寄付や人に何かをあげることを嫌う人は少なくありません。
欲しいものや行きたい場所のために一生懸命働いて稼いだお金を、なぜ人にあげなければいけないのか?とうい心理が働くこともわかります。
ですが、人にモノをあげることは絶大な効果を生み出します。ここでは人に何かを上げる人が成功する理由を人間心理の面から解説しています。
人には「何かをしてもらうと、お返しをしなければいけない」という心理が働きます。これを返報性の法則と呼びます。
これは遥か昔の地球で私たち人間が生き残るために組み込まれた自動プログラムです。
スーパーや冷蔵庫が存在していなかった時代、食料を見つけなければ動物は生き残ることができない状態でした。
このため、生き残る確率を上げるために、自分が仕留めたものを周りに分けると、周りが仕留めたときに分けてもらえるというお返しをする本能が備えられました。
この本能は人間だけでなく、他の動物にも備わっています。
返報性の法則はささいなモノをあげることでも働きます。
ある新興宗教団体は「返報性の法則」を利用して、空港で「小さな花」をプレゼントしました。
足早に通り過ぎていく人に「受け取ってください。これは私たちからのプレゼントです」といって差し出します。
ほとんどの人が失礼な態度を取りたくないためそれを受け取ります。結果、何かお返しをしなければという気持ちに駆られ寄付をします。
ポイントは誰も「寄付してください」と言っていないにも関わらず、自ら寄付をしたということです。
宗教団体が寄付をもらうためにやったことは、普段の生活で絶対に買わないような要らない花を「プレゼントです」と言って渡しただけです。
ある自然保護団体は募金を募るために、会員に封筒を送りました。
その封筒の中には数枚の絵葉書が入っていて「絵葉書はあなたへのプレゼントです。寄付するしないに関わらず受け取ってください」という手紙が添えられていました。
「寄付はしなくてもいい」と言いつつ、返報性の法則を利用して「寄付しなければいけない」という感情を抱かせる巧みな手法です。
「~しなければ」という強迫観念を抱かせるので、優しい恐喝ともいえます。
一流の営業マンは、お客さんに出産や受験などのイベントがあるときに「小さなお守り」を送ります。
「契約してくれ」とも自社の製品のことも一切口にはしません。ただ「頑張ってください」という手紙を添えるだけです。
お守りを受けとった人は「いつか何かおかえししなきゃ」と感じます。そしてお返しとしてその人から商品を購入します。
奢る人が成功するのは、人に返報性の法則という本能が備わっているためです。
もちろん、要らないモノを押し付けるのではありません。関係性の薄い人に何でもかんでもあげるただのお人好しでもありません。
部下やお客さん、パートナーなど自分と利害が直結している人に対して、上手に小さなプレゼントをする人は必ず成功します。
プレゼントをするときにたくさんの思いが詰まったものをあげるのは避けるべきです。相手に「重苦しい」という不快感を与える可能性があるからです。
同様に高級すぎるものも逆効果になる場合があります。
返報性の法則に「思いの強さ」や「高級さ」はあまり関係ありません。それよりも小さな花やお守りなど、普段自分では買わないような取るに足らないものが予想以上の効果を発揮します。
あなたが要らないと思っているモノでも「これ要らないからあげる」といって渡してはいけません。
「要らないものを貰った」返報性の法則は「要らないものを返す」です。
あなたがゴミで捨てようと思ったモノでも「受け取ってください。私からのプレゼントです」と言って渡せば、相手は「プレゼントをお返ししなきゃ」と思うようになります。
返報性の法則を利用するにはタイミングが重要です。
ビジネスの世界では契約更新日や契約期日が近くなると、相手を飲み会に誘ったりイベントに誘ったりします。
それは、貸をつくって、その借りを商品購入として返してもらうためです。
相手が「何か返さなきゃ」と思ったときに「そうだ商品を買えばいいんだ」と思えるタイミングであることが大切です。
あるメーカーの一流営業マンは、相手の会社の発注時期のちょうど1か月前に、発注の決定権を持っている人をサッカーのチャンピオンズリーグに招待します。
すると招待を受けた会社は「借りを返したい」と思い、その会社に商品の発注をします。
返報性の法則は私たちの本能に組み込まれているのでとても強力です。よほど薄情で冷徹な人でない限り、お返しをしたいという本能が働きます。
賢い人は「何かもらったら、返さなければいけない心理が働く」ということを知っています。このため、奢られそうになっても断ります。
ある賢い女性は次のように語っています。
バーに行っても決して奢ってもらわないわ。
御馳走されたら、その男性と寝なければいけないと無意識に思うからよ。
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