企業が存続していくためには、現在よりも先の未来に投資をしていくことが重要です。5年後、10年後あるいはそのもっと先を考えて投資をしているかどうかは、他企業との大きな差別化になります。
また社内の環境を良くして社員同士が協力しあうためには、お互いを認め合う心やチームワークが重要です。
しかし、忘れてはいけないことがあります。それは長期投資やチームワークを最優先することが目的ではないということです。
長期投資やチームワークは、企業のビジョンやミッションなどの存在目的を達成するための、一つの手段でしかありません。
長期投資やチームワークのために企業が存在しているわけではないのです。
企業は様々な目標を持っています。4半期目標、個人目標、数年単位で達成すべき目標などです。
そういった中でときには、目の前に掲げられた達成すべき目標に到達できないことがあります。
そうしたときに、短期目標を達成するために全力を注ぐべきか、それとも無駄な投資は避けて、未来への投資に回すべきかという議論がなされることがあります。
論理的に考えると、無駄な投資は避けて将来への投資を行う方が効果的なように感じます。
しかし、この選択は重要な点を見落としています。
それは、社内に、目標は達成できなくてもいいという価値観を持ち込んでしまうということです。
短期目標よりも、長期投資が優先される雰囲気が社内にできてしまうと、当然ながら社員や社長、マネージメントの心には「短期目標は達成できなくてもしょうがない」という気持ちが生まれてしまいます。
この文化や考え方は長期的に見て、組織にとって大きなマイナスになります。
目の前にある直近の目標をないがしろにすることは、長期的な目線に立ってみたときに組織にとって大きなマイナスになります。
このため、目標の達成が難しいとわかったときでも、「掲げられた目標に向かって最後まで努力する規律を社内に醸成する」ことこそが最優先すべき課題です。
これは、野球やサッカーなどのチームスポーツで、大量得点を決められて「もう勝てない」というのが明らかになったときに、それでも諦めずに最後まで全力を尽くして試合に挑むか、途中であきらめて試合を投げ出してしまう気持ちを許可するかの違いです。
ここには、目に見えない大きな違いがあります。
すぐに諦めるチームがその先も勝利を手にすることはありません。ですが、目標に向かって「いつか必ず達成してやる」という強い心を持った人たちが集まったチームは、長期的に見て必ず勝利を手にする日が来ます。
組織においてチームワークがいいことは非常に重要です。社員同士や上司、部下、社長とその他社員などが対立しあっている組織は、内部でエネルギーの分散や対立が起こり、大きな成果を生み出すことはできません。社内の雰囲気も悪くなります。
このため、多くの組織がチームワークを重視しています。
しかし組織によってはその目的をはき違えて、チームワークを大切にすることが企業にとって一番重要と考えている人たちもいます。
会議で自分たちの本音をぶつけ合って最高の解決策を見つけるのではなく、相手に配慮しすぎて自分の意見を言わない、それを美徳とするような間違った考えをしている人たちもみかけます。
チームワークはあくまでチームとしての目的を達成するためにあり、なれ合いをするためにあるのではありません。
例えば、野球やサッカーなどチームの目的は勝つことです。勝率を少しでもあげ、それを長期的に持続させるためにチームワークが必要なのです。
それが、メンバー同士が仲良くなったり、じゃれ合うことを優先してしまっては目的が達成できなくなって当然です。
長期目標と同じく、チームワークよりも、短期の目標を達成するために全力を尽くすことを最優先の規律とすべきです。
チームワークは短期目標を達成するために存在します。
この記事の内容はGoogleのCEOと会長を務めたエリック・シュミットやプロダクト責任者を務めたジョナサン・ローゼンバーグらが書いた「1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え」の内容の一部要約と自分なりの解釈を加えたものです。
ビル・キャンベルはAppleのスティーブ・ジョブズやGoogleやTwitterの経営幹部のコーチングを務め、世の中に偉大なリーダーを何人も送り出してきた人物です。
ビル・キャンベルが貫いてきた生き方やそこにまつわるストーリーには、最高のチームを作るためにリーダーやコーチが知っておくべき考え方や行動が宝の山のように詰まっています。
その考え方はビジネスやチームを成功に導くだけでなく、人として幸せに生きるためのより本質的な知恵でもあります。
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