人の上に立つ上司(マネージメント)の中には、恐怖や威圧感で人を支配しようとしている人がいます。
ブラック企業の摘発や、ネットの普及により社員へのパワハラが明るみにでたことで、昔に比べればそういった人たちは減っています。
ただし、根底はそういった支配する考え方で行動している人たちも少なくありません。
ところが、2500年前に書かれた孫氏の兵法や、第2次世界大戦でその名を轟かせた山本五十六など、昔から本当に素晴らしい上司というのは、決して恐怖や威圧感で人を支配していません。
むしろ、部下をわが子のように愛することで、忠誠心や帰属意識を高め、より自発的に動ける優秀な人たちを集め、量産することによってその成功を成し遂げています。
恐怖や威圧感で人を操ろうとしてきた人たちは一時は成果を上げるものの、結局は敵に負けたり、クーデター(革命)により短命で尽き果てる人生を歩んでいます。項羽、織田信長などがいい例です。
このため、歴史的に見ても忠誠心をもち自信をもった優秀な部下を育て上げることこそが優れたリーダーの役割といえます。
部下に自信を与えるには適切に仕事を割り振る必要があります。
やったこともない仕事を「やっといて」と丸投げしたり、間違えたときに「そうじゃないだろ!」「ものわかりが悪いな」と言う事は、部下に自信を与えるどころか、部下を潰す行為です。
あなたも部下を潰している無能な上司が思い当たるのではないでしょうか?
部下を潰さず、成功体験を積ませるためには「どれだけの仕事をどのように任せるか」がカギとなります。
「どうやって手を付けたらいいのかわからない」という仕事を与えるのではなく、「あと少し頑張ればクリアできそう」という仕事を与えることが重要です。
部下に成功体験を積んでもらうための仕事の与え方は「仕事を区切って渡す」ことです。
例えばプレゼンの資料作りであれば、いきなり「〇〇の説明資料作っておいて」とお願いすると、たいていの人は頭が真っ白になり思考がストップしてしまいます。
そうではなく「今回は概要のところを作ってみて」というように、仕事を区切って渡すことで「あと少しでクリアできそう」という課題に変化します。
「20分後に見せて」と伝え、作ってもらったモノを一緒に確認して「なるほどね。こうかくと読み手はこう感じるんじゃないかな。どうすればいいと思う?」というように部下の意見を引き出すようにして完成に仕上げます。
そして出来上がったら「おお、いい概要になったね」と言って次の「じゃあ、〇〇の商品説明を作ってみて」と言って次の区切った仕事を渡します。
最初に「〇〇の説明資料を作っておいて」と仕事を振ったときに積める成功体験は1個のみで、しかも時間がかかり難易度が高いですが、仕事を区切れば詰める成功体験の数が増え、しかも短時間で積み上げていくことができます。
部下により効率よく成功体験を積んでもらうためには、上司がどう接するかも重要なポイントです。
いきなり「この〇〇の仕事やっておいて」と渡してしまうと、ちょっとわからないところがあったときに、思考停止してそのまま時だけが過ぎていく事態に陥ることが頻繁に発生します。
そうではなく、最初はいきなり一人にせず「決定的な違いがあればサポートするよ。それまでは見守るから、一人でやってみて」と伝えて、部下が不安やプレッシャーなく安心して取り組める環境を用意します。
「見守る」と言ったときに、じっと横や後ろで監視するように見ていなければいけないと勘違いしている人がいますが、それは部下へのプレッシャーにしかなりません。
仮に自分が、上司や社長に仕事をぶりをジッと見ていることを想像してみてください。誰しもが「やりずらい。嫌だな」と思うはずです。
なので「見守る」といっても、何か他の仕事をしながらチラ見する程度で十分です。これは部下がプレッシャーなく業務を進められるだけでなく、自分自身も時間を節約して他のことができる大きなメリットになります。
決定的な間違いを見つけたときは、いきなり「それは違う」「そうじゃないでしょ」と言ってはいけません。
この言葉で部下が感じるのは「すみません」という申し訳ない気持ちと萎縮です。
そうではなく「それであってるんだっけ~?」と言って考える猶予を与えます。
部下に成功体験を積んでもらうには、自分の中で答えを見つけて完成することが非常に重要になります。
自分の力で作り上げたものと、誰かにやってもらって作ったものでは、最終的な達成感が大きく異なるためです。
「それであってるんだっけ~」と言って質問をして、「あ、ここはこうでした」というように思い出すことができたら「そうだね。やるじゃん」と言って褒めます。
それだけで成功体験を1つ積み上げることができます。
そして、最終的に完成したら「一人でできたね」と言って承認します。
このようにして、小さな成功体験をいくつもいくつも積み重ねることが部下の自信へとつながっていきます。
部下に成功体験を積ませるというのは決して楽ではありません。
「どれぐらいの量の仕事をどうやって与えるか」を毎回考え、部下本人が答えを導き出せるようにして、できたら承認するを繰り返す必要があります。
このため、より安易で早くて簡単な恐怖や威圧に頼ってしまう人が多くなります。
ですが、部下にとっての「ほんのちょっとの背伸び」と成功体験の連続が、将来の想像もできないような大きな仕事を成し遂げる力へとつながっていきます。
このため、本当に組織のことを考え貢献できる優秀なリーダーは部下が成功体験を積むことを優先できる人です。
花のタネに水をやり少しずつ伸ばして、いつか見事に咲く日を楽しみに待ちましょう。
この記事の内容は篠原 信さんの「自分の頭で考えて動く部下の育て方」の内容の一部抜粋と要約です。
なぜ指示待ち人間が生まれてしまうのか、どうすると人が自ら動いてくれるのかがたくさんの実例を踏まえてとてもわかりやすく説明されています。
マネージメントなど人を指導する立場にある人は一読しておくべき指南書です。