企業において人材の採用は最も重要な課題です。一切妥協することなく本気の姿勢で臨む必要があります。
だからといって、長時間面接を行ったり、何度も何度も面接を重ねたところで結果が好転するわけではありません。
ここでは、面接時間や回数は何回がベストか、具体的にどういった質問をして、どういった軸で評価すべきかについてまとめています。
面接時間の最適な時間は30分間と言われています。
たった30分で評価するなんて「難しい」「短すぎる」という声が聞こえてきそうですが、30分で十分に評価可能です。
仮に、1時間面接したところで面接の質は上がりません。むしろダラダラと長引き質が低下するリスクの方が大きくなります。
そもそもほとんどの面接結果は不採用になるので、そこに時間をかけすぎるのは大きなムダです。
面接の標準的な回数は3回、多くても5回までです。
Googleでは過去の30回以上も面接を実施したものの、それでも合否がきまらなかったことがありました。
面接の精度と回数を分析した結果、5回目以降は回数をいくら重ねても、精度は微々たるものしか変わらないことがわかりました。
このため、面接回数は最高5回。そこを上限として合否の決定を下す必要があります。
▼面接回数と精度の関係
決められた30分間の面談の質を最高のものにするためには、行き当たりばったりではいけません。下準備が必要になります。
面接前の下準備とは、具体的に次のようなものです。
最高に質の高い面接とは、決められたフォーマットに沿って質問を浴びせかけるものではありません。
面接の一番の目的は、相手の人となり、自頭力を知るものです。
このため、下準備で得た内容を更に掘り下げることが重要です。履歴書を読んだりネット検索をして気になったことを深く深く掘り下げていきます。
そして相手の思考能力や経験値の限界を知る必要があります。
深く深く掘り下げ限界を知るといっても、圧迫面接のようにストレスをかけるわけではありません。友人同士の知的な会話のようなものが理想的です。
候補者の思考の構成方法や議論の組み立て方を確認するためには、あらかじめ答えが用意されているものではなく、候補者の考え方や感じ方、答えの導き方を知ることができる質問が重要です。
ありきたりではなく、その場で考えて見なければ答えられないものが理想的です。
例えば、次のような質問は抽象的から始まり、その人固有のより深い思考や人柄を知ることができます。
今読んでいる本からは、日常的に読書する習慣があるか、どんなジャンルに興味を持っているのか、本の内容をどのように活用しているのかを知ることができます。
プロジェクトで苦労したことや成功した理由からは、プロジェクトを主導する人物なのか、言われたことを黙々とこなしてついていくタイプなのかを知ることができます。
職場でのシーンを想定した、シーン質問もその人の考えを知る効果的な質問です。例えば、部下を持つポジションの人を面接する場合は次のような質問をします。
この質問からは、周囲の力を借りようとする人物なのか、自分一人で抱え込む人物なのかがわかります。
なお、自分一人の力で何とかしようとする人は、利己主義的で、周りの人に不満を持ちやすい傾向があります。
一方、周囲の力を借りようとする人は、信頼関係を築き、相手が困っているときにも自然と手を差し伸べる傾向があります。
30分間の面接で気にかけることは、あなたがどんな質問をするかだけではありません。
質問や会話の中で相手がどのような質問を返してくるかにも意識を向ける必要があります。
会社の中で仕事を進めるには、わからないことや気になることがあったら自分が新人という立場に関係なく質問をする能力が求められます。
そして質問の内容が、頭がいいか、好奇心旺盛が、柔軟か、面白いかといった軸でも評価します。
一緒に働くのだから、一緒にいてみんなを楽しませたり、ワクワクさせたり、やる気を引き出してくれる人物かどうかを見定める必要があります。
30分間の面接を行う時は、審査結果に記入する時間もあわせて確保しておきます。
面接直後に自分がどう感じたかをまとめるのと、数時間経過してから、あるいは1日、1週間経過してからでは、情報の鮮度がどんどんと落ちていきます。
面接後はできるだけ直ぐに審査結果に記入することは、面接官の義務です。
採用面接をより上手に機能させる方法の一つに、面接結果を全員に公表するという方法があります。
面接官は自分のフィードバックが全員に見られることを意識するため、内容を入念に吟味することになります。
いいかげんなフィードバックはみんなから失望を買うことになります。
また、フィードバックをみんなに公開することで「これなら私の方がもっと上手にできる」といった、面接官候補を醸成することにもつながります。
候補者の最も優秀な回答に黄色いマーカーを引き、最もお粗末な回答に赤いマーカーを引くといった工夫も面接官としての能力を示す工夫になります。
優秀な人にとっては面接することは、自分の仕事の成果をみなに公表できることなので、特権になります。
面接試験を厳しくして優秀な人ばかりを採用することに力を注ぐと「エリート主義だ」という批判を受けることがあります。
そんな批判に臆する必要はありません、エリート主義でいいのです。
批判をしてくる人たちはあなたの企業の業績に対して何の責任も負いません。しかし、あなたたちは自社の企業の業績や、誰と一緒に働くかに責任を負わなければいけません。間違った人を採用してしまったら、被害を被り、時間を失い、尻ぬぐいをしなければいけないのはあなたたちです。
お情けや引け目を感じて中途半端な人材をやとってはいけません。企業の中を正常な状態に保ち、長期的な成長に導くためには、周りがどれだけ批判しようが断固拒否する強さが必要です。
だからこそ、徹底的に厳しく面接して、本当に優秀なひとだけを厳選してください。
採用面接で重要なことは30分間で、その人に点数をつけることです。評価を下すために面接をしています。
採用者一人につき1~5点で得点付けを行います。次のように、各得点に対して採点を行った人がどのように行動するかをセットにしておくととてもわかりやすくなります。
得点 | 内容 |
---|---|
1 | 不合格。(絶対に採用してはならない。会社のためにならない) |
2 | 採用をおすすめしない。(能力はあるのかもしれないが、私は一緒に働きたくない) |
3 | オファーを出しても構わないが、自分以外の誰かが強く推奨する必要がある。(私一人では判断しかねる) |
4 | この人物は今回のポストに最適である。採用しないならこの私が承知しない。(採用を邪魔する人がいたら、私が出向いて直接交渉を行う) |
5 | 文句なしの合格。(この人物は絶対に会社に貢献する。貢献しないなら私の給料を減らしてもいい) |
1~5点までの評価を行うには、なぜそのように判断したかが明確である必要があります。
その判断は次の5つの軸で行います。
軸 | 内容 |
---|---|
リーダーシップ | チームを成功に導くために主体的に行動できるか。実績や経験 |
専門知識・情熱 | 職務に関する知識や、胸に秘めた情熱があるか。 |
自頭力、探求心 | 学業成績ではなく問題解決能力があるか。変化、挑戦、学習を好むか |
協調性(思いやり、礼儀正しさ、面白さ) | 自分ではなく、組織やお客様の利益を優先できる人物か。一緒に働いて楽しいか。 |
企業文化への一致 | 企業のビジョンや行動指針に合った人物か |
これら5つの軸をれぞれで評価を行い、その総合結果を1~5の得点として割り出します。
上記の5つの軸で評価するときには、それぞれの軸ごとに必ず裏付けとなる理由が必要です。
「この人は優秀だ」というのは許されません。
「この人は優秀だ、なぜなら~だから」という理由が添えることが必須です。
自社に合った優秀な人材を厳選するため、他の社員にも拒否権を与えます。
具体的には、誰か個人ではなく、4人ほどからなる選考委員会を形成し、拒否権を与えることが効果的です。(※採用担当以外には承認権はありません)
直接面接をした人は、その人の見た目や話し方、話の内容などに好感を抱いてしまったり情が移ってしまうことがあります。
このため、データだけから判断するこの委員会の判断を与えることは、採用面接をより厳密に行うために非常に重要です。
なお、選考委員会は昇進者を決定する場合にも驚くべき効果を発揮します。直接的に関係がある人は会社にとって貢献するかどうかよりも、嫌われたくない、落ち込ませたくない、人間関係を壊したくないといった心理が働くため、どうしても公正に評価することは難しくなります。
直接的な関係がなく個人でもない4人の選考委員にも判断させることで、無駄な昇進を数多く防ぐことができます。
意思決定は誰か単一の一人ではなく、様々な面接官によってなされるべきです。
最低でも、人事担当、担当部署のマネージャー、社長の3人による評価と、4人ほどからなる選考委員会による判断を行うべきです。
担当部署のマネージャーによっては、自分の部署にくる人材を選ぶ絶対的な権利を主張する人がいます。「この人物を採用しないなら、辞めてやる」といった脅しをしてくるような人です。
そういう人には「どうぞ辞めてください」というべきです。
自分に強い権限を与えるように要求してくる人は独裁的な物事を進める傾向があります。そういった人が社内にいると企業全体が毒されて行きます。
人事や、他のメンバーの意見を尊重できない人はやめるべきです。
社内の中にビジョンに理解を示さず、協調性がなく、自己の利益を優先する人が数人いるだけで、企業の雰囲気は真っ黒く染まっていきます。
リンゴの樽の中に、ほんの数個腐ったリンゴがあると樽の中のリンゴは全滅します。
このため、人が足りないという理由だけで、質の低い人材を雇ってはいけません。そういった人は将来、会社の足枷や大きなマイナス要因に発展します。
迷ったら落とすが鉄則です。
この記事の内容はGoogleの経営陣 エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル、ラリー・ペイジの共著「How Google Works ―私たちの働き方とマネジメント」の内容の一部抜粋と要約です。
一国家と同等な資金を持ち、世界中で知らない人はいないほどのGoogleという大成功企業の中で、
などなど、これからの時代に欠かすことのできない内容がギッシリ詰まった一冊です。堅苦しくなくユーモアがあり読みやすい文体ですので、ぜひ一読されることをお勧めします。