企業の採算制度には様々な方法があります。中でも多くの企業で取り入れられている方法の一つに独立採算制があります。
営業、サービス、工場といった機能ごとに組織を分割し、それぞれで目標を立てて収支計算をする方法です。
独立採算制には「責任の区分がわかりやすい」「収支計算が簡単」といったメリットがありますが、それとは別に大きなデメリットがります。
独立採算制を取り入れるデメリットは「各部署が自分たちの決算をよくすることに力を入れる」ことです。
部署の採算が良くなれば会社の経営状況もよくなると考えがちですが、それは一時的なものである場合がほとんどです。
というのも、本来企業を継続的に成長させていくには既存の商品に改善を加えより良くしたり、顧客と向き合ってよりいい製品を開発することが必要です。
ですが、商品の改善や開発は常に上手くいくとは限りません。いつでも大きなリスクがあります。
そうした場合、今年度の採算をいい状態に保つためには、顧客のために仕事をするよりも、安全策をとって何もしない場合の方が有利に働くことがあります。
そして、独立採算制ではそういった保守的な選択がとられる傾向があります。
計算のしやすさや責任の所在のわかりやすさに重点を置くのであれば独立採算制はもってこいの方法です。
実際、独立採算制で成果をあげている企業も少なくありません。
ですが、「外部の顧客やパートナーの利益を優先すること」を企業文化としたい場合は、顧客やパートナーを向いて仕事をしている人たちが評価される仕組みを導入するべきです。
人は無意識のうちに制度に合わせて報酬を得るように動きます。企業の採算方法は末端の従業員には関係ないわけではなく、その行動を強く変える力を持つことを理解する必要があります。
顧客よりも事業を優先している例では、テレビのリモコンがあります。
リモコンの中にはNETFLIXといったオンデマンドのボタンがかなりデカデカと搭載されているものがあります。
一方ミュート(消音)はとても小さくちょこんとついています。
これは、ユーザーの使いやすさを追求したわけではなく、オンデマンドを契約したり閲覧する人が増えれば企業が儲かるために、仕込まれたものです。
ユーザーの使いやすさに向き合うのではなく、組織の収益をいかに上げるかにばかり目を向けてしまうと、最終的には本末転倒の結果が待ち受けています。
この記事の内容はGoogleの経営陣 エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル、ラリー・ペイジの共著「How Google Works ―私たちの働き方とマネジメント」の内容の一部抜粋と要約です。
一国家と同等な資金を持ち、世界中で知らない人はいないほどのGoogleという大成功企業の中で、
などなど、これからの時代に欠かすことのできない内容がギッシリ詰まった一冊です。堅苦しくなくユーモアがあり読みやすい文体ですので、ぜひ一読されることをお勧めします。