ライバルが存在しない市場で勝ち収益をあげることは非常に容易です。ところがそこに新たなライバルが現れると、競争が発生し、収益が奪われ、最終的にはこちらの存在が立ち行かなくなるリスクがあります。
ライバルの存在は疎ましく、苦々しく、いなければいいのにと思ってしまうのが普通です。
ですが、ライバルを気にしているばかりいているばかりでは成功はおぼつかないものになります。
ここではライバルとの向き合い方についてまとめています。
上の役職になればなるほどライバルの存在やライバルの動向を気にする人が増加します。
ライバルの動きを理解しておくことは重要なことでもありますが、そういった人の中には「ライバルがこうしているから、我々もこうしよう」といったようにライバルに追従することばかりを考えている人がいます。
そうした結果生まれるのは似たような商品やサービスです。競争はより激化し、収益は下がり続けます。
自社の独自性がなくなった二番煎じの企業に待ち受けているのは衰退しかありません。
ライバルを追従することには競争の激化と長期的な衰退の他に、もう一つ大きなマイナス面があります。
それは「ライバル企業がやっていないんだから、うちもやらない」というライバルを基準にして物事をするかどうかを決めるようになることです。
成功している強い企業は独自のビジョンを持ち、そのビジョンに向かって成長を積み重ねている企業です。方向性や成長を決める基準はライバルではなく、自社の中にあるべきです。
大手企業が他の大手企業を見て「あそこの会社はやってないんだから、うちもやらなくていいよ」と言っているうちに、それをやり始めた後追いの第三者が急速に力を伸ばしてきます。
最初は「あんなところほっといていいよ」と無視していたのが、気づいたときにはその差は埋めることが不可能なまでに開いた状態になり、顧客の流出がとまらなくなります。
ライバルとの向き合い方で参考になるのは、Googleの創業者 ラリー・ペイジの言葉です。
同じようなことをしている他者を負かすだけでは、仕事は少しも面白くない。
ライバルに追従することは、ヨットのレースで相手の進路を塞ぐことです。進路の塞ぎ合いをしていては楽しいはずがありません。
相手を打ち負かし自分の力を誇示することにエネルギーを注ぐよりも、そのエネルギーを自分たちの独自性を最大限に成長させるために使った方が航海はより楽しく、そしてより強固な地位を築き上げることにつながります。
ライバルに追従してはいけないというのは、ライバルの存在を無視することとは違います。
ライバルの存在はしっかりと認識する必要があります。その上で自分たちの独自路線を行くことが大切です。
Googleは現在では使いやすい検索エンジンを提供することにおいて確固たる地位を築いています。ですが、2009年にマイクロソフトがIEに変わる新しい検索エンジン Bingを立ち上げることを発表したとき、Googleは大きな不安に駆られました。
そこで、全員が総力をあげて検索エンジンの最適化に取り組みました。
結果として、検索キーワードを入力している間に検索結果を表示するグーグル・インスタントや、画像を検索窓にドロップすることで画像検索をする新機能が生まれました。
ライバルの存在がチームを一致団結させ、これまでになかった新しいイノベーションを生み出すことにつながりました。
ドイツの哲学者 フリードリヒ・ニーチェは著書「ツァラトゥストラ」の中で、ライバルの存在を次のように語っています。
あなたの敵を誇りに思え、そうすれば敵の成功はあなたの成功にもなる。
強力なライバルが現れると「失敗しろ」「ミスしろ」と呪いをかけるように念じる人は少なくありません。
ですが、本当に成功している人たちはそうはしていません。
ゴルフで世界的な成功を収めたタイガー・ウッズは、優勝を争う場面で敵がバーディーパットを打つときに何を考えているのか?と聞かれて次のように答えています。
入れ!入れてくれ!と思うよ。
入るな!と思った瞬間、人間として僕の負けだと思う。僕たちはゴルフプレーヤーの前に人間だからね。
僕にはプライドがある。ここで入れてくれる相手と争ってこそチャンピンだろ?外すような相手に勝ってチャンピオンになったところでメジャーチャンピオンの価値が下がる。
だから入れ!と願うんだ。
「切磋琢磨」の精神こそが人生をより楽しいものにしてくれます。そのためにはライバルの存在は欠かせません。
この記事の内容はGoogleの経営陣 エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル、ラリー・ペイジの共著「How Google Works ―私たちの働き方とマネジメント」の内容の一部抜粋と要約です。
一国家と同等な資金を持ち、世界中で知らない人はいないほどのGoogleという大成功企業の中で、
などなど、これからの時代に欠かすことのできない内容がギッシリ詰まった一冊です。堅苦しくなくユーモアがあり読みやすい文体ですので、ぜひ一読されることをお勧めします。