「自宅にサーバーを立ててみたい」「外出先から家のNASにアクセスしたい」—そう考えたとき、必ず壁になるのが「IPアドレスが変わる問題」です。
インターネットの住所であるIPアドレスは、多くの場合、ルーターの再起動などでコロコロ変わってしまうため、安定したアクセスができません。
そこで登場するのがDDNS(Dynamic DNS)です。
本記事では、このDDNSの仕組みを簡単に解説しています。さらに、無料で使える代表的なDDNSサービス一覧も紹介しています。
DDNSとは何か?
DDNSは、「変動するIPアドレス」と「固定のホスト名(ドメイン名)」を自動で結びつけるサービスです。
ダイナミックDNS(Dynamic DNS)と言います。
一般的なDNSとIPアドレス
DDNSを理解するには、その基本となる「DNS」と「IPアドレス」の理解が欠かせません。
IPアドレスとは、インターネット上のコンピューターの「住所」にあたる数値の羅列です(例: 203.0.113.45)。コンピューターはこのIPアドレスを使って通信相手を特定します。
ただし、IPアドレスは人が見てもとても覚えにくいです。そこで、基本的にはIPアドレスの代わりに、example.comのようなドメイン名(ホスト名)を使います。
この、機械向けの「IPアドレス」と人間向けの「ドメイン名」を紐づける仕組みがDNSです(例: example.comにアクセスすると、裏側で203.0.113.45に接続してくれる)。
なぜDDNSが必要か?
一般的なインターネットは接続の度にIPアドレスが変わる
フレッツ光や楽天ひかりなど、一般的な家庭で使われているインターネット接続は、接続のたびにグローバルIPアドレスが変わることがあります(これを動的IPアドレスと呼びます)。
例えば、6時間前に確認したときは「74.34.291.355」だったのが、今確認したら「123.12.319.62」に変わっていたということが起こります。
通常、IPアドレスが変わってしまうと、外部からそのIPアドレスを使って自宅のサーバーにアクセスしようとしても、古いIPアドレスでは繋がらないという問題が起こります。
DDNSは固定のホスト名(ドメイン名)を指定する
DDNSを使うことで、動的なIPアドレスの変更を自動的に検知し、固定のホスト名と、新しいIPアドレスを自動で紐づけることができます。
これにより、外部からアクセスするときもそのホスト名を指定すれば、いつでもアクセスすることができるようになります。
DDNSはどんな時に使う?
自宅サーバーを公開する場合
Webサーバー、ファイルサーバー、ゲームサーバーなどを、固定IPアドレスを契約せずとも外部に公開できます。
もしDDNSを使わないと、自宅でWebサーバー(例: Apache、Nginx)を立ち上げても、プロバイダーから割り当てられるグローバルIPアドレスは再起動などで変動した場合に、IPアドレスが変わって繋がらなくなってしまいます。
リモートアクセスする場合
外出先から自宅のPCやNAS(ネットワーク接続ストレージ)、監視カメラなどにアクセスできます。
VPN接続する場合
拠点間VPNを構築する際、動的IPアドレスでもドメイン名で相手ルーターを指定できるようになります。
DDNSの仕組み
DDNS用のホスト名として、例えば「myhome.ddns-service.net」というホスト名を取得して登録したとします。
あるタイミングで、グローバルIPアドレスが203.0.113.45から198.51.100.10に変わりました。
このとき、DDNSクライアントが、IPアドレスが変更されたことをDDNSサービスプロバイダーに自動で通知します。
DDNSサービスプロバイダーは、「myhome.ddns-service.net」が指すIPアドレスを198.51.100.10に自動で更新します。
外出先から「myhome.ddns-service.net」にアクセスすると、常に新しいIPアドレスに誘導され、自宅のサーバーに繋げることができます。
DDNSを提供する主なサービス(無料で使える?)
DDNSを提供しているサービスはたくさんあります。
その中でも、大きく有料と無料に分けることができます。
有料サービス
有料の場合は、月500円でDDNSが利用できるサービスが提供されています。
バッファローのルーターを使っている場合、BuffaloダイナミックDNSというサービスを簡単に導入することができます。年間3960円(=月330円)なので、手軽く導入したい人にはお勧めです。
無料で使えるDDNS
無料で使えるDDNSサービスもあります。
ただし、サービスにより条件が異なるので注意が必要です。
| サービス | 無料利用条件 | 無料枠ホスト数 |
|---|---|---|
| MyDNS.JP | メール登録等 | 複数 |
| ieServer.Net | メール登録等 | 複数 |
| DuckDNS | SNS認証 | 無制限 |
| No-IP | 30日ごと更新 | 3 |
| DDNS Now | パスワード要件 | 複数 |
| Value Domain | ドメイン利用者向け | 制限なし |
| FreeDNS | メール登録 | 複数 |
DDNS Now (kuku.lu)
DDNS Nowは、2013年から運用している永久無料のダイナミックDNSサービスです。サービス保障稼働率100%のDNSサーバを利用しているため、高い信頼性があります。
IPアドレスの更新に対する頻度や回数の制限はありません。アカウントに期限はなく、更新しなくても登録が削除されることはありません。
利用できるドメインは「f5.si」(2文字ドメイン)です。取得できるホスト名は「ユーザ名.f5.si」になります。
No-IP
最も有名で、多くのルーターや機器に更新機能が組み込まれている実績のあるサービスです。
非常に長い歴史と高い信頼性があり、多くのネットワーク機器(ルーター、NASなど)が標準でこのサービスの更新に対応しています。
.ddns.net、.noip.me、.hopto.orgなど、多くの無料ドメインから選択可能です。
ホスト名は、無料プランでは3個まで登録可能です。
最大の注意点は、30日ごとにアカウントの手動での再アクティベーション(更新手続き)が必要です。これを怠ると、ホスト名が停止・削除されます。
更新はメールで通知され手動で行う必要があります。
専用のDDNSクライアントソフト(DUC: Dynamic Update Client)を提供しており、PCにインストールすれば、PCが起動している間はIPアドレスを自動更新してくれます。
Buffaloの多くのルーターもデフォルトでNo-IPによるDDNSの使用に対応しています。
DuckDNS (DuckDNS.org)
設定のシンプルさと、手動更新の手間が少ないことで近年人気が高まっているサービスです。
登録や設定が非常にシンプルで、最小限の操作で利用開始できます。
オープンソースプロジェクトをサポートする目的もあり、広告がなくクリーンです。
ドメイン形式は.duckdns.orgのみとなっています。
ホスト名は無料で5個まで登録可能です。
クライアントソフトやルーター経由でIPアドレスを定期的に更新していれば、サービス側で利用継続の意思があると判断されます。手動更新は不要です。
無料で手軽に利用できるため、一部のフィッシング詐欺やスパムサイトに悪用される事例が報告されています。ですが、これはサービス自体の悪意ではなく、無料性を悪用した第三者によるものです。
Dynu (Dynu.com)
無料でありながら、多機能で安定性が高いと評価されているサービスです。
無料プランで、独自ドメインのDDNS利用をサポートするなど、機能が充実しています。
ドメイン形式.dynu.netなどの無料ドメインが豊富で、独自ドメインも無料枠内で利用可能です(一部制限あり)。
IPアドレスの自動更新クライアントが稼働していれば、サービス継続のために手動で何かをする必要はありません。手動更新は不要です。
IPv4およびIPv6の両方に対応しています。
一部のプロバイダーやメールサービスから、迷惑メールの送信元として評価が低くなる(迷惑メール扱いされやすい)という報告があります。
設定は比較的簡単ですが、機能が多いため、必要に応じて使い分けたい人向けです。
FreeDNS (FreeDNS by afraid.org)
非常に自由度が高く、上級者にも利用されることの多いサービスです。
ユーザーが所有する独自ドメインを登録し、それを他のユーザーにサブドメインとして開放できるなど、コミュニティ色の強いユニークな機能があります。
他のユーザーが提供する豊富なドメインからサブドメインを選択可能です。または、自分の独自ドメインを持ち込んでDDNSとして利用することもできます。
ホスト名数無料枠でも比較的多く(例: 20件など)登録できます。
自由度が高い反面、インターフェースがやや複雑で、初心者には設定が難しく感じられる場合があります。ある程度DNSやネットワークの知識がある人向けです。

