赤ちゃんが4か月を過ぎたぐらいの頃から、これまでの3時間おきに起きて授乳という生活から解放され、徐々に大人と似たような睡眠のリズムになってきます。
ようやくまとまって寝れるようになると思うのも束の間、今度は夜なかなか寝てくれない、寝る前に異常と思えるほどギャン泣きする、日によって数時間おきに泣いて起こされることも珍しくありません。
睡眠時間が足りないと体や脳が回復できずストレスが蓄積していくものです。
お母さんのイライラはMAXとなり、パートナーにあたって家の中が険悪ムードになったり、子供に「なんで寝てくれないの!」とあたってしまうのも無理はありません。
ここではそんな赤ちゃんや子供が寝てくれないという問題に対する心得と対処法についてまとめています。
体内時計という言葉を聞いたことがあると思いますが、ヒトには大人にも子供にも「体内時計」が備わっています。
体内時計とは24時間よりほんの少し長い時間です。
赤ちゃんのときはまだありませんが、生後3~4か月後に昼と夜の区別がつくようになり、生後6か月になれば体内時計はできあがっています。
子供の夜泣きに関する研究の結果、夜泣きの原因の一つは体内時計の乱れであることがわかっています。
昔は太陽の明かりと共に起きて、太陽が完全に沈んで夜になることで体内時計が整っていました。
ですが、現代では家の中のそこかしこにライトやスマホ、テレビなどの明かりがあり、体内時計が壊れやすくなっています。
寝室が明るい、お父さんが夜遅くに帰ってきて夜に家の中が明るくなったり騒がしくなったりする、こういった日が続くと、子供は夜と昼の区別をはっきりつけることができなくなってしまいます。
すると、本来長く寝るはずの夜がいつなのかわからないので、頻繁に起きてしまうということです。
しっかりとした睡眠がとれないことは子供にとってストレスの高い状態です。結果、余計に泣いてしまったり、上手く寝付けないという悪循環につながっていきます。
体内時計を整える方法は簡単です。昔のように太陽の動きに合わせて生活していたのと同じことを家の中でやるだけです。
夜きちんと寝るためには、朝どう起きるかがとても重要です。10時ごろや昼過ぎまで寝ていたら夜すんなりと寝ることはできません。
基本的には朝7時までに子供を起こします。
起こすといっても、いきなり抱き上げたり、子供を強く揺さぶったり、大きな声をかけて起こしてはいけません。
大人と同じく子供も寝てるところを無理やり起こされるのは強いストレスになり、起きぐずりする可能性が高くなります。
このため、まずはカーテンを開け、部屋の電気をつけて空間を明るくします。子供が目をあけたらそこで「おはよう」と声をかけます。
光で起きない場合は「おはよう」と声をかけてみて、それでも起きない場合は、「朝だよ~」と言って軽く体を揺すります。
寝起きの子供はボーとっしています。あたりをキョロキョロ見渡して、徐々に目が覚めていきます。
抱っこやおむつ交換、着替えは子供がちゃんと目覚めてから行います。
こうすることで朝ストレスなくスムーズに「寝る」から「起きる」へと移行することができます。
朝のスムーズな「起きる」はその日の夜のスムーズな「寝る」につなげるための重要な入口です。
赤ちゃんがちゃんと目覚めたら、日中は外で日光を浴びます。午後の太陽の光ではなく、午前中に太陽の光を浴びることが大切です
夜寝るためには眠くなる必要があります。その眠気を誘発してくれる物質を体内で作り出すには、午前中の太陽光が必要だからです。
太陽光を浴びたり体を動かすことでセロトニンという物質が生成され、それが日没後に眠気を誘発する物質であるメラトニンに変わります。
メラトニンで眠くなるのは大人も同じです。
1日中家の中にいて太陽光を浴びない人は睡眠障害になりやすくなります。
夜との差を明確にするため、日中は明るい中でよく動くようにします。
赤ちゃんにとっておもちゃを取ろうとする、寝返りしようとする行動は全身運動です。ハイハイもそうですが、自ら動こうとしたり、動き回ることで十分な運動になっています。
歩けるようになったら階段の上り下りでもいい運動になります。
日中明るい中でよく遊ぶことでセロトニンがたくさん分泌されます。これが、夜の眠気を誘発するメラトニンになります。
なお、セロトニンは幸せホルモンとも呼ばれる物資で、生成されると私たちに幸福感を与えてくれます。
幸せに明るく元気に生きるという点でも、日中は明るくしてよく遊び、よく動くことが重要です。
もちろん、赤ちゃんだけでなく大人も全く同じです。
子供はお昼寝をするものです。生後6か月ぐらいまでは、朝1時間ぐらい寝て、昼2時間半ぐらい寝て、夕寝も1時間ほど寝るといったリズムです。
1歳ぐらいまでは朝寝はしてもいいですが、徐々になくすようにします。
お昼寝は3歳ぐらいまでするものです。時間はだいたい2時間ぐらいです。
夕寝は生後7か月ぐらいから徐々になくしていきます。生後8か月が過ぎたら夜しっかりと寝るためには夕方4時以降に寝かさないということが大切です。
生後 | 朝寝 | 昼寝 | 夕寝 |
---|---|---|---|
2~6か月 | 1時間 | 2.5時間 | 0.5~1時間 |
7~8か月 | 30分 | 2.5時間 | 徐々になくす |
9~11か月 | 30分 | 2時間 | なし |
12~1歳6か月 | 徐々になくす | 2時間 | なし |
1歳7か月~3歳 | なし | 2時間 | なし |
4歳以降 | なし | 徐々にしなくなる | なし |
子供を寝させるのは基本的に20時が目安となります。そのためには、子供の夕飯、お風呂、着替え、歯磨きなど、19時半までに全て終わらせる必要があります。
お父さんがお風呂に入れる場合や、お父さんが帰宅してからみんなで夕飯をとる場合は家族で相談が必要です。
子供が夜泣きせずしっかりした体内時計を身に付けるか、体内時計が崩れて夜泣きしたとしても親がやりたいことを優先するかのどちらかです。
19時半~20時までの30分は子供が「起きる」から「寝る」に切り替えるための時間です。
部屋の電気はオレンジ色の間接照明にするなど明るすぎない環境をつくります。
テレビ、スマホなど強い光や刺激はNGです。
子供が安らかな気持ちにで眠れるよう、家事や仕事のことは忘れて子供との時間を大切にします。
夜泣きして急に起きないためには、この子供とゆっくり触れ合う時間が重要です。
寝ている時は深く寝ているノンレム睡眠と、脳が活発に動いているレム睡眠を周期的に繰り返しています。
脳の中に不安や心配があると、レム睡眠のときに嫌な夢や感情が湧きおこりやすく、子供が泣き出す原因になります。
子供がなかなか寝てくれない、急に泣き出すなど子育てで疲れ果てているお母さんはたくさんいます。
ですが赤ちゃんが寝てくれないのには理由があり、改善する方法があります。特に現代ではその原因と対策がどちらも解明され、すぐに入手できる状態なので私たちは恵まれているといえます。
私たちヒトにとって大人も子供も関係なく、「体内時計が整う生活リズムにすること」がストレスが最も少なく幸せに生きるカギになります。
「子供が寝てくれない」「夜ギャーギャーないて困る」という人は、そもそも自分自身の生活リズムが崩れているのかもしれません。
子供の存在は、私たちにヒトとして根本的に重要なことに目を向けさせてくれます。
ぜひ、この機会に子供だけでなくあなたも、幸せで充実した生活リズムを身に付けられることを心より願っています。
この記事の内容はお茶の水女子大学や東京大学大学院で子供の夜泣きを専門に研究している清水悦子さんの「赤ちゃんにもママにも優しい安眠ガイド 0歳からのネンネトレーニング」の内容の一部を要約、抜粋したものです。
ここに記載している内容以外にも赤ちゃんを安眠に導くためのわかりやすい方法が様々紹介されていますので、赤ちゃんの夜泣きに困っている方は是非手に取ってみることをお勧めします。
大人と赤ちゃんの生活習慣を整え、大きなストレスから解放してくれるバイブルになること間違いありません。