21世紀の大成功企業として誰もが認めるGoogleには20%ルールという制度が存在します。
他の企業にはないとてもユニークな制度です。
ここでは、Googleの20%ルールとはどんなもので、何を目的としているかについてまとめています。
Googleの20%ルールとは、業務時間の20%を自分の好きなことに使っていいというルールです。
業務時間の20%をいつ自分の自由な研究に使うかは各人の自由です。
本来の業務に支障が出ない限り、毎日20%の時間を充てることもできるし、夏にこれまでの温存してきた20%の時間を全て使うこともできます。
20%ルールの目的は社員にサボる時間を与えることではありません。主な目的は次の2つです。
通常、業務時間は割り当てられたプロジェクトや業務を推進するために使います。プロジェクトの進捗管理はマネージメントが行っています。
進捗管理することは効率的な業務推進には効果的ですが、誰かの管理下に置かれた状態では自由な発想で物事を考えることができません。
このため、20%ルールを公式に設けることで、マネージメントが管理しない時間を必然的に与えています。
20%ルールではアイディアからプロトタイプを作成し、そのプロトタイプをもとに仲間を募って新しい研究を行います。
日常業務では使わないスキルを学び、普段一緒に仕事をしない人たちと協力します。
20%ルールのプロジェクトから驚くようなイノベーションが生まれることはめったにありません。ですが、プロジェクトに参加した人たちは必ず、成長して以前よりも優秀になります。
20%ルールで市場にリリースされた製品にGoogleウェーブというコミュニケーションツールがありました。
Googleの経営陣もそのアイディアを認め後押しをし2009年に世の中に発表されました。
しかし、利用者数は伸び悩みました。担当チームのメンバーは必死に手直しを加え軌道修正を試みたものの、1年後にはサービスを終了する結果になりました。
様々なメディアからGoogleウェーブは失敗作だと酷評を受けました。
Googleウェーブが市場でユーザーに受け入れられたかという点ではメディアの言う通り大失敗でした。
しかし、失敗が明らかになってから無駄な投資は一切控えられたため、損失は最低限しかかかっておらず、このプロジェクトの失敗により敗者の烙印を押された人もいません。
それどころか、この壮大で新しいプロジェクトに本気で取り組んだメンバーたちは社内でひっぱりだことなりました。
このプロジェクトを経てメンバーは飛躍的に成長し、様々な経験を積んだのです。
実際、Googleウェーブを開発する過程で生み出された技術が後にGメールなどに応用され、企業としても十分にプラスに働きました。
Google創業者のラリー・ページも次のように述べています。
とびきり大きな発想をしていれば、完全な失敗に終わることはまずない。
Googleの中には、失敗した社員を決して非難してはいけないというルールがあります。失敗を祝福する必要はありませんが、その挑戦はある種の名誉になります。
20%ルールで各社員が取り組むのは、自分が興味がありやりたいことです。
このため、20%ルールで達成した偉業に対して報酬を出すことはありません。というのも、20%ルールで自分の好きなことに取り組める時間こそが報酬だからです。
業務で誰かに管理され、時間に追われながら何かを達成するために努力をした場合、達成した暁には報酬が欲しくなるのが人間です。
ですが、自分の好きなことを好きなようにやっていれば、そこに報酬を求めることはありません。
実際、自分たちの好きなことをやるため、自主的に夜や週末などを使って進めることも少なくありません。
この実体から、通常の業務を100%とし、プラスアルファを行うので、120%ルールと呼ばれることもあります。
業務の20%もの時間を自由時間として与えたら、社員がサボりだすのではないか?実現性がないことに時間をただ浪費するのでないか?と考えるかもしれませんが、実際はそうはなりませんでした。
社員たちは与えられた20%の時間を使って、自分の好きなことでかつ、何か目に見える結果を出そうとしました。
20%ルールは、創造性がなく与えられた仕事をすることだけを好む人からすれば地獄のような時間です。
自分で考えて、かつ何か結果を残さなければいけないからです。
一方、優秀で創造性と自主性に富む人からすれば夢のような時間です。逆に、優秀な人を会社に留まらせたいと思ったら、彼らのアイディアを率先する文化が必要です。
20%ルールこそが優秀な人がアイディアを率先できる文化になります。
Appleの創業者 スティーブ・ジョブズは優秀な社員を引き留めるには何が必要かについて、次のように語っています。
最高の人材を採用し、つなぎとめたいなら、彼らに多くの意思決定を任せ、ヒエラルキー(階層構造)ではなく、アイディアに基いて経営しなければいけない。
最高のアイディアが勝利しなければ、優れた人材は会社に留まらない。
なお社員に好きな研究をする自由時間を与えているのはGoogleだけではありません。
3Mは1948年に社員が本業以外のプロジェクトに15%の時間を割く15%ルールを導入しています。
その結果、ポストイットやスコッチガードなどのロングセラー商品が生まれました。3Mの社長は次のように語っています。
優秀な人材を採用し、放っておく。
この記事の内容はGoogleの経営陣 エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル、ラリー・ペイジの共著「How Google Works ―私たちの働き方とマネジメント」の内容の一部抜粋と要約です。
一国家と同等な資金を持ち、世界中で知らない人はいないほどのGoogleという大成功企業の中で、
などなど、これからの時代に欠かすことのできない内容がギッシリ詰まった一冊です。堅苦しくなくユーモアがあり読みやすい文体ですので、ぜひ一読されることをお勧めします。