部下に指示を出したときに、終わった結果を見てみると、伝えた内容が全然反映されていない、、ということがあります。
そういう場合は「あの時伝えたよね」「言ったよね」という非難と詰めが始まります。そして「あいつは何度言ってもわからない」という評価を下します。
ですが、人は1度や2度伝えただけでは記憶に残らないのが人というものです。ではいったい何回言えばいいのでしょうか?
相手が一時的な「わかった」ではなく、きちんと言ったことが伝わり始めるまでには15~20回ほど伝えるのが必要になります。
多すぎると思うかもしれませんが、伝えたいことを伝えるにはそのぐらい言い続けることが必要ということです。
最初の1、2回はとりあえずの「わかりました」です。そこから、数回繰り返すうちに「あれ、なんか聞こえたかな」という状態になります。
そして、こちらが何度も何度も繰り返して言って、もういい加減うんざりし始めたと思い出した頃に、ようやく周囲に伝わり始めます。
だからこそ、上司やチームを引っ張るリーダーは常にコミュニケーション過剰である必要があります。
何かを伝えるときに「何度も言わせるな」と言う人は、情報を伝えるのは1度きりでなければいけないといった固定観念があります。
ですが、情報を伝える回数に制限はありません。これは守ってねという重要な情報であればあるほど、何度も何度も繰り返し伝える必要があります。
教会でお祈りを捧げる人たちは、同じフレーズを何度も何度も繰り返します。1度や2度ではなく、生涯にわたって繰り返し続ける人もいます。
重要なことはそのぐらい何度も何度も繰り返すべきです。
何度繰り返してもご利益が減ることはありません。むしろ、何度も繰り返すことでご利益が増します。
それどころか、お祈りを一度しかしない人にはご利益はないものです。
会社にとって一番ともいうべき重要なことは「ビジョン」「価値観」「行動指針」といった、その企業が何のために存在し、何を求め、どう行動していくのかといった内容です。
これらを一度伝えただけで覚えられる人はいません。
これこそ、教会のお祈りと同じで、何度も何度も繰り返すごとにご利益が増していくものです。
ただし、ただ繰り返して言えばいいというものでもありません。
私たちは誰しも一度聞いただけで強く印象が残り、一生忘れない言葉や出来事にも出会います。あるいは、同じことを言うにしても、ある人がいうと全然頭に入ってこなくて、別の人が言うとスッと頭に入ってくることもあります。
つまり、情報はどう伝えるかで相手への伝わり方が変わります。
もし、20回繰り返しても周りに伝わらないのであれば、それは伝え方が間違っている証拠です。
言いたいことを伝えるには、伝え方が次の7個の条件を満たしている必要があります。
長い文章や情報の羅列をだらだらと同じ抑揚で伝えられるのは、伝えられた側からすれば地獄です。
もしあなたが、だらだらと長い情報を伝えられる立場だとしたら「手短に要点だけを教えてくれ」と言うでしょう。
それと同じで、部下に情報を伝えるときにも、手短に要点だけを伝える必要があります。
この情報がなぜ重要なのか、この情報のどこが特に重要なのかをハイライトして伝えるということです。
人は誰しも興味のある内容は意識せずとも頭に入ってきますが、興味のない内容は頭に入ってこないものです。
話を伝えるときも、その話が相手の興味を掻き立てるような構成になっているかを考える必要があります。
本題が相手が興味のない内容であれば、その前に相手が興味を引く内容を話し、聞く耳をもたせるといった努力が必要です。
会議であれば、最初にアイスブレイクをして話に引き込むのはお勧めの方法です。出張に行った人がいればその人に出張先で見て感じたこと、印象深かったことを話してもらいます。
参加者がクスっと笑ったり、質問したり、話に乗ってくれば、話を聞く準備が整ったということです。
相手が興味を払うものだという考えでは永遠に話は伝わりません。興味とは工夫して勝ち取るものです。
話を伝えるときに、話を伝えるあなた自身の話し方が興味なさそうだったり、ただ淡々と情報を伝えるだけでは、相手が話に入り込めないのは仕方ありません。
あるいは威圧的になったり、「黙って聞いとけよ」という態度では、相手は聞く耳を持つどころか閉じてしまいます。
また話を伝えるためには、どちらか一方が喋り続けるのではなく、双方向の対話になることが重要です。
このため、話に入り込みやすいように楽しさや刺激を演出するなど、雰囲気をコントロールすることも大切です。
人が何かを記憶するとき、ただの情報は印象に残らないものです。ですが、その情報に感情が含まれると印象深くなります。
例えば「〇〇やっといて」と言うよりも「もしあなたがこれを達成できたら私はとても嬉しいんだ。〇〇をやっておいてくれないか」と言った方が、伝えた内容を実行してくれる確率が大幅に上がります。
これは基本中の基本ですが、そもそもあなたが情報を伝えている相手は、本当にその情報を伝えるべき相手でしょうか?
情報は伝えるべき相手に届けてこそ価値をなすものです。情報は伝える相手が多くなればなるほど、それを受け取る個々人からしたら相対的に情報の価値が低くなります。
とりあえず全員に伝えた内容と、「これはここにいる人だけに伝えるけど」と前置きして話した内容では、後者の方が記憶に残ります。
メールで伝える場合も同じです。受け取る側はメールの宛先がtoになっていればほぼ開きます。ですが、ccになっていて、しかもそのccの中に何十人もの人々が含まれていたら「自分にとっては価値が低い」「誰かが見て対応するだろう」と考え、そのメールを開こうともしないものです。
とりあえずメーリングリストで送信するのではなく、情報を伝える相手を選別し、可能であればtoで、あるいはccでもその人数はごくわずかにすると情報の伝わりやすさが変わります。
インターネットやスマホが普及した現代では、情報を伝える方法は様々です。
あなたが「伝えたのに」と言っていることは、どうやって伝えたのでしょうか?メールのccで送り付けただけではないでしょうか?
メールはそれを開くか開かないかは受け取った人に委ねられています。
それよりも、チャットワークやSlack、LINEなどのコミュニケーションツールで直接送った方が情報が確実に伝わります。
情報によっては、表情や実際のモノが見えるテレビ電話を使った方が効果が高くなります。可能であれば、対象物を持って直接会いに行くのがベストでしょう。
このように、その情報を伝えるにはどのコミュニケーションツールが最適かを選び抜くことも重要です。
人は信頼関係がある人や好意を寄せている人の話には耳を貸すものです。一方、よく知らない人や嫌いな人の話には耳を貸さないものです。
話を聞いてそれを理解してもらうためには、普段から相手との間に信頼関係を築けていることが重要とです。
普段の会話の中でウソをついて欺こうとしたり、相手をバカにしたりしていれば信頼関係は築けません。
正直さを示し、心の距離を近くするには、上の立場にいる人が自らの弱みを公開するのも効果的な手段の一つです。
例えば、部下を評価するタイミングで、部下を評価するのと同様に自分自身を振り返ります。そして、今期達成したことと達成できなかったことや反省をまとめて、部下と共有するなどです。
「もっと早くチームの活性化に取り組んでおくべきだった」「もう少し気短になり、議論を強制的に終わらせるべきだった」などです。
これを受け取った部下は、上の立場の人も同じように悩んでいるんだと言う感情を抱き、親近感をもつことにつながります。
普段から会話をするときは正直で謙虚で、相手を思いやるように接していれば、信頼感は積みあがっていきます。
この記事の内容はGoogleの経営陣 エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル、ラリー・ペイジの共著「How Google Works ―私たちの働き方とマネジメント」の内容の一部抜粋と要約です。
一国家と同等な資金を持ち、世界中で知らない人はいないほどのGoogleという大成功企業の中で、
などなど、これからの時代に欠かすことのできない内容がギッシリ詰まった一冊です。堅苦しくなくユーモアがあり読みやすい文体ですので、ぜひ一読されることをお勧めします。