新たに営業として入社してきた人には、少しでも早く一人前になってもらい一人でお客さんの前に行って商談を成立させられるようになってほしいものです。
とはいえ、営業に同行させて横でやりとりを見せているだけではなかなかできるようにはならないものです。
同行している上司の側は新人がいるので「私の雄姿を見よ」とばかりに張り切りますが、当の本人はただ見ているだけで一言も喋らないので眠くなってしまうというのがほとんどです。
「居眠りはダメだろ!」と後で怒る人もいますが、それはしょうがないものです。どんなに大きな大人でも、セミナーなどで聞いているだけの人は眠気をこらえるのに必死な人は少なくないものです。
同席していた上司も、自分が一言も喋らない全体ミーティングや他の人の発表は眠気をこらえたり「早く終わらないかな」と思っているぐらいです。
では、どうすれば新人に効率よく営業方法を教えることができるのでしょうか?ここではその方法を紹介しています。
まず最初に営業方法を教えるときにやってはいけないことをまとめておきます。
営業の場に同席させるというのは最初のうちは効果があります。ですが、それでも10回もやれば十分です。最初の1,2回は新鮮なので真剣に聞きますが、だんだんと飽きてきます。
同じことを何度も何度も見せられても、気づきが深まるというよりは、飽きてくるのが人間です。
次にやってはいけないのが「いきなり任せる」ことです。
「もう5回ぐらい同席したから、そろそろできるよね、明日は〇〇さんからやってみて。何かあったらサポートするから」といって、いきいなりバトンタッチしようとする人がいます。
いきなり渡された人はしどろもどろするだけです。そもそもただ見てるだけで覚えられるわけがありません。
そんなことで覚えらるのであれば、学校の授業を受けている人たちは皆天才になっています。ですが、人は決してそうはなりません。
いきなり任された結果「全然喋れなかった」という挫折が胸に深く刻まれるだけです。
頑張って喋ったとしても、それが良かったのか悪かったのか本人にはわかりません。
この方法は部下を成長させるというよりは、上司が自分の凄さを見せつけるためのものです。部下の成長にとっては逆効果となります。
営業トークを任せる基本はまずはロープレからです。いきなりお客さんで実験するのは、お客さんにも失礼ですし、新人にもいい効果をもたらしません。
ロープレもいきなり全部やらせようとするのでは無理があります。慣れている人はペラペラとずっと喋ることができますが、その中身は、アイスブレイク、前段、中段、核心、クロージングなど様々な要素が組み合わさっています。
このため、まずは一部分だけ切り出したロープレをします。
「じゃあ、これまで見てきたのを参考に15分間で商品説明をやってみて」
15分間は黙って聞きます。そして、次のように伝えます。
「はい、終了。そしたら、次のお客さんのところで見本を見せるから、何が足りなかったかよく観察してみて」
やったことは15分間喋ってもらっただけです。フィードバックもしていません。ですが、これだけで十分な効果を発揮します。
新人は「上手く喋れなかった」「何が足りなかったんだろう」と思っているので、次のアポではその部分をいつも以上に一生懸命に聞き取ろうとします。
新人はより自発的にやる気になって、上司は時間も節約できる最高の方法です。
アポが終わったら、喫茶店などで再度ロープレを行います。
「じゃあ、さっきの続きでもう一度15分間で商品説明をしてみて」
1回目よりも上手にできるようになります。
ただし、これはあくまで上司をマネただけなので応用できる状態ではありません。
上司のコピーで一通り喋れるようになったら、次は応用力を鍛えます。方法は「質問する」ことです。
上司が、「これまでの商品とはどこが違うのかな?」「価格は?」「もう少し安くならないの?」「他社製品と何が違うの?」といった質問をぶつけます。
ここでも答えは教えません。
「次の訪問を終えるまでに、どう話すとわかりやすいか考えておいてね」と伝えて、あくまで答えは新人自らが見つけ出すようにします。
部分ロープレで応用も含めてある程度できるようになったら、次は部分実践に入ります。
「じゃあ、商品説明のところは今回は任せるからやってみて。いざとなったらサポートするから」
「いざとなったらサポートする」と伝えておけば、話すときの不安を少し和らげることができます。
喋ってもらった後は、その出来が良かったか悪かったかによらずまずは「お客さんの前で喋った」ということを認めます。
よくできていたら「初めての割にはよくできていたね」と褒めてもいいですが、とても褒めるほどでないできであれば「初めてお客さんの前で喋ったね」という事実を認めるだけで十分です。
人のモチベーションは「行動」と「認知」で上がることがわかっています。このため、やった行動を認めてあげれば新人のモチベーションが上がり「学びたい」「もっとできるようになりたい」という気持ちへとつながります。
この記事の内容は篠原 信さんの「自分の頭で考えて動く部下の育て方」の内容の一部抜粋と要約です。
なぜ指示待ち人間が生まれてしまうのか、どうすると人が自ら動いてくれるのかがたくさんの実例を踏まえてとてもわかりやすく説明されています。
マネージメントなど人を指導する立場にある人は一読しておくべき指南書です。