「営業」の基本フローは大きく次の5つの手順に当てはめることができます。
これは、基本の型で売るものによらず同じです。
最初にお客様と会ったら「アイスブレイク」をして、まずは閉じているシャッターを開け、話を聞いてもらえる状態にします。
アイスブレイクが終わったら、自分が何者かや、サービスのことを簡単に説明する「導入トーク」を行います。
導入トークで自分と商品の簡単な紹介をしたら、「ヒアリング」をして、お客様のことをより深く知ろうとします。
そして、ヒアリングした内容からセールストーク、いわゆるご提案をします。
最後に契約を結ぶクロージングをかけるという流れになります。
以下では、それぞれの内容について細かく解説しています。
最初にお客様と会ったら「アイスブレイク」をします。
アイスブレイクとは、氷を解かすという意味で、親密な関係にない人と出会う時に、緊張をほぐして、コミュニケーションをとりやすい雰囲気を作ることです。
初めて営業に行った先など、相手は「売りつけられるんじゃないか」「買わされるんじゃないか」という疑念を持っている場合がほとんどです。
当然、受け入れられて何でも話してくれたり、聞いてくれる状態ではありません。シャッターが閉まっている状態です。
シャッターが閉まっている状態で、話しかけても相手に声は届きません。
このため、まずはシャッターを開けて、緊張感をほぐす必要があります。
シャッターを開けるといっても、無理やりこじ開けるわけではありません。シャッターを軽くトントンとして丁寧に開けるようにします。
無理やりこじ開けようとする人は、よく営業の本に書かれているような天気の話やニュースの話、オフィスや社員さんを褒めるなど、相手が興味あるなしに関わらず、通り一辺倒な話題を振ります。
もちろん、それらをしてはいけないという訳ではありません。
相手の顔や表情を見ながら、相手に対して気になることや発したいことを自然に話すというのが重要です。
そして、ヒントが落ちていたら、チャンスを逃すことなく発することが必要です。
気づいたことをそのまま「いいオフィスですね」「いい社員さんたちですね」「いい車ですね」というのは3流です。
「ああ、そうですか」で終わってしまいます。そうではなく、相手に興味を持たせ「なるほど」とか「おもしろいな」と思わせる必要があります。
例えば「みなさん癒されてるんじゃないですか?」という疑問を投げかければ、相手は「なんで?」と聞いてきます。「これだけ緑があるオフィスだと、癒されますよね。僕も自然が大好きなので、こんなオフィスで働けたら癒されます!」と続ければ「なるほどね」となります。
他にも、「僕、今日契約決まると思います!」と断言しきれば、相手は「なんで?」と聞いてきます。そこで、「社長の趣味僕と一緒です。今社長が乗っておられる車に僕も乗っています。おそらく感性が似てると思いますので、今日決まると思います」と続ければ「おもしろいな」となります。
相手が「ああ、そうか」というだけでは、相手の心はまったく揺れ動いていません。まったく刺さっていないし、シャッターもほとんど開きません。
そうではなく「なんで?」という疑問や興味を持ってもらい、「おもしろいな」と思ってもらうことで心が揺れ動きます。
「なんで?」「おもしろいな」と思ってもらうために、相手をよく観察することが重要なのです。
アイスブレイクの長さですが、ダラダラと長く話す必要はありません。みなさん忙しく時間がないのがデフォルトです。特に社長などの上の立場の人であれば尚更です。
ヒントをサッと拾って、シャッターをコンコンとノックする。これがアイスブレイクです。
アイスブレイクが終わったら、自分が何者かや、サービスのことを簡単に説明する「導入トーク」を行います。
導入トークの重要なポイントは「簡潔さ」です。
ダラダラと長く話すことはやってはいけない悪い例です。「で!?結論何?」と相手をイライラさせてはいけません。
自分は何の会社で、何のためにきたかを簡潔に話す必要があります。
時間としては10~20秒程度です。本当に短くていいです。ただし、言わないというのはなしです。言ってあるか、言ってないかはだいぶ違います。
「お前は誰だ、名を名乗れ」「何しにきたんだ?」という状態では相手は話に集中することができません。そのもやもやをしっかりと解消しておく必要があります。
いきなり、ヒアリングを開始して探っても、シャッターが開いてなければ、相手は話しません。
簡潔に「どこの誰で、何しに来たか」だけを伝えます。
導入トークで自分と商品の簡単な紹介をしたら、「ヒアリング」をして、お客様のことをより深く知ろうとします。
ヒアリングの悪い例は、とりあえず質問することです。相手が「なんでこんなこと聞いてくるんだろう?」と頭の中にクエスチョンマークが浮かんでいるときは、ヒアリングが上手く行っていません。
意図や目的が不明確な質問は相手に「なんのために聞いてるの?」と感じさせイライラ不快にさせるだけです。
質問しっぱなしになれば、更に最悪です。
そうではなく、相手が「次にこういうことを聞きたいんだろうな」と推測できる質問が良い質問です。
質問の意図や目的が明確である必要があります。
質問して、聞いた内容に対して「それだったらこういうことをやっていきませんか?」と提案したり、「そういうお悩みがあるんだったら、こういうところ大変じゃないですか?」と更に深堀をします。
商談中など、意図しない場面で相手が怒りだしてしまうことがあります。
そのときに、間違っても「いやいや、僕はそういうつもりはなかったんです」という言い訳や、「違うんです」という否定に入ってはいけません。
言い訳や否定をした瞬間に、相手が更にイラっとします。そして、対立構造ができあがってしまいます。
そうではなく、相手が怒ったときにすべきことは「ちゃんとお詫びする」ことです。絶対にイライラさせてはいけないのです。
「もし、私が失礼なことをしてしまったら、今のように、それは気分が悪いとハッキリ言ってください」
「言葉の選び方が悪かったです。申し訳ありませんでした」
という謝罪です。
そして、一番重要なポイントは謝罪するだけで終わらないということです。謝罪のあとに、「ぜひ力になりたい」という熱意を伝えます。
つまり、謝罪と熱意を伝えることはセットです。
「私は、今日、御社を日本一〇〇な会社にするために提案に来ているので、こうした方がいいという気持ちがあればそれを濁さず伝えたいです」
「本当に、今以上の〇〇をつくる自信がありますので、ぜひ今回ご決断いただきたいです」
謝罪は熱意を刺すための、前振りともいえます。
ヒアリングできたら、ここでいよいよセールストーク、すなわち提案です。
このときにやってはいけないことは「全員に対して同じ営業トークをする」ことです。お客様は十人十色、相手やタイミングによってもニーズは異なります。
そういう人たちに、全く同じ営業トークをしていても刺さりません。マニュアルを読み上げるのでは売れません。
それとは真逆で、セールストークの一番重要なポイントは「相手のニーズに合わせた提案」をすることです。
なぜ提案して商品を売り込むかといえば、相手の抱える問題を自分たちの商品やサービスであれば解決できると信じているからです。
だからこそ、相手の状況や状態に合わせた提案を、それぞれにする必要があります。
価格交渉のポイントは、「何があっても値段を下げない」ことです。
商品を売るときに、お客様は値段に目がいきますが、値下げするかどうかは値段の問題ではありません。
自分たちのサービスポリシーの問題です。
もちろん、ただ値引き交渉を断るだけではいけません。「価格以上の価値を提供します」と伝える必要があります。
「そこまで言うなら、お前に任せるわ」と言ってもらえるようにまでする必要があります。
そして、もう一つ重要な点はメンタルです。
値引き交渉に応じてしまう人は、「断られる」という不安や恐怖を持っています。
「これを言ったら受注できないかな」「断ったらダメじゃないかな」と思っています。だから下手に出て、値引き交渉に応じてしまうのです。
ですがそうではありません。値下げを断った結果、「断られてもいい」のです。
相手が一番の重要なポイントを金額に置くのであれば、安いところを探してもらって、むしろ一緒に仕事をしない方がいいです。
トップ営業は、値下げを断ることを言いにくいとは一切思っていません。むしろ、値下げは断ることが当然だと思っています。
もちろん、言い方はとても重要です。相手を突き放すような言い方をしてはいけません。営業の鉄則は、相手に不快感を与えないことです。
相手に不快感を与えずに価格交渉を断るのです。というと「え?どうやるの?」「そんなことできるの?」と思う人がいますが、できます。
それは「お値下げはできないのですが、こういったところで価格以上の価値を提供します」と価値を伝えることです。
値下げ交渉が終わったら、やるかやらないか、YesかNoかをその場ではっきりさせるクロージングになります。
多くの営業が勘違いしていますが、クロージングのポイントは、契約を決めることではありません。
やるかやらないかを、はっきりさせることです。
例えばその日の終わりに、先輩や上司から「今日の営業どうだった?」と聞かれて「受注しました」や「失注しました」と答えられることが一番のクロージングです。
もちろん、どうしてもその場で決められないということもあります。
そうしたときは、いつまでに役員会や稟議が通る通らないかを確認する、つまり、「いつまでに回答をもらえるか?」という期限を決めることが必須です。
期限を決めるだけで終わらせてはいけません、その後の流れもしっかりと確認して、そこまでやってクロージングが完了します。
「★役員会通ったらOKですか?」→「社長の決済があります」→「★社長にお話しいただけるのはいつですか?」といった感じです。
そういう情報を掴んでおいて、前もって電話して「何か必要な資料はないですか?」「お手伝いできることはありませんか」と手を打ちます。
クロージングが下手な営業は失注を恐れます。
提案した後に、「機会があればご検討ください」と言ってサーっと帰る人がいますが、これでは絶対に決まりません。
決して、失注を恐れてはいけません。
失注を恐れず、YesかNoかを詰めていくそれがクロージングです。
自分都合のクロージングをやってはいけません。「今月営業成績が届かないので、お願いします」というのは自分のことしか考えていません。
そうではなく、営業がすることは「顧客にとってベストな判断を自分がする」ことです。
なので、顧客のことを考えてクロージングしていくことが大切です。