人に好感を持ってもらう万能な褒め言葉に「天才ですね」「すごいですね」があります。
相手の才能が本当にすごい場合でも、そこまですごくない場合でも、あるいは「うーん、それってどうなの?」と思うような時でも使える万能な言葉です。
ですが子育てや部下など人を育て才能を伸ばすときに「天才ですね」「すごいですね」と言って褒めていると成長が止まることがあります。
なぜなら「天才」や「すごい」と褒められたことで、「あっ自分って天才なんだ。じゃあもうやらなくてもいいや」「もうすごいと認められたからいいや」という感情を呼び起こしやすいためです。
有頂天になる、いわゆる天狗になった状態です。
これは、有頂天になったり、天狗になった人が悪いというわけでもありません。無責任な言葉でおだてて調子に乗らせた人こそが根本的な原因です。
「天才」「すごい」以外にも「よくできるね」「賢いね」といったよく使われる単純な誉め言葉も、同じく成長を止める感情を湧き起こすリスクをはらんでいます。
「天才」「すごい」などの単純な誉め言葉は、相手の成長を止めるからといって、相手を褒めてはいけないわけではありません。
褒める・認めるという行為は、モチベーションを保つ上で非常に重要です。「全然ダメ」「できていない」といって相手の努力を全否定するよりも、褒める方が、自尊心も傷つかず健全に成長できます。
人を成長に向かわせるためには、誉め言葉に加えて、そこが成長の限界ではないよということを伝える必要があります。
具体的には、誉め言葉や承認のあとに「次はどこまでいくの?」という言葉を付け足します。
このように褒められることで、相手は自分の頑張りも認められている。そして更に成長することができると気付くことができます。
人には向き不向きや才能があります。自分の才能に合わないことをやり続けるのは成長が遅く、上限にいきつくのも早いので、お勧めできません。
それよりも自分が才能を発揮できる得意分野を見つけて、才能をさらに伸ばしていく方が、自分にとっても社会にとっても幸福をもたらします。
かといって、才能がない人に「あなたは才能がない」「もうやめた方がいい」という絶望的な言葉をかけるべきではありません。
それは相手の心に深い傷を負わせます。人によっては、全ての人格を否定されたと感じて、何もできなくなったり、挑戦することに対して恐怖を抱くようになる場合もあります。
才能がないことを直接的に伝えることは、相手のためになりません。
才能がないことを周りが直接的に伝えるのではなく、本人が自分で気づき選択するサポートをするようにします。
例えば子供が水泳をしているがなかなか上達しない場合、「水泳、なかなか上達しないね。これ以上やっても時間がもったいないからやめようか」と言ってはいけません。
そうではなく、「ここまでよく頑張ったね。もうちょっと頑張ってみよう。そうだ。読書も得意だよね。水泳と読書だったらどっちの方が頑張りやすい?」というように問いかけをします。
すると「うーん。読書!」と答えます。そうしたら、「そうか、読書の方が得意なんだね。じゃあ、水泳じゃなくて読書に集中しよう」と伝えて、本人が得意だと感じる方向へと導きます。
仮に、周りがこの子には才能がないと思っても、本人が「私はこれをやり続けたい」という強い意志があるのであれば、その子の意志を尊重し、サポートをしてあげることも重要です。
長い人生の中で、周りより下手で周りからやめた方がいい言われているにも関わらず強い意志を持って「やりたい」と思えることはそう多くはありません。
そして、自分の意志で継続したい・努力したいと思えることは立派な才能です。その才能を根気強く伸ばすことも、その子を将来飛躍的に成長させることにつながります。
何を選択するにしても最も重要なことは、周りが決めるのではなく、本人が自分で選びとるということです。
自分自身で選んでダメだった場合、誰かを恨んだり、失敗を誰かのせいにすることはありません。その失敗を素直に受け入れて、人生の糧にして、また新たな人生に向かって歩みだせるようになります。