけ叶える」という原点に立ち戻りましょう。
この内容は、川崎医療福祉大学特任教授、横浜市リハビリテーション事業団参与で、自閉症を持つ人々のための支援プログラム、TEACCH(ティーチ)を米国から日本に紹介するなど様々な経歴をもつ精神科医 佐々木正美先生の「この子はこの子のままでいいと思える本」の要約と一部抜粋です。
本書には他にも、気づきを与え、心を軽くしてくれる、子供の育て方に関する金言がたくさん載っています。
興味を持たれた方はぜひ一度手に取って見てはいかがでしょうか?