大企業などほんのわずかな失敗や損失であっても必死に避けようとする企業は少なくありません。
しかし、社員が成長するためには、挑戦して失敗することこそが最も重要な学びになります。
本当に強い人とはいつも完璧で失敗を一つもしない人ではありません。
失敗を恐れず挑戦して、失敗したらそこから学びを得て、リカバリーしどこまでも成長を続ける人です。
この世の中は何が起こるか分からないのがデフォルトです。2~4年に金融危機や大災害などの不測の事態が発生します。
新しい商品やサービスが続々と生まれ、それらを取り入れていないとあっという間に時代に取り残されてしまいます。
変化し新しいことが起こるのが当たり前の世界では、失敗と学びを繰り返せる人こそが成功できる人です。
Googleは2009年にGoogleウェーブというコミュニケーションツールを発表しました。
しかし、利用者数は伸び悩みました。担当チームのメンバーは必死に手直しを加え軌道修正を試みたものの、1年後にはサービスを終了する結果になりました。
様々なメディアからGoogleウェーブは失敗作だと酷評を受けました。
Googleウェーブが市場でユーザーに受け入れられたかという点ではメディアの言う通り大失敗でした。
しかし、このプロジェクトの失敗により敗者の烙印を押された人もいません。
それどころか、この壮大で新しいプロジェクトに本気で取り組んだメンバーたちは社内でひっぱりだことなりました。
このプロジェクトを経てメンバーは飛躍的に成長し、様々な経験を積んだのです。
実際、Googleウェーブを開発する過程で生み出された技術が後にGメールなどに応用され、企業としても十分にプラスに働きました。
Google創業者のラリー・ページも次のように述べています。
とびきり大きな発想をしていれば、完全な失敗に終わることはまずない。
失敗を許容する文化を作ることは、失敗者を祝福することではありません。
失敗は失敗、未達成は未達成です。それは変わりありません。本当に称えるべきは、失敗を乗り越えて成功に導いた人たちです。
大切なのは、失敗者は決して成功していないという事実を明らかにして、その上で、果敢に挑戦し全力を尽くしたことを称えるという姿勢です。
「失敗」=「落第」「敗者」という烙印を押さない文化を作ることが、失敗を許容する文化につながらいます。
人は果敢に挑戦する過程で、これまでなかったたくさんのスキルを獲得し、更に優秀になっていきます。
企業にとって、失敗を恐れずに果敢に挑戦する人材は宝です。
優れた判断は経験から生まれる。経験は誤った判断から生まれる。
強い組織を作るために経営者に求められていることは、リスクを最低限に抑えたり、失敗を防ぐことではありません。
失敗を許容しない文化は、将来的な衰退の確約です。
経営者が本当にやるべきことは、リスクを取り、避けられない失敗に耐えれらるだけの強靭な組織を作ることです。
失敗する可能性が見えたら投資を最小限に抑え、失敗したときのリスクを減らす準備をすることが必要です。
もちろん、失敗することが目的ではありません。より高い成長を求めて挑戦し、その過程で失敗することもあることを許容することが大切です。
経営者にとって最も難しいことは失敗のタイミングを見極めることです。
基本的には、できる限り早いタイミングで失敗を見極め、投資や人材を減らし、失敗したときのリスクを最小限に抑えることが求められます。
失敗は早く小さいほどいいものです。
また、失敗だと早く気づければ気づけるほど、その修正も容易になります。
商品発売の基本は「完璧なものに仕上げてから世に出す」ではなく、「世に出してから手直しする」ことです。
特に日本人は完璧に仕上げてから世の中に出そうとしますが、それでは遅く、また改善にもつながりません。
自分が「完璧だ」と思っているということは「もう手直しをする気がない」ということです。
そうではなく、不完全なところはあるが基本的なサービスは満たしているので、まずは市場にリリースし、それを顧客要望に沿って手直ししながら、より良いモノに仕上げるという姿勢の方が、製品はどこまでも改善されより良いものへと向かっていきます。
スティーブ・ジョブズも次のように語っています。
本物の芸術家は作品を世に出すものだ。
どんなに素晴らしいものでも、世の中に出回っておらず、ほとんどの人が価値を認めていなければ価値はありません。
世の中に出回り、多くの人が認めるから、その商品やサービスに価値が生まれます。
当然ですが「世に出してから手直しする」という姿勢は、質の低い商品を世に出してもいいという意味ではありません。
ほんの少しの些細な改善に何日も取られることでリリースが遅れるよりも、ユーザーを満足させることができる本質的なサービスがしっかりと整っているのであれば、リリースするという意味です。
ユーザーを満足させることができるかどうかわからない、という商品であれば「スモールオープニング」という手法が有効です。
大々的に広告を出したりプロモーションをしてから発売するのではなく、ごく一部の人たちに向けてひっそりと売り出し、その評価を調べるという手法です。
企業には直ぐに販売する商品やサービス以外にも、研究開発におそろしく時間がかかるかもしれないが、莫大な収益を生み出す可能性がある類の商品やサービスがあります。
そういった長期ビジョンのプロジェクトは最終的な失敗の判断を下すまでの時間軸を長くとっておく必要があります。
Amazonの創業者 ジェフ・ベゾスは次のように語っています。
時間軸を伸ばすだけで、それまで考えもしなかったようなプロジェクトに取り組めるようになる。
Amazonではアイディアを5~7年で実現したいと考えている。私たちは積極的に種をまき、育てようとする。しかもとびきり頑固に。
ビジョンは頑固に、細部については柔軟にが合言葉。
この記事の内容はGoogleの経営陣 エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル、ラリー・ペイジの共著「How Google Works ―私たちの働き方とマネジメント」の内容の一部抜粋と要約です。
一国家と同等な資金を持ち、世界中で知らない人はいないほどのGoogleという大成功企業の中で、
などなど、これからの時代に欠かすことのできない内容がギッシリ詰まった一冊です。堅苦しくなくユーモアがあり読みやすい文体ですので、ぜひ一読されることをお勧めします。