ビー・スクラピーとは、ビジネスの商品開発や商品戦略などで主に使われる用語で、品質の高い試作品を作るよりも、簡単に手に入る寄せ集めで、まずはとにかく作って試すという意味です。
スクラピー(scrappy)とは、スクラップ(scrap)の形容詞です、スクラップは残りクズ、紙きれといった意味です。
日本の企業の多くは高品質を求めすぎるあまり、試作品にも完璧な質を求めようとします。紙切れでできたような試作品は取るに足らないとされ、限りなく本物に近いほど称賛・評価されます。
しかし、この方法では試作品を作るだけで時間とお金を費やしてしまい、物事がなかなか前に進みません。一度作った後に変更を加えることも大変です。
また、出来上がったときには既に市場の状況が変化していたり、ライバル企業が先行しているといった状況が発生します。
試作品の状態から品質や精度を求めすぎることは非常にナンセンスです。
そうではなく、まずはサクッと簡単に手に入るもので作って、それが将来モノになるのか、あるいはどうすればモノになるのかを考える方が、よほど効果的に物事が進展していきます。
特に現在はインターネットの登場もあり、世界中で新たな商品やサービスが開発され、どんどんと世の中に送り出されています。
このような時代の中で生き残っていくためにはビー・スクラピーは必須の考え方です。
そのためには、組織の上の立場にいる人ほど価値観の転換をする必要があります。
これは、安価で手抜きに見える試作品を作ってきた人を、「サボり」「手抜き」と批判して評価を下げるのではなく、「短時間」「早い」「安い」「イメージがつかめる」というプラスの評価に切り替えるということです。
同時に試作品の段階から良いものを作ろうとしたり、完璧主義にこだわり、時間やお金を費やした人には、「遅すぎる」「コスパが悪すぎる」という評価を下すということです。
もちろん、試作品を作ってから批判するのでは、相手の気持ちを踏みにじりモチベーションを下げるので、試作品を作る前に、自分たちの組織が何を優先していて、どう評価しているかを明確に伝えておく必要があります。
ビー・スクラピーはとにかくまず作ってみて試すという考え方です。だからといって試して終わりにしていたら意味がありません。
試して、すぐに振り返ることもセットで行う必要があります。
月1回、遅くとも3か月に1回ぐらいは、その試みが本当に効果があるのか?改善が必要なのか?他にもっといい方法がないか?廃止した方がいいか?を検討する必要があります。
ここはなあなあにしてはいけないところです。半日、必要ならば1日かけて主要なメンバーが集まり本気で話し合うことが必要でしょう。
ここで決まったことが、その会社の未来を決定します。
1か月後や3か月後など振り返る期限を決めておくことは必須です。だからといって振り返りをそこまで待たなければいけないというわけではありません。
1日目や1週間目の時点で気づいたことがあれば、その時点で即座に行動を起こして新たな判断をしていくべきです。
何事も一瞬一瞬を大切にタイムリーにが基本です。
いかにタイムリーでいられるか、そしてタイムリーを許容し評価する組織風土があるかで、1年後、5年後、10年後に組織が進化してるのか衰退しているのかが決まります。
この記事の内容はモルガン・スタンレーやGoogleで人材育成や組織開発を率い、自身も起業家であるピョートル・フェリクス・グジバチさんの著書『世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法』の一部要約に個人的な見解を加えたものです。
本書は現代の組織に求めれているものは何か?それを得るためにはどうすればいいかが具体的かつ論理的に記されています。
使われている用語は専門用語ではなく、誰にでもわかりやすいものになっていて、例も豊富に乗っている非常に実践的な良書です。
会社を率いている人や部署を率いている人、あるいはマネージャーを目指している人の必読書といえます。
この記事に興味を持たれた方は実際に本書を手に取ってみることをお勧めします。