企業で働いていれば必ず辞める社員が出てきます。他にも、給料に見合ったパフォーマンスを出せなかったり、チームのコミュニケーションを阻害するなど、組織として辞めてもらわなければいけない人も出てきます。
そうした場合に、辞めようとしている人無理に引き留めたり、辞める人を悪者にしたり、一方的に解雇を言い渡す組織が少なからずあります。
こうした行為は、辞める人を傷つけるだけでなく、残っている社員に恐怖心を与えたり、士気を下げる原因になります。
ここでは、企業を去る人に対する接し方についてまとめています。
まず第一に自己都合であれ、会社都合であれ会社を去る人は悪くないということです。
そもそも、その人を雇ったのは企業自身です。その人が会社の文化にフィットして、協力してやっていけると判断し受け入れたのは企業です。
つまり、その人が辞めるに至ったということは、企業側の判断ミスです。
組織の中でパフォーマンスを発揮できなかったということは組織にとって非常に悪いことですが、そのことを見破れなかったり、その人のパフォーマンスを引き出すことができなかった組織がそもそも悪いのです。
社員のパフォーマンスや態度が悪いといった理由で解雇通知をつきつけなければいけないとき、一番やってはいけないことは、その社員が寝耳に水だと感じることです。
これは企業側の大きな罪です。その社員には常日頃から、何が悪いのか、どこを直すべきなのかといったフィードバックを与え、修正する機会を作るのが企業の役目です。
そして、パフォーマンスを出すための適切なサポートをした上で、成果を出せないのであれば、双方が合意して仕方がないという結論に落ち着きます。
また、一方的に解雇を言い渡すことで、その社員は「企業が裏切った」と感じ恨みを持つことになります。
その恨みは、会社の外であちこちにあることないこと言いふらす原動力になります。
それは企業にとって大きな損失になるため避けなければいけません。
活躍していた優秀な社員が突如「やめます」と言って退社することがあります。いわゆるびっくり退職です。
これは言われた側からすると寝耳に水で「ちょっと待ってくれよ!」と言いたくなりますが、これも企業側の落ち度です。
人が企業を辞める決断をするときは、その前日や数週間前に決めたわけではありません。ずっと前から辞めようかどうしようかと悩む要因があり、そのコップが溢れ、行動に至っただけです。
本来組織のマネージャーは社員のそうした不満や悩みを吸い上げて、会社の中でその人が満足できるようなキャリアビジョンを提示することが重要です。
そういったコミュニケーションや相手の理解を怠ってきた結果がびっくり退職です。
辞めていく社員をどのように扱うかは、会社に残る人の士気にも強く影響します。
仮に十分なパフォーマンスを出せず解雇を言い渡された人を「あいつはダメな奴で使い物にならない」というように見下して悪いという評価を下せば、組織の中に残る人の心に芽生えるのは「自分たちも結果が出せなければ、同じように扱われるのではないか」という恐怖心です。
それは「この組織に長期間いては危険だ」という危機感にもつながります。
また、自己都合で辞めた人を「あいつは自分勝手の裏切り者だ」と罵れば、会社に残った社員は「この企業は自分たちよりも会社のことを優先する」と感じます。
そもそも、社員はマネージャーや経営陣よりも、他の社員(同僚たち)と親しい関係にいます。
このため、辞めていく社員を罵り馬鹿にし見下すことは、残る社員の恐怖心や不信感、危機感を煽り、組織への愛着心や士気を大幅に低下させます。
会社を去る決断をした人や、去らなければならなくなった人たちに対して、企業は敬意を払わなければいけません。
その人が一定期間会社にいて、会社のために働いてくれたという事実を決して忘れてはいけません。
「今回は非常に残念ですが、〇〇の理由により、Aさんは退職することになりました。私たちは、これまで私たちに△△といった貢献をしてくれたAさんを誇りに思います」
といった感謝の念を表明する必要があります。
このように伝えることは、辞めていく人の自尊心を保つだけでなく、企業に残る人も、私たちは一人一人の人として尊重されていると感じることができます。
解雇を言い渡すことは、いう側にとってもツラいことです。このため、なかなか言い出す機会を掴めず、ズルズルと先延ばしになってしまうことがあります。
ですが、どんなにチャンスを与えてもダメな人はダメです。ダメな人を囲い続けることは企業に損失を与え、チームの士気を下げます。
企業が優先するべきことは、一人の社員ではなく、チームです。そこをはき違えてはいけません。
そもそも、解雇を言い渡される社員にとっても、自分の能力を発揮できず評価が低い場所に長く居続けるよりも、自分が輝ける場所を探して旅立つ方が人生はプラスに進みます。
企業側が評価していないのにも関わらず、なかなか解雇を言い渡さないというのは、その人の人生を奪っていることでもあります。
解雇を言い渡すなら、十分なチャンスを与え、そして可能な限り早めにが鉄則です。
Appleのスティーブ・ジョブズやGoogleやTwitterの経営幹部のコーチングを務めたビル・キャンベルは解雇について次のように語っています。
誰かを解雇すると、その日は一日中やりきれない気持ちになる。それから、むしろもっと早く解雇するべきだったと後悔する。何度チャンスを与えても、ダメなものはダメなんだ。
辞めていく人に仕事を続けさせることはできないが、自尊心を保たせることはできる。
この記事の内容はGoogleのCEOと会長を務めたエリック・シュミットやプロダクト責任者を務めたジョナサン・ローゼンバーグらが書いた「1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え」の内容の一部要約と自分なりの解釈を加えたものです。
ビル・キャンベルはAppleのスティーブ・ジョブズやGoogleやTwitterの経営幹部のコーチングを務め、世の中に偉大なリーダーを何人も送り出してきた人物です。
ビル・キャンベルが貫いてきた生き方やそこにまつわるストーリーには、最高のチームを作るためにリーダーやコーチが知っておくべき考え方や行動が宝の山のように詰まっています。
その考え方はビジネスやチームを成功に導くだけでなく、人として幸せに生きるためのより本質的な知恵でもあります。
この記事に興味を持たれた方は、本書を実際に手に取ってみることをお勧めします。あなたの人生をより幸せにし、成功へと導いてくれることは間違いありません。