Web制作やWebアプリケーション開発で使われる技術(HTML、CSS、JavaScript、TypeScript)を使って、WindowsやMacで動作するデスクトップアプリを作成できるフレームワークが大きな注目を集めています。
その代表格であり、長年にわたって業界標準として君臨してきたのが Electron(エレクトロン) です。
一方で、近年のWeb開発シーンにおいて「圧倒的な軽さ」「高速な動作」「高い安全性」を武器に急速に支持を広げているのが Tauri(タウリ) です。
本記事では、初心者の方でも基礎から理解できるように、専門用語の丁寧な解説を交えながら、ElectronとTauriの仕組みの違い、パフォーマンス比較、開発のしやすさ、セキュリティ、そして最新動向を踏まえた明確な選び方まで、詳しく解説します。
はじめに:Web技術でデスクトップアプリを作る時代
従来、Windows向けのデスクトップアプリを作るにはC#やC++、Mac向けにはSwiftやObjective-Cといった、それぞれのOSに特化したプログラミング言語と開発環境が必要でした。
そのため、複数のOSに対応したアプリ(クロスプラットフォームアプリ)を開発するには、OSごとに別々のプログラムを書き直す必要があり、莫大な開発コストと時間がかかっていました。
この問題を劇的に解決したのが、「Web技術(HTML / CSS / JavaScript)でデスクトップアプリを作る」 というアプローチです。
Webブラウザ上で動くWebアプリを作る感覚で、パソコンの画面上にウィンドウを表示し、ローカルファイルの操作や通知機能などを備えた本格的なアプリを開発できるようになりました。
1つのプログラムを書けば、WindowsでもMacでもLinuxでも同じように動くため、個人開発者から大企業まで幅広く採用されています。
そして現在、このWeb技術を活用したデスクトップアプリ開発の選択肢として中心に存在するのが、実績豊富な Electron と、次世代フレームワークの Tauri です。
ElectronとTauriの基本概要
まずは、それぞれのフレームワークがどのような歴史や特徴を持っているのか整理しましょう。
Electron(エレクトロン)とは?
Electronは、2013年にGitHub(現在はMicrosoft傘下)によって開発されたオープンソースのフレームワークです。元々はテキストエディタ「Atom」を作るために作られましたが、その後急速に普及しました。
- 開発言語: JavaScript / TypeScript、Node.js
- 開発元: GitHub / OpenJS Foundation
- リリース年: 2013年(2015年にElectronへ改称)
- 主な採用実績:
- VS Code(高度なコードエディタ)
- Slack(ビジネスチャットツール)
- Discord(音声・テキストチャットツール)
- Notion(ドキュメント・ナレッジ管理ツール)
- Spotify(音楽ストリーミングツール)
世界中で日常的に使われている主要なデスクトップアプリの多くが、実はElectronを使って作られています。長年の運用実績があり、情報量や周辺ツールが最も充実している「業界標準」のフレームワークです。
Tauri(タウリ)とは?
Tauriは、Electronが抱える「ファイルサイズが大きい」「動作が重い」といった課題を克服するために、2019年頃からオープンソースコミュニティで開発がスタートした新世代のフレームワークです。
- 開発言語: Web部分(JavaScript / TypeScriptなど)、バックエンド(Rust)
- 開発元: Tauri Foundation
- リリース年: 2022年(1.0リリース)、2024年(2.0リリース)
- 主な採用実績:
- 1Password(パスワード管理ツールのLinux版や一部コンポーネント)
- GitButler(新しいGitクライアント)
- Logseq(ローカルファーストのナレッジ管理ツール)
Tauriは「圧倒的な軽量さ」「高速な動作」「高度なセキュリティ」をスローガンに掲げており、特に常駐型のツールや、動作の軽さを重視するユーザーから熱狂的な支持を集めています。
2024年に登場した Tauri v2 では、デスクトップだけでなく iOS や Android といったモバイルアプリのビルドにも正式対応し、さらなる進化を遂げています。
アーキテクチャ(動作の仕組み)の根本的な違い
ElectronとTauriの性能や特徴の違いは、両者の「動作の仕組み(アーキテクチャ)」に由来しています。ここを理解すると、なぜTauriが軽くてElectronが重いのかという理由が明確になります。
Electronの仕組み:Chromium + Node.js の重厚な同梱型
Electronは、アプリの中に以下の2つの巨大なソフトウェアを丸ごとバンドル(同梱)して起動します。
- Chromium(クロミウム)
Google ChromeのベースとなっているオープンソースのWebブラウザエンジンです。HTMLやCSSを描画し、Web画面を表示する役割(レンダラープロセス)を担います。 - Node.js(ノードジェイエス)
パソコンローカルのファイルを作成・削除したり、ネットワーク通信を行ったりするJavaScript実行環境です。アプリ全体の管理やOSとの連携機能(メインプロセス)を担います。
+-------------------------------------------------------+
| Electron アプリ |
| |
| +---------------------+ +----------------------+ |
| | メインプロセス | | レンダラープロセス | |
| | (Node.js ランタイム)| | (Chromium エンジン) | |
| +---------------------+ +----------------------+ |
+-------------------------------------------------------+
| OS (Windows / macOS / Linux) |
+-------------------------------------------------------+
つまり、Electronアプリを1つ起動するということは、「そのアプリ専用の独立したWebブラウザ(Chrome)とNode.jsサーバーをPC上で1つ新しく立ち上げる」 のと同じことを意味しています。
メリット
OSにインストールされている環境に一切依存しません。Windows 10でもWindows 11でも、Macのどんなバージョンでも、アプリの中に内蔵された同じChromiumを使って画面を描画するため、「OSによる見た目や挙動のズレがほとんど起きない」 という絶大な安定性を誇ります。
デメリット
ブラウザエンジンと実行環境を丸ごと持ち運ぶため、アプリの容量が非常に大きくなり、起動するたびに大量のパソコンのメモリ(RAM)を消費します。
Tauriの仕組み:OS標準のWebView + Rust の軽量ハイブリッド型
Tauriは、「自分自身でブラウザエンジンを持たず、パソコンのOSに元々入っているブラウザ機能を使えばいいのではないか?」という発想で作られています。
- OS標準のWebView(ウェブビュー)
OSに標準搭載されているブラウザ描画機能を利用して画面(レンダラープロセス)を表示します。- Windows: Microsoft Edgeの基盤である WebView2
- macOS / iOS: Safariの基盤である WebKit
- Linux: WebKitGTK
- Rust(ラスト)
アプリの管理やOSとの直接的なやり取り(メインプロセス)には、安全で極めて高速なプログラミング言語である Rust を使用します。
+-------------------------------------------------------+
| Tauri アプリ |
| |
| +---------------------+ +----------------------+ |
| | メインプロセス | | レンダラープロセス | |
| | (Rust コア) | | (OSネイティブWebView)| |
| +---------------------+ +----------------------+ |
+-------------------------------------------------------+
| OS WebView (WebView2 / WebKit / WebKitGTK) |
+-------------------------------------------------------+
Tauriアプリの中身は、自分で書いた画面のコード(HTML/CSS/JS)と、Rustで書かれた小さなプログラムだけです。Chromiumのような巨大なエンジンを内包していません。
メリット
アプリの容量が劇的に小さくなり、メモリ使用量も極めて少なく抑えられます。パソコンへの負担が軽いため、サクサク軽快に動作します。
デメリット
WindowsとMacで使われる裏側のブラウザエンジン(WebView2とWebKit)が異なるため、CSSの表示や一部のWeb機能の挙動において、わずかなプラットフォーム間の不整合(デザインのズレなど)が発生する可能性があります。
性能・リソース消費(パフォーマンス)の徹底比較
アプリを実際に動かしたときの「重さ」や「速度」について、具体的な数値や傾向を交えて比較します。
アプリのファイルサイズ(インストーラーの容量)
アプリをダウンロードする際のファイルサイズは、ユーザー体験に直結します。
- Electron: 約80MB〜150MB以上
空の画面を表示するだけの「Hello World」アプリを作るだけでも、ChromiumとNode.jsが含まれるため最低80MB前後のサイズになります。機能を追加していくと簡単に100MB〜200MBを超えます。 - Tauri: 約3MB〜15MB
Chromiumを同梱しないため、非常にコンパクトです。同じ機能を持つアプリを作った場合、Electronの数十文字の1(約10分の1以下)の容量で収まります。
ネットワーク回線が細い環境でも一瞬でダウンロードが完了するため、ユーザーへの配布面でTauriが圧倒的に有利です。
メモリ(RAM)の使用量
パソコンの動作が重くなる最大の原因は、アプリによるメモリの過剰消費です。
- Electron: 150MB〜300MB以上(アイドル時)
アプリを起動して何も操作していない状態であっても、Chromiumが動作しているため150MB〜200MB程度のメモリを常時占有します。複数ウィンドウを開いたり、大規模なアプリになると500MB〜1GB以上に達することも珍しくありません。 - Tauri: 30MB〜60MB程度(アイドル時)
OS標準のWebViewと軽量なRustで動くため、メモリ消費量は非常に少なく抑えられます。
タスクバーやメニューバーに常時表示させておく「常駐型アプリ」や、低スペックなPC環境でも快適に動かしたいアプリを作る場合、Tauriの省メモリ性能は極めて大きなアドバンテージとなります。
起動スピード(レスポンス)
アプリのアイコンをクリックしてから、画面が表示されるまでの時間です。
- Electron: 普通〜やや重い(2.5秒〜4.0秒程度)
起動時にChromiumエンジンとNode.js環境をゼロから初期化して立ち上げる必要があるため、どうしても数秒の待ち時間が発生します。 - Tauri: 高速(1.0秒前後)
OSがすでに読み込んでいるブラウザ機能を呼び出すため、初期化のオーバーヘッドが少なく、クリックした瞬間にサッと画面が立ち上がります。
動作時のパフォーマンス・バッテリー消費
- Electron
画面描画やJavaScriptの処理は高速ですが、バックグラウンドでの全体的なCPU・メモリ消費量が多いため、ノートパソコンで使用しているとバッテリーの消耗が早くなる傾向があります。
- Tauri
バックエンド処理がRustで記述されているため、ファイル入出力や複雑なデータ処理、暗号化などの計算処理が圧倒的に高速です。また、リソース消費が少ないため、ノートPCのバッテリーにも優しい設計になっています。
開発体験(DX)と学習コストの比較
どれだけ性能が優れていても、開発が難しすぎたり情報が少なかったりしては実用になりません。開発者目線での比較を行います。
プログラミング言語と必要スキル
Electronの必要スキル:Web技術(JS / TS)のみ
Electron最大の強みは、「Webエンジニアのスキルセットがそのまま100%活かせること」 です。
画面を作成するHTML/CSSやReact/Vue/Next.jsだけでなく、ファイル操作などのバックエンド処理もすべてJavaScript(またはTypeScript)で記述します。Node.jsでWebサーバーを作ったことがある開発者であれば、新しい言語を一切学ぶことなく即座にデスクトップアプリ開発を始められます。
Tauriの必要スキル:Web技術(JS / TS)+ Rustの基礎知識
Tauriの画面作りはElectronと同様に、ReactやVue、Svelte、Next.jsなどの任意のフロントエンド技術を使用できます。
しかし、アプリのローカル設定を保存したり、独自のファイル処理を実行したりといった「バックエンド処理」を書く際には、Rust というプログラミング言語を使用する必要があります。
- Rustとは?: C/C++並みに高速でありながら、プログラムのバグ(メモリエラー)を自動的に防止する強力な安全性を持った言語です。非常に人気が高い一方で、言語仕様(所有権システムやライフタイムなど)の学習難易度が高いことで知られています。
Tauriでは、よく使われる機能(ファイル保存、通知、ダイアログ表示など)はJavaScript用のAPIとして公式プラグインが用意されているため、単純なアプリであればRustをほとんど書かずに開発することも可能です。しかし、少し込み入ったOS連携やカスタマイズを行おうとすると、どうしてもRustの知識が求められます。
エコシステム(外部ライブラリ)の活用度
Electron:npmの巨大なエコシステムをフル活用
JavaScriptのライブラリ管理ツールである npm に存在する数百万もの外部パッケージを、制限なくそのまま組み込んで利用できます。Web開発で使い慣れたライブラリを何でも利用できるため、開発スピードを大幅に向上させることができます。
Tauri:Rustの「crates.io」とフロントエンド用パッケージを併用
フロントエンド側ではnpmのライブラリが使えますが、Node.jsに依存した一部のライブラリ(Node.js独自の組み込みモジュールを使うものなど)はTauri上でそのまま動かない場合があります。バックエンドの拡張には、Rustのパッケージ管理サイトである crates.io からライブラリを探して組み込む必要があります。
情報量とコミュニティの充実度
- Electron: 非常に豊富(業界最高水準)
10年以上の歴史があるため、エラーの解決方法、逆引きチュートリアル、技術ブログ、書籍などの情報がインターネット上に無数に存在します。開発中に困ったことがあっても、検索すればほぼ解決策が見つかります。 - Tauri: 急速に増加中だが、Electronには及ばない
公式ドキュメントは非常に丁寧に書かれており、Discordコミュニティも活発ですが、日本語での情報や「特定のマイナーな処理を行いたいときの情報」はElectronに比べるとまだ少ないのが現状です。
OSごとの画面表示の一貫性
- Electron
アプリに同じChromiumを内包しているため、Windowsでデザインした画面が、MacやLinuxでもほぼ100%寸分違わず再現されます。複数OS向けのテスト負担が少ないのが特徴です。 - Tauri
OSごとに異なるWebView(WindowsはEdge系、MacはSafari系)を使うため、CSSの細かい余白の付き方や、最新のCSS機能のサポート状況、フォントのレンダリング結果などに微細な違いが生じることがあります。そのため、各OSでの実機テストが不可欠となります。
セキュリティモデルの比較
デスクトップアプリは、ブラウザの中で動くWebサイトとは異なり、ユーザーのパソコン内のファイルやシステム全体にアクセスできる強い権限を持っています。そのため、セキュリティ対策が極めて重要になります。
Electronのセキュリティ
歴史的に、Electronはセキュリティ上の配慮が難しいとされてきました。
初期のElectronでは、画面を描画するJavaScriptから直接パソコンのファイルシステムを操作できる設定(nodeIntegration: true)が標準になっていました。これにより、もしアプリ内で表示しているWeb画面に悪意のあるコード(XSS攻撃など)が紛れ込むと、ユーザーのPC上で不正なコマンドを実行されてしまうリスク(任意コード実行の脆弱性)が存在しました。
現在の最新バージョンのElectronでは、安全対策が大幅に強化されており、画面側と内部処理側を明確に分離する機能(contextIsolation: true)がデフォルトで有効になっています。しかし、開発者が正しく設定を理解して構築しないと、依然として脆弱性を生み出しやすい側面が残っています。
Tauriのセキュリティ:設計段階からの「Default-Secure」
Tauriは、設計の初期段階から「Default-Secure(デフォルトで安全)」という理念を掲げて作られています。
- 最小権限の法則(Capabilitiesシステム)
Tauriでは、アプリを作成した段階では、画面側のJavaScriptからパソコンの機能(ファイル読み込み、通知など)を一切呼び出すことができません。設定ファイル(capabilities)で、「このフォルダのファイル読み込みだけを許可する」「通知機能の利用を許可する」といった権限を明示的にホワイトリスト形式で指定しなければ動作しない仕組みになっています。 - Node.jsが存在しない安全性
フロントエンドにNode.js環境が存在しないため、万が一悪意のあるnpmパッケージが混入した場合でも、ローカルシステム全体が乗っ取られるような被害を防ぎやすくなっています。 - Rustによるメモリ安全性
バックエンド処理を担うRust言語自体が、ビルド(コンパイル)時にプログラムの不具合やメモリエラーを徹底的に排除するため、プログラムの隙を突いた攻撃に対して非常に強い耐性を持っています。
2026年最新動向:モバイル展開(iOS/Android)の可能性
2026年現在のデスクトップアプリ開発を語る上で外せないのが、「デスクトップアプリとスマホアプリのマルチプラットフォーム化」 です。
かつては「デスクトップアプリはElectron」「スマホアプリはReact NativeやFlutter」といったように完全に開発ツールが分かれていました。
しかし、Tauri v2 の登場により、この状況が一変しました。
Tauri v2では、1つのコードベース(同一のプロジェクト)から、Windows、macOS、Linux向けのデスクトップアプリだけでなく、iOSやAndroid向けのモバイルアプリも出力(ビルド)できるようになりました。
+---> Windows (.exe)
|
+---> macOS (.app / .dmg)
|
Tauri v2 プロジェクト +---> Linux (.AppImage)
|
+---> iOS (.ipa)
|
+---> Android (.apk)
画面をReactやVueで作り、ロジックをTauriで記述しておけば、パソコン向けアプリと全く同じUI・機能をそのままスマホアプリとして配信することが可能です。
一方の Electron は、現在もデスクトップOS(Windows, macOS, Linux)専用 のフレームワークであり、iOSやAndroid向けのアプリを出力する仕組みを持っていません。
将来的に「まずはPC向けにサービスを作り、いずれスマホアプリ版も提供したい」と考えているプロダクトにとって、Tauriのマルチプラットフォーム対応力は強力な選定理由となります。
【項目別】Electron vs Tauri 徹底比較表
ここまでの解説内容を、一覧で比較できるように表にまとめました。
| 比較項目 | Electron(エレクトロン) | Tauri(タウリ) | 評価・備考 |
| 誕生年 / 歴史 | 2013年(約13年の実績) | 2019年(2022年正式版) | Electronは成熟、Tauriは先進的 |
| 画面描画エンジン | Chromium(アプリ内に同梱) | OS標準WebView(WebView2/WebKit) | Tauriは同梱しないため軽量 |
| バックエンド言語 | Node.js (JavaScript / TypeScript) | Rust | ElectronはJS完結、TauriはRust利用 |
| インストーラーサイズ | 大(80MB 〜 150MB+) | 極小(3MB 〜 15MB) | Tauriの圧勝 |
| メモリ(RAM)消費 | 多(150MB 〜 300MB+) | 少(30MB 〜 60MB) | Tauriの圧勝 |
| 起動速度 | 普通(2〜4秒) | 高速(1秒前後) | Tauriの勝利 |
| 開発の容易さ・学習 | 容易(Web技術のみで可) | やや難しい(Rustの学習が必要) | Electronの勝利 |
| 外部ライブラリ (npm) | 制限なくフル活用可能 | 一部制限あり(Web側のみ) | Electronの勝利 |
| OS間の画面の一貫性 | 完全一致(Chromium固定) | 微妙な差異が出る場合あり | Electronの勝利 |
| セキュリティ設計 | 開発者による適切な設定が必要 | デフォルトで最小権限・高堅牢 | Tauriの勝利 |
| モバイル対応 (iOS/Android) | 非対応(デスクトップ専用) | 対応(Tauri v2で正式サポート) | Tauriの勝利 |
| 情報量・事例の多さ | 圧倒的に多い(VS Code等) | 増加中(ドキュメント充実) | Electronの勝利 |
TauriとElectronの開発の始め方・基本フロー
実際にそれぞれのツールを使って開発を始める際の大まかな手順を解説します。
Electronアプリ開発の基本フロー
Electronは Node.js がインストールされている環境であれば、数行のコマンドですぐに始められます。
1. プロジェクトの初期化
ターミナル(コマンドプロンプト)で以下のコマンドを実行します。
Bash
# プロジェクトフォルダを作成して移動
mkdir my-electron-app
cd my-electron-app
# Node.jsプロジェクトの初期化
npm init -y
# Electronのインストール
npm install electron --save-dev
2. メイン処理(main.js)の作成
アプリのウィンドウを作成するスクリプトを記述します。
JavaScript
// main.js
const { app, BrowserWindow } = require('electron');
function createWindow () {
// ウィンドウを生成
const win = new BrowserWindow({
width: 800,
height: 600,
webPreferences: {
nodeIntegration: false,
contextIsolation: true
}
});
// HTMLファイルを読み込む
win.loadFile('index.html');
}
app.whenReady().then(createWindow);
3. 画面(index.html)の作成
普通のHTMLファイルを作成します。
HTML
<!-- index.html -->
<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
<meta charset="UTF-8">
<title>My Electron App</title>
</head>
<body>
<h1>Hello Electron!</h1>
</body>
</html>
4. 実行
package.json に "start": "electron ." を追記し、npm start で起動します。
Tauriアプリ開発の基本フロー
Tauriを開発するには、Node.jsに加えて Rustのビルド環境(rustc / cargo) をパソコンにインストールしておく必要があります。
1. Rust環境の準備
Rustの公式サイト(rustup.rs)からインストーラーをダウンロードしてセットアップします。
2. Tauriプロジェクトの作成(公式セットアップツール)
Tauriは create-tauri-app という便利なCLIツールを提供しており、質問に答えるだけで画面のフレームワーク(React, Vue, Svelte, Next.js等)と組み合わせた初期環境を自動構築できます。
Bash
# プロジェクト作成コマンドの実行
npm create tauri-app@latest
コマンドを実行すると、以下のような対話型質問が表示されます。
- Project name: プロジェクト名を入力(例:
my-tauri-app) - Identifier: アプリの識別子(例:
com.example.mytauriapp) - Choose which language:
TypeScript / JavaScriptを選択 - Choose your package manager:
npm/pnpm/yarnを選択 - Choose your UI template:
React/Vue/Svelte/Vanillaなどお好みのフレームワークを選択
3. 開発サーバーの起動
生成されたフォルダに移動し、以下のコマンドを実行すると、自動的にWeb画面とRustのバックエンドがコンパイルされ、アプリウィンドウが立ち上がります。
Bash
cd my-tauri-app
npm install
npm run tauri dev
Tauriのプロジェクトフォルダには、Web画面用のコードが入るディレクトリ(src)と、Rustのバックエンドコードが入るディレクトリ(src-tauri)が整然と分離されて生成されます。
よくある質問(FAQ)
Q1. Rustの知識が全くなくてもTauriでアプリを作れますか?
A. はい、簡単なアプリであればRustを書かずに作ることも可能です。
Tauriには、画面(JavaScript)からファイルの読み書きやダイアログの表示、通知の送信などを行える公式のJS用プラグインが多数提供されています。これらを利用する範囲内であれば、Rustコードを1行も書かずにWebの技術だけで開発を完結させられます。ただし、複雑な処理やOSの深い機能を使いたい場合は、Rustの基礎知識が必要になります。
Q2. TauriでOSごとにデザインが変わってしまう問題はどう防げばいいですか?
A. CSSのリセット(Normalize.cssなど)を導入し、標準的なWeb標準仕様の範囲でスタイルを記述するのが基本です。
Windows(Edge系)とMac(Safari系)で表示を揃えるため、特定のブラウザ固有の独自機能(CSSプロパティ)を避け、Tailwind CSSやMUI、Chakra UIなどの実績あるCSSフレームワークを活用することで、プラットフォーム間の見た目の差を最小限に抑えることができます。
Q3. 既存のElectronアプリをTauriに移植するのは大変ですか?
A. 画面(UI)部分はそのまま再利用できますが、内部処理(メインプロセス)の書き換えが必要です。
ReactやVueで作った画面のコンポーネントや見た目のロジックは、ほぼ100%そのままTauriに移植できます。しかし、Node.jsの fs モジュールや child_process などを使って書かれていたバックエンド側の処理は、TauriのJS APIまたはRustコードへ書き換える作業が必要になります。
Q4. 初心者が今から学ぶなら、どちらの将来性が高いですか?
A. 将来性の勢いと技術的な先進性ではTauriですが、確実な学習のしやすさではElectronです。
デスクトップアプリ開発のトレンドとしては、明らかにTauriへシフトしつつあります。しかし、「プログラミング自体の初心者」であれば、まずは解説記事やエラーの解決策がネット上に溢れているElectronで1つアプリを作り切る体験をする方が、途中で挫折しにくいでしょう。すでにWeb開発の経験がある方なら、迷わずTauriに挑戦することをおすすめします。
まとめ
本記事では、デスクトップアプリ開発の2大選択肢である Electron と Tauri について、仕組み、性能、開発体験、セキュリティなど多角的な視点から徹底解説しました。
最後に、両者の特徴を今一度シンプルに整理します。
- Electron(エレクトロン):
- 強み: 10年以上の歴史に裏打ちされた圧倒的な実績と情報量。Web技術(JS/TS)だけで完結し、どのOSでも完璧に同じ画面・動作を提供できる。
- 弱み: ファイルサイズが大きく(100MB〜)、メモリ消費量が多い(動作が重くなりやすい)。
- Tauri(タウリ):
- 強み: 画面描画にOS標準の機能を使うため、ファイルサイズが数MBと極小で、メモリ消費も少なく動作が非常に高速。高いセキュリティとモバイル展開(iOS/Android)の可能性を秘める。
- 弱み: バックエンド処理にRustの知識が必要になる場面があり、OSごとの画面表示の不整合に注意が必要。
「速度と軽さと安全性を追求するなら Tauri」、「開発のしやすさと確実な安定性を求めるなら Electron」という明確な棲み分けができています。
ご自身の持っているスキル、作成したいアプリの特性、そして将来的な拡張性を考慮して、最適なフレームワークを選択してください。


