企業の社長というとエリートコースを進み、自分自身が最もそのビジネスを知り尽くし、従業員を引っ張っていく絶対的な存在でなければいけないといった固定観念を持っている人は少なくありません。
ですが、企業の中で社長が優秀である必要性は一切ありません。むしろ、企業が成長していくためには、自分よりも優秀な人たちで周りを固めることの方が重要です。
ただし、優秀であれば誰でもいいというわけではありません。当然なんでもかんでもこなせる人でなくても問題ありません。
ここでは、社長の周りに置くべき優秀な人材とはどういった人物かについてまとめています。
社長が自分よりも優秀な人を雇うことを嫌い、自分がその組織の中で一番であろうとすることがあります。それはその組織にとって非常に危険な状況です。
というのも、社長が組織の発展やチームとしての成功よりも、自分の利益を優先していることに他ならないためです。
それは、組織の成長を奪い、生き残る確率を著しく下げる行為でもあります。
また、そういった社長は現在働いている社員の成長すらも拒みます。自分の利害を優先して、自分よりも部下が優秀にならないように、あえて経験や学ぶ場を与えないといったことさえします。
もし、社長の周りに、優秀な人がおらず、社長のワンマンで進んでいる企業にいるのであれば、あなたの人生のためにも即刻脱出するべきです。
自分よりも優秀な社員で身の回りを固めるとは、自分よりもあらゆる面で優れた人を雇うということではありません。
そんな優秀な人材はそうそういませんし、いたとすれば自分自身で企業しています。
そうではなく、専門性で飛びぬけた人を何人も持つということが重要です。
例えば、技術部長であれば、社長よりも技術について卓越した知見や経験を持っていること。IT部長であれば、社長よりもIT技術やプログラミングスキルで、卓越した知見や経験を持っていること。経理部長であれば、社長よりも経理スキルで卓越した知見や経験を持っていることです。
そして、各分野においてそうした人たちが会社の代表であるべきです。どの面を切り取っても社長が常に矢面にたって対応するというのは、バランスのとれていない、あるいは能力が低い組織です。
社長がすべきことは、そういった自分よりも優秀な人たちをまとめたり、意見を吸い上げて最善の決定に導くことです。
優秀な人材といっても、あらゆるものに秀でているという人材は稀です。そういった人材を求めることは、ないものを求めるのと同じです。
そうではなく、優秀な人材とは、何かに特化しているがそれ以外はダメというのが一般的です。欠点があるというのは決して悪いことではありません。
何かを特化させたことによる代償のようなものです。
トップはその欠点に目をつぶり、それを補う必要があります。
ただし、一部に特化しているからという理由だけで雇ってはいけません。
どれだけ優秀でも、自己中心的で自分の利益しか考えていない人を上のポストに置けば、組織の中に軋轢がうまれ、衰退し、分解していきます。
このため社長より優秀な社員を採用するときには、次の4つの要素を持っているかどうかを確かめる必要があります。
採用すべき優秀な人材に必要な要素の1つ目は「知性」です。
知性とは物事を良く知っていたり、勉強ができて、いい大学を出ているということではありません。新しい情報を取り入れ、それらを現在取り組んでいる問題や未来の改善に応用できる能力のことです。
これまでの習慣や決まりに捉われず、柔軟に考える「発想力」も知性の一つです。
採用すべき優秀な人材に必要な要素の2つ目は「勤勉さ」です。
世の中は常に変化し続けます。環境も人も技術も変わっていくのが当たり前です。そのような世界でビジネスをやっていく上で、学び続ける力は必須の能力です。
「ここまでやったらお終わり」「自分はこれ以上学ぶ必要はない」と考えている人間は組織のガン細胞になり、組織を内側から破壊します。
採用すべき優秀な人材に必要な要素の3つ目は「誠実さ」です。
ウソをつかない、自己利益よりも組織の利益を追求できる。そういった姿勢がある人でなければ、人の上に立ってはいけません。
採用すべき優秀な人材に必要な要素の4つ目は「根気強さ」です。
組織の中で新しい取り組みをして、人と関わっていくことは上手くいかないことの方が多くあります。そうしたときに、打ちのめされても立ち上がり、再び挑戦する情熱と根気強さを持っていることが大切です。
打ちのめされても立ち上がり、再び挑戦する情熱と根気強さは周りにも伝染します。チームのメンバーを鼓舞し、チームの成功を引き寄せます。
知性、勤勉さ、誠実さ、根気強さを持っている人は、自分が幸せになったり利益を得るためには、チームメンバーと協力することが必要だと理解できる人です。
自分が何かを得るために、組織を第一優先に考えられる人は貴重な存在です。
4つの素養を持ち、組織第一が自分の利益になることを理解している人は、チームの誰かが喜んでいるときに、抱き合って一緒になって喜ぶといった行動をとります。
なぜなら、チームの成功が自分の成功でもあるからです。
一方、チームの成功と自分の成功を関係づけられない人は、チームの誰かが喜んでいるときに「ズルい」「悔しい」といった感情を抱きます。これは自分がよくみられたい、自分の利益を最大化したいと考えている証拠です。
自分以外のチームメンバーの成功を祝えない人は、どんなに優秀でも組織の上に置いてはいけません。
社長の周りにおくべき優秀な社員の特徴に「ずけずけとものを言う」という性質があります。
一般的に人は自分の意見を尊重して欲しく、反論や反対意見を聞きたいとは思っていません。そういった気持ちが強い社長の周りにはイエスマンや能力が低い人が集められることになります。
本当に優秀な人たちは会社のことやチームとして勝つことを第一優先で考えています。それらは「もっとこうするべきだ」「このままではダメだ」という耳の痛い苦言となって出てきます。
社長はそういった意見を退けたり、発言権を取り去るのではなく、「会社のことを心から考えているチームメンバーだ」と捉えて敬意を払う必要があります。
世間の風潮や大勢の反対に気持ちを折らすことなく、情熱を持って取り組める人とは、そのようにずけずけとものを言うものです。
一筋縄でいかないのが当たり前です。
人材を採用するときに、どうしてもできる限り優秀なスーパースターをたくさん採用しようとする傾向があります。
しかし、スーパースターだけではチームは成立しません。そして会社は一つのチームです。
野球もそうですが、強いチームは攻撃が得意な人、守備が得意な人、バントが得意な人がいて連携ができているチームです。
4番のホームランバッターだけでチームを作ったら、それは決して強いチームではありません。ただの強い個人の集まりでしかありません。
強い個人の集まりは、強いチームに劣ります。
チームの中にはそれぞれの得意分野が異なる人がいるべきです。それぞれの才能が折り重なることで最強のチームが出来上がります。
どんな人にも限界があります。重要なのは、メンバー1人1人を理解し、彼らを際立たせているのは何かを知り、残りのメンバーと上手に嚙み合わさるように手助けすることです。
何かの能力に秀でているだけでなく、共感力や感性も強いチームを作るためには重要です。知性と心が組み合わさった人材が優秀な人材になります。
多くの企業が人材を採用するときに、実際に取り組む業務の経験がある即戦力を選びがちです。
ですが、そういった実績や既にやったことがあるという事実からは、その人が持つ本当のポテンシャルはわかりません。
実際、優秀な人はやったことのないことに、勤勉にとりくみ、スポンジのように吸収し、応用していく人材です。
そして、そのように全く新しいことにひるまずに立ち向かっていける存在こそ、会社に危機や変化が起こったときに、強い心を持って何度でも立ち上がる貴重な人材になる可能性が高いです。
逆に、自分のやったことしかやらないという人は、変化や成長を拒み、会社のガンになるリスクがあります。
経験不足という理由だけで門前払いにすることは、企業にとって大きな損失になる可能性があります。
企業を強く生き残れるチームにするために重要なことは、正しい人材を採用することです。正しい人材とは「知性と心を身につけている人」です。
知性と心の両方を身につけている人材とは次のような人です。
素早く学習する勤勉さと、厳しい仕事を厭わない姿勢、ウソをつかず真剣に取り組む誠実さ、情熱を持って根気よく取り組み、何度でも立ち上がる根性、チームメンバーへの共感力、自分の利益よりもチームの利益を優先できる、チームファーストの姿勢を持つ人。
この記事の内容はGoogleのCEOと会長を務めたエリック・シュミットやプロダクト責任者を務めたジョナサン・ローゼンバーグらが書いた「1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え」の内容の一部要約と自分なりの解釈を加えたものです。
ビル・キャンベルはAppleのスティーブ・ジョブズやGoogleやTwitterの経営幹部のコーチングを務め、世の中に偉大なリーダーを何人も送り出してきた人物です。
ビル・キャンベルが貫いてきた生き方やそこにまつわるストーリーには、最高のチームを作るためにリーダーやコーチが知っておくべき考え方や行動が宝の山のように詰まっています。
その考え方はビジネスやチームを成功に導くだけでなく、人として幸せに生きるためのより本質的な知恵でもあります。
この記事に興味を持たれた方は、本書を実際に手に取ってみることをお勧めします。あなたの人生をより幸せにし、成功へと導いてくれることは間違いありません。