ある能力の高い人を雇い入れれば、その人の能力分だけチームの力がパワーアップすると考えがちです。
1人増えればプラス1、2人増えればプラス2、10人増えればプラス10というように単純に力を足し合わせて計算しがちです。
ですが現実は思っているほどのプラスにはなりません。なぜなら人(人に限らず動物)は2人以上集まると手を抜く生き物だからです。
ここではフランスの農業工学教授のマックス・リンゲルマンが突き止めた人の本質、リンゲルマン効果について解説しています。
リンゲルマン効果とは、人数が増えてグループが大きくなればなるほど個々人の生産性が下がっていく現象のことです。
「社会的手抜き(social loafing)」や「フリーライディング(free-rider problem)」とも呼ばれます。
マックス・リンゲルマンは人数が多いほど生産性が下がることを確かめるために綱引きの実験を行いました。
すると一人当たりが出す力は人数が増えるごとに減っていくことが分かりました。
8人が同時に引っ張る力は、1人で引っ張る人が4人集まった時よりも劣ります。
人間だけにサボり癖があるわけではありません。リンゲルマンが馬を使って行った実験でも同様の結果になりました。
馬車を1頭の馬に引かせたときに、馬が発揮した力を1とすると、馬の数を2頭にしても発揮するは2よりも下がりました。
リンゲルマン効果は会社や学校など至る所で見ることができます。
例えば社長と1対1のミーティングをするとなると社員は緊張したり身構えたり全力で臨みます。
一方社長を含め30人でミーティングをすれば、ミーティング中に喋る人は限られた数人になるのが一般的です。他の人たちはただいるだけの状態になります。
リンゲルマン効果はオフライン環境でも同じです。
オフラインの授業やミーティングでも、人数が増えれば増えるほど参加意欲が下がることがわかっています。
自分が発言しなくても誰かが発言するので、積極性がなくなるのは当然のことです。
人が2人以上の集団になったときに手を抜くのは、一人一人がどれぐらいやっているかが分かりにくくなるためです。
「どうせ全力でやったところで、自分の手柄にはならない」ということを無意識に考えてしまうということです。
ポイントは手を抜くことがいい悪いではなく、無意識にそうやってしまうということです。
リンゲルマン効果には「生産性が下がる」以外にも重大な危険性があります。
それは「無責任な決断が下されやすくなる」ということです。
1人や少人数で自腹を切って新しいプロジェクトを立ち上げるときは皆命がけになります。
ですが、大勢が集まって責任の所在が不明確な状態で新しプロジェクトを立ち上げるとみんなの理想を詰め込んだ実現不可能な計画にGOサインが出ることがあります。
責任の所在が不明確なので「自分ではない誰かが責任を負うだろう」という思考が無意識に働くためです。
実際、「アルネ津山」や「アウガ」など行政が絡み補助金を使ったプロジェクトで大損失を出している計画がたくさんあります。
リンゲルマン効果には一つ重要なポイントがあります。それは集団になったときに手を抜くのは男で、女性で手を抜く人は少ないということです。
男性の方が女性よりも40%多く手を抜くことがわかっています。
大人数が集まるオフラインのZoomミーティングでも男性よりも女性の方が顔出ししている割合がおおいのもうなずけます。
人が2人以上のグループになったときに手を抜くのは本能なので仕方ありません。そこに良い、悪いはありません。そういうものです。
その原因は「責任の所在が不明確」「しっかりやったところで評価されない」という仕組みです。ここ改善すればチームでもしっかりと力を発揮することができます。
野球やサッカーのように誰がどこを守るのか?そのプレーの良しあしはどうやって判断するのかを明確にすることが、チームでパワーを発揮するときにとても重要です。
2人以上のチームで何かをするときは「誰が責任を負うのか」「成功はどう評価するのか」を明確にする仕組みをつくりましょう。
この記事のスイスの有名起業家 ロルフ・ドベリが記した「Think right ~誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法~」の一部抜粋と要約です。
人が陥りがちな思考の罠がとてもわかりやすくまとまっています。この記事の内容以外にも全部で52個の人の性質がわかりやすい具体例で解説されています。
この記事の内容でハッとした部分が一つでもあった方は是非手に取ってご覧になられることをお勧めします。
あなたの人生をより賢く豊かにしてくれることは間違いありません。