OKRとは、GoogleやFacebookなど現在の世界を引っ張っている企業が導入している目標の設定方法です。
Objectives and Key Results(目標と主要な結果)の略で、もともとインテルが取り入れていたものを、シリコンのベンチャー企業が取り入れたものです。
Objectives and Key Results(目標と主要な結果)と言われてもあまりピンときませんが、簡単に言いうと「企業のミッションに対して、個人が自発的に目標を設定する」というものです。
日本の企業の中で広く使われている評価指標にKPIがあります。KPIとはKey Performance Indicatorの略で「重要業績評価指標」と呼ばれるものです。
簡単に言うと、ノルマなどの「数値目標」のことです。
KPIは目標としている売上数値から逆算して、各部署や各社員に課されます。
一方、OKRは企業のミッションから逆算して、そのために個人がどう貢献できるかを設定します。
つまり、数字を達成するための目標なのか、それとも、企業の存在意義であるミッションを達成するための目標なのかという違いです。
同じ目標設定でも、行動に至る動機が全く異なります。この違いは非常に大きいものです。
なお、KPIとOKRが完全に異なるというわけではなく、OKRの中にKPIも含まれます。
企業としては当然達成しなければいけない数値目標があります。そして従業員も計測可能な数値指標を持つ必要があります。これらはKPIです。
ただ、そのKPIをなぜ達成するのかという理由やその数値自体を、企業のミッションと合わせて最適化していくのがOKRです。
上記はKPIとOKRの意味的な違いですが、実際の運用上でKPIとOKRには最も異なる点があります。
それは、OKRを直接の業績評価には使用しないということです。(※組み合わせる場合もある)
なぜなら、直接の評価と組み合わせてしまうと、誰もが自分に甘く達成可能な目標を設定してしまいがちになるためです。
達成できなかったら給料が下がるとわかっている目標を自ら設定しようとする人はいません。
すなわち、OKRとは「私がこの企業で働く意味」「私がこの企業にいることでどういった貢献をするか」を組織のメンバーに対して明示するものです。
あくまで、自分のモチベーションを保ち続けるための目標設定です。
OKRはきちんと設定しないと、評価が難しく、人によって差が出てしまい、不満の原因にもなります。
このためいかに適切かつ平等に設定するかが非常に大切です。よいOKRを設定するには次の5つのポイントを満たす必要があります。
OKRは企業のための目標ではなく、個人のための目標です。組織において、自分の存在意義や価値を示し最大化するためのものです。
そのためには、自分がどのぐらい自分の夢や目標に向かって進めたのかを振り返り、どのぐらい進んでいて、どのぐらいできていないかを数値で測れる必要があります。
達成できたのか、達成できていないのか、かなり前に進んだのか、少ししか進まなかったのか、これが数値で振り返れるからこそ、反省したりいい点を吸収して更なる成長へと向かっていくことができます。
OKRは夢のようなものです。企業が掲げるミッションは今年や来年、あるいは10年後に達成できることではありません。それをずっと追いかけ続けていくものです。「こうありたい」という夢に他なりません。
このため、いいOKRとは、100%達成が可能なものではありません。かといってあまりにも非現実的な目標では意味がありません。
本気でやって達成度70%ぐらいにたどり着けるというのが、良く練られたOKRです。
OKRはやる気のある人や、やりたい人だけがやるというのではなく、社長や部長など、全ての人が設定するものです。
会社としてOKRを本気で取り入れ、面談の時間を設けて定期的に振り返ります。
OKRを直接の評価指標にはしません。
給料に影響するとなると、誰もが損をしないようなOKRを設定しようとします。それではOKRの意味がありません。
評価や給与に影響しないので、安心して自分がモチベーションを持って取り組めるべきものを設定することができるようになります。
ただし、好き勝手な目標を立てるのではなく、あくまで企業の目標(OKR)のために自分たちがモチベーションを保って何に取り組むかを設定する必要があります。
OKRは業務全体を網羅しようとして幅広く設定してはいけません。それでは「あれもこれも」となって何を目的としているのかよくわからなくなってしまいます。
そうではなく、自分にとっての本質を見極めて「今はこれに絞る」という分野を決めることが重要です。
そうすることで、やるべきことや、自分がどこまで進んでいるのかを明確にすることができます。
目標を設定するときのフレームワークにSMARTというものがあります。
SMARTはSpecific、Measurable、Attainable(またはachievable)、Relivant、Time-boundの頭文字の組み合わせです。
項目 | 意味 | 内容 |
---|---|---|
Specific | 具体的 | 何をするのかが明確で、誰もがわかる |
Measurable | 計測可能 | 達成度合いが数値化されていて計測することができる。 |
Attainable | 達成可能 | 頑張れば達成可能な目標である(難しすぎても、簡単すぎてもいけない) |
Relivant | 関連性 | 組織やチームの目標と関連している。 |
Time-bound | 期限がある | いつまでにやるという期限が明確に設定されている。 |
このSMARTの5項目を全て満たしたOKRを設定することが、ただのお飾りの目標にしないために重要です。
実際に企業の中にOKRを取り入れて実行し定着させる方法には次の5ステップがあります。(四半期ごとにOKRを設定する例です)
OKRはトップダウンで決められているKPIを考慮しながら、四半期ごとに社員がボトムアップで設定していきます。
OKRは一度決めたらそれを追い続けなければいけないというものではありません。効果がない、モチベーションに直結していない、と分かった時点で「即刻捨て去る柔軟さ」が必要です。
つまり、OKRは見直しや調整、変更が前提となっている仕組みです。
OKRはボトムアップで個人が自由に設定するとはいえ、会社が設定しているOKR(ミッション)に密接に関連している必要があります。
会社が「うちはこういう企業です。あなたはどんな貢献をしてくれるのですか?」に対する従業員の答えがOKRです。
このため、OKRは個人に留まらず、チーム毎や部署毎でも設定していく必要があります。
評価に直結することはないので、目先の利益ではなく、大きな野望を追いかける目標にすることが重要です。
チームをまとめるマネージャーの役割は、次のような大きな視点で、常に最適化をおこなうことです。
この記事の内容はモルガン・スタンレーやGoogleで人材育成や組織開発を率い、自身も起業家であるピョートル・フェリクス・グジバチさんの著書『世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法』の一部要約に個人的な見解を加えたものです。
本書は現代の組織に求めれているものは何か?それを得るためにはどうすればいいかが具体的かつ論理的に記されています。
使われている用語は専門用語ではなく、誰にでもわかりやすいものになっていて、例も豊富に乗っている非常に実践的な良書です。
会社を率いている人や部署を率いている人、あるいはマネージャーを目指している人の必読書といえます。
この記事に興味を持たれた方は実際に本書を手に取ってみることをお勧めします。