どこの企業もリーダーシップがあり、専門知識が豊富で、内に秘めたる情熱を持ち、自頭がよく、協調性があり、思いやりと礼儀正しさに溢れた優秀な人材を渇望しています。
しかし、そのような人材は引く手あまたで自社に引き入れることは非常に困難です。自社に引き入れたとしても見切りをつけていなくなってしまうこともあります。
ここでは、優秀な人材を雇い入れる方法と、優秀な人材が辞めようとした場合にどうすればいいかについてまとめています。
優秀な人材には破格の報酬を用意するべきです。なぜなら人にはそれだけの価値があるからです。
プロ野球選手やプロサッカー選手を見てみればわかりますが、国や世界のトップレベルの選手は破格の報酬を貰っています。
実際、企業が大きな業績をあげるために必要なのは人数ではありません。人海戦術で対応したところでたかが知れています。
それよりも、突飛なアイディアや、まだ世間にはない新しい価値を実現するたった一人の優秀な人の方が、何十倍、何百倍もの成果を稼ぎ出す可能性があります。
スポーツ界の一流プレーヤーと同じように、ビジネス界の一流プレーヤーにもトップレベルの報酬を支払うべきです。
ただし、最初から莫大な報酬を払う必要はありません。むしろ、会社側としては一番最初はできる限り低く抑えるべきです。
なぜなら、その人が本当に活躍して大きな業績をもたらすかどうかは誰にもわからないからです。
一番重要なことは、大きな成果を上げたときに、きちんとその努力に報いることです。
努力をして成果をあげたにも関わらず、周りと大差のない報酬では、嫌気がさして愛想をつかしてしまうのもしょうがありません。
人は実績をあげて、それが周りに正しく承認されたときにやる気を出す生き物です。
破格の報酬を与えることも必要ですが、それは同時に、本当に破格の働きをした人以外には破格の報酬を与えてはいけないという制約でもあります。
会社としてなぜその人が、それだけの報酬を貰う価値があるのかを明確にしておく必要があります。
そうでなければ、評価軸が曖昧になり、会社の利益をむさぼろうとする人ばかりが増えていきます。
従来型の企業は社長がもっとも多くの報酬を手にすることを当たり前としてきました。
それは、社長がビジネスの仕組みを考え、会社に投資し、最も身を削って努力したために、報酬に値する場合であれば何の問題もありません。
ですが、社長はただ上にいるだけで、会社の主たる利益を生み出した人が他にいるのであれば、ケタ外れの働きをしたその人にこを報酬を払うべきです。
社長や副社長、マネージャーの給与が平社員よりも上でなければいけない理由はありません。重要なのはその年や四半期の社員の貢献度です。
ただ社長という肩書きを持っているだけで多くの報酬を貰うということは、会社の士気を下げ、不平不満の元になります。
給与に関しては平等主義よりも不公平で問題ありません。重要なのはなぜ差がついているかが明確になっていることです。
オリンピックやスポーツ競技など1位と2位、2位と3位の報酬の差は歴然としています。トップレベルの成績を修めた人が、相応の報酬を貰うことは普通のことです。
そもそも平等主義とは、最も優秀な人のやる気を損ない、努力しない人を優遇することでもあります。
給与に差をつけることで、チームの士気に影響をお呼びし生産性が低下するという反論がありますが、そういったことは基本的に起こりません。
むしろ、給与の差をつけて、最高の人材に最高の給与を払うことは次のようなメリットがあります。
採用に力を入れ、手厚く迎え、大事に大事に育てた優秀な人たちが最終的にどうなるかというと、会社を辞めます。
経営者や人事、マネージメントなどは「優秀な人が会社を辞めるていくのは普通のこと」だということを理解しておく必要があります。
優秀な人は自分の確固たる信念やビジョンをもち、リスクを恐れず、挑戦することを楽しむ人たちです。全く別のフィールドに興味を持ったり、自分の力で会社をおこそうとしたり、フリーランスになろうとするのは必然です。
ただし、しょうがないものだとすぐに諦めればいいわけではありません。
優秀な人材がもうどうしても限界で辞めるという判断をするまで、あの手この手で引き留める努力がとても重要です。
優秀な社員を引き留める方法は様々ですが、次のような方法があります。
とびきり優秀な社員を引き留めるために特に有効は方法は、その社員のために社内の制度を変えてしまうことです。
なぜなら、その社員がもう1、2年在籍してくれるだけでもそれ以上の効果があるからです。
その社員を満足させるポジションや職務がない場合、その仕事自体を新たに作り出すことは非常に効果的です。
それほどまでに優秀な社員であれば、自ら望んで得たポストに対し、才能をフルに生かして全力で答えてくれます。
他の部署にやりたい仕事がある場合は、配置転換する方がより簡単です。
とびきり優秀な社員が辞めることを決断したときは、給与以外が問題になっていることがほとんどです。
例えば、家庭の事情や、ペットと一緒に暮らしたいなど、様々な理由があります。
そういう時は、その社員のために制度を曲げて、ペット可にするなど要望を飲むことも一つの手です。
優秀な社員が辞めるとなると、その人を慕う人まで一緒に辞めてしまう可能性があります。
報酬が理由で退社するケースはめったにありません。退社を考える社員は、なかなか打ち明けることができない思いを抱え込んでいる場合がほとんどです。
まずはその話にじっくりと耳を傾けることが重要です。
相手の立場に立つことが大切です。決して会社側の立場に立って「残ってくれ!」とお願いをするような側に回ってはいけません。
特に若手の場合は将来のビジョンを上手く描けていない場合がほとんどです。その時は将来のキャリアを描く手伝いをしてあげると、もう少し残って頑張ってみようという気持ちになります。
相談に乗る時は次のような声掛けが重要です。
相手が会社に残ることを考え始めてくれたら、一緒になって会社での将来キャリアを考える手助けをします。
組織の中で必ずといっていいほど生じるのが、マネージャーが優秀な社員を囲い込んで外に出すまいとする行為です。
チームの成績は出ます。しかし優秀な社員が他の部署に異動したいなどの思いを持っている場合、その囲い込みは会社全体としてはマイナスに働きます。
優秀な社員はその人が本当にやりたいことができる場所に行かせるべきです。それが会社の人々を活性化し、全体のエネルギーを増大させます。
他部署に移動したり別の仕事をやりたい社員を囲い込んだ結果、優秀な社員は「この会社にいたら自分のやいたいことはできない」と心を固め、転職することを決意してしまいます。
そうなった時の損失は計り知れません。
他の企業からオファーを受けていたり、既に転職先が決まっている場合に「〇〇しなければ、辞める」と言って脅してくる人がいます。
そういう人は既に会社への愛着を失くしており、定着させることは困難です。
とはいえ、こちらから提示する新しい条件で残ってくれる可能性がないわけではありません。愛着は時間経過とともにどんどんと薄れていくので、カウンターオファーを出すならい直ぐにでも出す必要があります。
カウンターオファーを出す時間は1時間以内が目安です。
必死の引き留めにも関わらず、優秀な社員が退社することを決意した場合は、これまで一緒に働いてくれたことに感謝し、その人の将来の成功を心から願いましょう。
仕事を辞めるからと言って、その社員との関係性まで終わりにする必要はありません。
次の会社での成功を祈って、会社のOB・OGグループに温かく迎え入れます。
この記事の内容はGoogleの経営陣 エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル、ラリー・ペイジの共著「How Google Works ―私たちの働き方とマネジメント」の内容の一部抜粋と要約です。
一国家と同等な資金を持ち、世界中で知らない人はいないほどのGoogleという大成功企業の中で、
などなど、これからの時代に欠かすことのできない内容がギッシリ詰まった一冊です。堅苦しくなくユーモアがあり読みやすい文体ですので、ぜひ一読されることをお勧めします。