マネージメントなど会社を運営する人は社員を評価する必要があります。
評価は「会社がその人をどうみなしてるか」や「給料に影響を与える」ものです。社員に一人一人にとってとても大きな意味を持ちます。
評価の内容によって「もっと頑張ろう」というモチベーションにつながったり、「この会社にいても自分の将来は暗い」という会社を辞める判断にもつながります。
多くの人が陥っている評価に関する勘違いがあります。
それは「正しく評価することが大事」ということです。評価リストがあって、その通りに一つ一つチェックしていく、まさに学校のテストのような方法です。
どれだけ厳しくチェックしたところで、悪い評価を下された人は、悪い印象しか抱きません。
テストと同じ減点方式の評価では、人のモチベーションが上がることはありません。
社員のモチベーションを上げるための手段としての評価で重要なことは「評価に対する納得感」です。
どれだけ悪い評価がくだっても、社員がそれに納得していれば受け入れることができます。改善すべき課題として捉えることができます。
逆に、どれだけ正しく評価しても、社員がそれに納得していなければ決して受け入れることはありません。
改善やモチベーションにつながることはなく、不満を募らせるだけです。
正しい評価基準は、社員が評価に納得するためのツールの一つでしかありません。
評価に対する納得感を上げるには、出発点となる目標設定がとても重要になります。
目標設定の段階で、その背景や、何を達成すべきか、達成するとどういうメリットがあるか、頑張れば達成できそうなのかを理解している必要があります。
次の3つのステップで目標設定へのを納得いくものにすることができます。
まずは会社を繁栄・存続させるために「やらなければいけないこと(MUST)」を伝える必要があります。
その際やるべきことは次の2点です。
仕事をするうえで当たり前となる「やらなければいけないこと」を納得してもらうために最も重要なのが「丁寧に説明する」ことです。
「なぜこの目標なのか」の理由が説明されない限り納得することはできません。
背景の説明は目標設定以外の何かを取り組みを変えるときも必要です。例えば「メールソフトを変える」ときに急に上から「メールソフトを変えます」と言われると、みんなから反発が起きます。余計な手間が増えてめんどくさいからです。急に変えることに納得している人は誰もいません。
それが「セキュリティ上の不具合が見つかって、至急変えないと大きな損失を及ぼす」という説明があれば納得して、メールソフトを変更することに積極的になります。
「なぜ」を説明することはとても重要です。言わずにわかることはありません。
「なぜやるか」の背景を懇切丁寧に説明し理解してもらえたら、次にやることは「具体的に何をやるか」を伝えることです。
人は具体的に何をやればいいかをイメージできないとパニックに陥たり、何をしていいかわからず途方にくれる性質があります。
逆に、何をするべきかを具体的にイメージできれば実現する可能性が飛躍的に高まります。
例えば、「売上1000万円がノルマ」という目標が設定されたときに、「〇〇のエリアで、A社とB社を中心として、Cという製品をそれぞれ〇台売って1000万円を稼ぐ」というところまで具体化すると、次に何をすればいいかがイメージしやすくなります。
「やらなければいけないこと(MUST)」はあくまで会社側の要望にすぎません。
これをやる意義があるのだと納得しモチベーションを出してもらうには、「その目標を追うことで自分は何を得られるのか」を紐づけてもらう必要があります。
この項目は社員のモチベーションに直結するため、会社の目標を懇切丁寧に説明して納得してもらうことよりも、重要度が高いといえます。
そのためにやるべきことは次の2つの紐づけです。
ここでの「得られること」とは、「昇給できる」「ボーナスが出る」という目標達成に伴って会社側が与えるものを説明することではありません。
社員自身が抱いている「やりたいこと」とその仕事を紐づけることも重要です。人によっては「お金」かもしれません。「成長」や「人との関わり」を重要視する人もいます。
モチベーションを上げるためには会社の目標を自分事として紐づけてもらう必要があります。
そのためには、その目標を達成することで、「自分自身が何が得られるか」を考え出してもらいます。
マネージャーが「これも得られる、あれも得られる」と意見を言うのではありません。
マネージャーの役割は社員が自分で紐づけをするためのサポートです。そのためには質問がすべてになります。アドバイスや押しつけは厳禁です。
「この目標を達成することで、〇〇さんは何が得られると思いますか?」
「この目標が達成できないと、〇〇さんは何を失うと思いますか?」
「自分自身の目標との紐づけ」ができたら、次にすることは「組織など自分以外に与える影響を紐づける」サポートです。
目的は、目標達成の影響範囲が自分だけでなく、周囲など多岐にわたることを理解してもらうためです。一つ高い視点を持ってもらうことができます。
〇〇さんがこの目標を達成することで、周囲にどんな影響を与えられると思いますか?
対象は組織や組織のメンバー以外に、お客さんや家族などでも構いません。
自分のメリットにもなり、周りからも感謝されることが実感できれば大きなモチベーションになります。
「やらなければいけないこと(MUST)」の背景とやるべき具体的なことが理解・納得でき、その目標を達成することで自分が「得られること(GET)」を理解・納得できたら、次にやることは「達成可能な実感(CAN)」を持ってもらうことです。
「目標は高ければ高いほどいい」と言う人がいますが、それは人の性質上間違っています。人の性質として「やる気」は「達成」と「達成したことの認知」により生まれることがわかっています。
決して高い目標を掲げることではありません。高い目標を立てたことで達成感が味わえないとやる気はどんどんと下がっていきます。
それが何回も続いてしまうと「どうせ無理」「やるだけ無駄」という感情につながってしまいます。
適切な目標設定をする以外にマネージャーがやるべきことは「達成可能性を上げる」ことです。
部下に「やれそうだ」「チャレンジしてみよう」と思ってもらうことがマネージャーの仕事の一つです。
具体的には次のような質問をしていきます。
▼達成に必要な要素の洗い出し
達成に役立つ武器にはどんなことがあると思う?
何があれば達成できると思う?
どんなことがあると達成が妨げられると思う?
達成のために何を効率化する必要があると思う?
優先順位が低くて、やめられる業務はある?
評価制度を文字として言語化している企業は多くあります。ですが、評価制度を全てとして考えてはいけません。
評価制度が何のためにあるかといえば、社員を昇給したり、必要な能力をつけてもらう「モチベーションアップのため」です。
社員のモチベーションを上げるツールの1つとして評価制度があるのです。
評価制度を適用するために社員がいるわけではありません。評価制度は使い方を間違えると社員のモチベーションを下げます。
その年やクオーターの評価を実施するときに、達成した項目や改善して欲しい項目を伝え、その理由として「評価制度のここに書いてあるとおり、〇〇が次のステップに進むために必要」という補足として使ったときに最も効力を発揮します。
評価制度の裏には必ず「なぜその評価制度が設定されたのか」というストーリーがあります。
例えば「こういう能力を身に付けて置いて欲しい。それは過去にこんなことがあったから」「次の役職に進むと必ずこの能力が必要になる」「うちの会社は組織内の人の関わり合いを大切にしている」といったものです。
マネージャーは評価制度の裏のストーリーを知っておく必要があります。
その評価制度が設定された背景も含めて説明することで、評価に対する納得感が増すためです。
人事評価に関してマネージャーが知っておくべきことは次の5つです。
この記事の内容は「シリコンバレー式最強の育て方 人材マネジメントの新しい常識1on1ミーティング」の内容の一部抜粋と要約です。
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