日本は海外諸国と違って「~してはダメ」や「いりません」といった否定を使うことが多い国です。
多くの人がそういった否定を無意識のうちに使っています。相手の言った否定が本質的なのかどうかを見破らないことには、自社の商品やサービスを売ることはできません。
ここでは4つのイエスとノーの組み合わせや、日本人がなぜ否定する傾向があるのか、そして営業職として大切にすべき心得を解説しています。
何か質問をされた時に答える主な回答には「イエス」と「ノー」があります。
アメリカの場合はそのまま「イエス」と「ノー」しか存在しません。単純明快でとてもわかりやすいです。ところが日本は他にも2種類ありませす。
それは「イエスだけどノー」と「ノーだけどイエス」です。
なぜこのように複雑化しているかと言うと、嫌なものを嫌だと言わず、やりたいことをやりたいと言わないことが美徳とされ、親や学校、国がそのように躾てきたためです。
4つの組み合わせ | 本心 | 表面 |
---|---|---|
イエスだからイエス | イエス | イエス |
イエスだけどノー | イエス | ノー |
ノーだけどイエス | ノー | イエス |
ノーだからノー | ノー | ノー |
「イエスだけどノー」はよく職場で目にする光景です。
上司に「これから飲みに行くぞ」と言われたとき部下は本心では「またかよ。めんどくさい。早く家に帰りたい」と考えています。
心の中の答えは完全に「ノー」です。ですが上司には「イエス」と回答します。
「ノーだけどイエス」はお客様の家や、取引先の企業でよく目にする光景です。
「何か飲み物はいりますか?」と言われたとき、喉が渇いたし飲みたいと考えていたとします。
本心は完全に「イエス」です。ですがお客様や取引先には「ノー」と答えます。
あるいは複数人のグループでミーティングに伺ったときに「何が飲みたいですか?」と聞かれ、「コーヒーが飲みたい」と思っていたとしても、他の人たちがみな「お茶」と回答していたら自分も「お茶」と答えます。
「イエスだけどノー」と「ノーだけどイエス」は何をしているかと言えば、自分の心を否定しているということです。
日本人は自分自身がやりたいことを否定するように躾けられてきたため、それが当然だと思っている人は少なくありません。
結果として、自分の気持ちだけでなく、相手をも否定しやすい傾向があります。
「イエスだけどノー」と「ノーだけどイエス」の文化が悪いと頭ごなしに否定しているわけではありません。
これが日本の文化なので、相手の言葉には注意しなければいけないということです。
例えば、営業などでお客さんを訪問したときや、何かを提案したとき相手は最初に否定してきます。
それは「とりあえずノー」というように躾けられているからです。このことを理解していないと「否定された」となってしまい、お客さんのところに行くたびに自信を失ってしまいます。
このため、相手が「ノー」と言ってきたときは「ノーだからノー」なのか「イエスだけどノー」なのかを見極めなければいけません。
そのためには、もう少し話をきくなど時間が必要です。一言目で「ノー」と言われても、その会話だけでは何一つわかりません。
営業職のとってお客さんと話したときに、相手が本当は「イエス」なのに、習慣として「ノー」と言っている場合、それを見抜けないことは、その営業マンの職務怠慢です。
もっと言うと「イエスなのにノー」と言わせてしまった時点で努力不足です。
お客さんに飲み物を勧めるときに「何か飲みますか?」と聞くのは失格です。相手に気を使わせてしまいます。
「何か飲みますか?」という「ノー」という回答を誘う聞き方をしてはいけません。
そうではなく「リンゴジュースとコーヒー、紅茶がありますが、どれがいいですか?」といったようになんらかのイエスを前提に聞くことが、相手に気を使わせないための配慮です。
更にもう一つ上手をいくのであれば「紅茶を入れすぎてしまったのですが、よかったら紅茶はいかがですか?」と聞けば、自然に「イエス」を導くことができます。
なぜ自然にイエスを導くことが重要なのかは、私たちの心理に働く強力な原理の一つに「一貫性の原理」で説明がつきます。
「一貫性の原理」とは、人は無意識のうちに自分が言ったことを守るように行動するということです。
この原理を上手に使ったテクニックが「小さなイエスを積み重ねる」方法です。
訪問販売をしている人はまず家の中に入って説明してもいいか?というイエスを得ようとします。そして、資料を広げこれに沿って説明しますというイエスをとります。
説明をした後に、もう少し細かく見させていただければと思うので実際に上がらせてくれないか?というイエスを引き出します。
お客さんにいきなり「商品を買ってください」と言ってもほぼ門前払いになります。
ですが、小さなイエスを積み重ねていけば「じゃあ、ちょっと試してみようかしら」という気持ちになり、契約にとても近づきます。
だからこそ、営業職にとって、相手に気を使わせず自然とイエスを引き出す気づかいがとても重要になります。