リーダーには2種類のタイプがいます。それは優秀なリーダーと人が集まる愛されるリーダーです。
それぞれの種類によって集まってくる人たちは変わってきます。
優秀なリーダーの元に集まる人は、その人の能力や結果にあやかろうとする人たちです。
自分よりもそのリーダーが凄いことを認め、この人の傍にいればくいっぱぐれることはない、あるいは、甘い汁が吸えると考えた人たちが寄ってきます。
一方、その人が独断のトップになるので、その人以上に有能な人は基本的に集まってきません。
部隊の編制もトップは必ずそのリーダーなので、どれだけ優秀であっても上層部にいけるかどうかはそのトップのえり好みによってしまいます。
リーダーは畏怖の対象で絶対的な存在です。
人が集まる愛されるリーダーの元に集まる人は様々ですが、ユニークで才能溢れる人が集まる傾向があります。
自分が優秀なわけではなく、優秀な人にいいポジションをドンドンと与えるので、もっと優秀な人たちが次から次へ集まってきます。
リーダーをニックネームで親しみを込めて呼ばれ、弱みをさらけ出すこともしばしばあります。その度に、周りが「俺たちがいないとだめだな」と言ってサポートをします。
リーダーは人間的な弱みを見せ、愛らしい存在です。
春秋戦国時代を経て秦の始皇帝が中国を統一したものの、秦王朝は滅亡し、その後の覇権争いとして項羽と劉邦の二人が戦いを繰り広げました。
項羽は身長が高く筋骨隆々とし、頭の回転も速く、体格と頭脳に恵まれた超カリスマエリートタイプのリーダーでした。
一方、劉邦は酒と女好きで、大口を叩きとひょうきんな人柄から色々な人から慕われる存在でした。
つまり、優秀なリーダーは項羽、人が集まる愛されるリーダーが劉邦ということです。
4年間(紀元前206~202年)の戦いの末、勝利し覇権を勝ち取ったのは劉邦でした。
劉邦のもとには優秀な部下が集まり、それぞれが能力を発揮していきました。また、侵攻した地域に対して劉邦は寛大な対応をしたのに対し、項羽は反抗した者たちを皆殺しにしていったことも大きな違いでした。
劉邦は項羽との戦いで何度も負けていますが、その度にちりじりになった仲間が集まり何度も復活を果たし、最終的には劉邦が勝ち残り、項羽軍は全滅となりました。
第二次世界大戦時に日本の海軍を引っ張った優秀な長官の一人に山本五十六がいます。
敵国アメリカから「山本長官は、日本で最優秀の司令官である。どの海軍提督より頭一つ抜きん出ており、山本より優れた司令官が登場する恐れは無い」と言われ、その山本を倒すことができれば日本軍の士気は大きく下がるとまで目された人物です。
山本五十六は部下から篤い信頼を獲得していました。次の言葉でも非常に有名です。
やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば人は動かじ
戦時中の日本のイメージは鬼のような長官が、問答無用で命令を下すものですが、決してそうではなく、人がどうすれば動くかを冷静に観察して、至極丁寧に人を動かしています。
更にこの言葉には続きがあります。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。
自分よりも身分が下だからや、自分よりも能力が劣るといった考え方は一切なく「見守り」「育て」「信じ」「感謝する」というのが基本姿勢です。
こういった言葉は決して美辞麗句ではなく、山本五十六は実践していました。
館内で山本五十六に敬礼をすると、相手がどんな人であれ、ほぼ同時にとても美しい敬礼を返すことで有名でした。
また、新米の兵士に対して、一度も言葉を交わしたことが無いにもかかわらず「任官おめでとう」という声をかけるなど配慮の行き届いた人物でした。
戦死した部下の家族には自筆で手紙を書き、自ら墓参りに行っていました。
戦闘機が行方不明になったときは、食事が通らず涙をこぼし、搭乗員が漁船に救助されて戻ってきたときは涙を流して喜びました。
戦死した部下の名前を手帳に書き留めて、それを肌身離さず持ち歩いていました。
身分の違いに一切捕らわれず、これほどまでに親身に部下のことを思っていたことが、山本五十六の明言を生み、そして、敵から彼より優れた長官が登場することはないとまで言わしめる存在になっていた理由です。
現代でも劉邦や山本五十六タイプの成功者がいます。
日本の第100代総理大臣 岸田 文雄さんも人が集まる愛されるリーダータイプです。
東京大学を受験するも2度も失敗し、3度目の受験で早稲田に行ったり学業歴的にもトップエリートとは言えません。
実績や実力という面でも総裁選挙を戦った河野 太郎さんよりも劣ります。
ですが、それでも、多くの人からの票を勝ち取り総理大臣になりました。
「弱くても勝てる」がスローガンです。
飛ぶ鳥を落とす勢いの売買アプリ メルカリの創業者兼CEOの山田進太郎氏も、あるインタビューで「自分がやる必要はない。自分よりも優秀な人たちが集まってきてやってくれる」と語っていました。
周りからは自分よりも優秀な面がある人を遠慮なく誘う人柄だと評価されています。
もし事業を長期的に成長させたいのであれば、目指すべきは「人が集まる愛されるリーダー」です。
強がったりウソをつくことなく自分の弱みを見せ、優秀な人をどんどん重要なポジションに採用する。
人に配慮し人を愛する。
それこそが、現代社会に限らず、何千年も昔から変わらない人間社会で成功し幸せを勝ち取るための最善の策といえるでしょう。
この記事の内容は篠原 信さんの「自分の頭で考えて動く部下の育て方」の内容の一部抜粋と要約です。
なぜ指示待ち人間が生まれてしまうのか、どうすると人が自ら動いてくれるのかがたくさんの実例を踏まえてとてもわかりやすく説明されています。
マネージメントなど人を指導する立場にある人は一読しておくべき指南書です。