企業では将来どういった方向性に進んでいくかを決めるときには、必ず判断することが必要になります。
新しく何をするか、今やっていることを辞めるのかなど、決断しなければいけないことは様々です。
ここでは、正しい判断の方法についてまとています。
様々な企業がそれぞれ独自の判断方法を持っています。
例えば、ワンマン社長の元では軍隊式のトップダウン型で決断を下します。上が右と言えば右、黒と言えば黒です。
大企業やお役所は決められたワークフローに沿って判断をしていきます。課長→部長→本部長→副社長→社長といった流れです。いわゆる官僚型です。
ベンチャー企業はみんなが集まって話し合うコンセンサス型です。全員に発言権があり、みんなの合意によって決断しようとします。
それぞれの企業がみな「自分たちのやり方が正しい」と思い込んでいます。
ではどれが正しい方法かというと、結論はどれも正しくないです。(正確に言うと足りないです)
いきなりですが、そもそも絶対的に正しい判断というものは存在しません。
この世の中は学校のテストとは違い正解はないものです。何が正しい正しくないというのは、やってみないとわからないところでもあります。
また、ある人と別の人の意見が対立して平行線になったとき、どちらか一方が正しいのではなく、どちらも正しい場合があります。
どちらかが100%正しいのではなく、どちらも60%や80%正しいという状態です。
つまり、絶対に正しい判断をしようといって会議を進めていると永遠に何も決まらないことが頻繁に発生することになります。
正しい判断がない以上、重要になってくるのは、どのようにして判断を下すかです。
判断を下すときに重要になるのは「判断の正しさ」「判断に至るプロセス」「タイミング(期限)」「実現可能性」の4つの要素です。
どれかが重要なわけではなく、4つの要素がそれぞれに重要です。
判断の内容の確からしさを決めるのはデータです。
もちろんデータだけで本当に正しいかどうかを見定めることは困難ですが、主観や直感ではなく、データを参考にすることが必要となります。
イギリスのロンドンでは水道管の水漏れが問題になっていました。そこで水道管にセンサーを取り付けデータを収集して、そのデータをもとに対策を行った結果、25%の水漏れを改善することができました。
もちろん人の主観や経験でも改善できることもあります。ですが、最も重大な欠陥、すなわち、対策すれば最も効果を及ぼすことを見極めるにはデータで判断することが最適です。
データを使うことで問題点を正しく把握することができます。
ただし、そういったデータはそうそう簡単には手に入りません。だからこそデータを持っている企業がとても強い状況になっています。
現代では、正確な情報やデータは大切な資産です。
会議では文字だらけの資料ではなく、データを示すことで議論が進みます。
判断を決定することを「コンセンサス」といいます。このため、コンセンサスと聞くと決断を下すことだと考える人がいますが、そうではありません。
コンセンサスとは「合意を形成すること」です。複数の人が絡む組織における決定においては、どのように合意を形成するかがとても重要です。
仮に、あるテーマについてA案とB案がある場合に、度重なる議論の結果、8:2の割合でA案が濃厚になったとします。
その時に、最終決定を下す人が「もうA案で決まったも同然だからA案にする」という決め方をしてはいけません。これでは合意が形成されていないからです。
どっちになるかはっきりしている場合でも、投票などで最終決定の場を設けて正式に判断を下す機会を設けます。
これが正しい判断に至るプロセスです。
判断を下すために重要な要素の一つは「議論を終了するタイミングを決めること」です。
議論を終了するタイミングとは「これ以上、分析・議論しても意思決定の質が高まらないところ」です。
そのタイミングを見極めるように期限を設定し、かつ、その期限を確実に守る必要があります。
タイミングを決めることは、小学校の校庭で遊ぶ子供たちと同じです。チャイムがならなければ子供たちはいつまでも校庭で遊び続けます。ですが、チャイムが鳴ったら遊ぶのをやめて教室へと戻ってきます。
このため、会議においては誰か一人、話し合う(校庭で遊ぶ)時間を決め、チャイムを鳴らす必要があります。
そもそも正しい判断などありません。やってみないと正しかどうか、改善が必要かどうかはやってみないとわからないのです。
議論が行き詰ったらそこが、何をするかを決めとりあえず何でもいいから行動を起こすタイミングです。
より正しいと思える判断で、適切なタイミングで期限が切られ、全員が合意に至ったとしても、その方法が実現不可能であれば、その決定は間違っています。
どんなに素晴らしく問題を解決できたとしても、それが実行に移せなければ意味がないのです。
例えば、10億円の投資をして海外市場に進出するかどうかという一世一代の判断を下そうとしているときに「タイムマシンで10年後に行って状況を見る」という解決策があったとします。見事に問題を解決することができますが、タイムマシンを開発すること自体があまりにも非現実的すぎます。
最終的に残った判断がどちらも同じぐらい正しいと思え、議論が平行線になり、多数決でも5対5になってしまったときは、皆が判断をゆだねてもいいともう人に、合意の上決断をゆだねることです。
トップがいる組織であれば、そのトップに判断をゆだねます。
そのときは必ず議論に参加している全員に対して「この問題はこれ以上議論しても進展しないから、トップに判断をゆだねます。トップの最終決定には従うように」というコンセンサスをとる必要があります。
共同創業者のようにトップが複数いる場合は、期限を切って、トップの2人(あるいは3人)で最終的な決断を下してもらいます。
あなたが議論の管理者で期限を切る立場にいる場合、議論が白熱して平行線になってしまったときは、次のように言って議論を切り上げます。
どちらも正しい。
議論が平行線になっている時点で、どちらの案にも正解の部分があるということです。
管理者として、まずはそれぞれがいい案を出してくれていることを認める必要があります。この一言を伝えるだけで、対立していた人たちの心はどちらもスッキリします。
間違ってもどちらか一方の肩を持つことをしてはいけません。一度でもそれをしてしまうと「アイツは敵だ」という認識を持たれてしまいます。
それは本当にいい判断を下すためには好ましくない状態です。
その上で「多数決で決める」や「悪いが私はこの決定に納得しかねる。理由は~だ。〇〇がどう考えるか確認してみるのはどうだろうか?」と言って上にあげるという判断を下します。
最後に、会議の頻度ですが、最適な日程は毎日開くです。
たいていみな別の業務も兼務しているため、1週間など期間が開けばあくほど、議論していた内容は頭から抜け落ちていきます。
すると、会議の冒頭は「議題は〇〇で、前回は~まで議論しました」というように、全員が流れを思い出すための時間を取らなければいけません。この時間は非常にムダです。
毎日会議を入れれば、前日の内容を忘れる人はいません。このため、昨日の続きから議論を開始することができます。
ただし、毎日会議を開くのは非現実的でもあります。
ポイントとしては、重要な会議ほど、次回開催の日程を間近に設定するように努めることです。
会議を開き何度も議論することは、決して全員が納得できる回答を見つけ出すことでもありません。
求めるべき最高の判断です。全員が納得できるような妥協案は必要ありません。
この記事の内容はGoogleの経営陣 エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル、ラリー・ペイジの共著「How Google Works ―私たちの働き方とマネジメント」の内容の一部抜粋と要約です。
一国家と同等な資金を持ち、世界中で知らない人はいないほどのGoogleという大成功企業の中で、
などなど、これからの時代に欠かすことのできない内容がギッシリ詰まった一冊です。堅苦しくなくユーモアがあり読みやすい文体ですので、ぜひ一読されることをお勧めします。